『ZAPPA』

神保町PASSAGE でもらった栞に
「SO MANY BOOKS SO LITTLE TIME」と書かれていた。
読みたい本はたくさんあるのに時間が足りない。
そうだなあ、と思ってよく見たら下に小さく「FRANK ZAPPA」とあった。
そうか、フランク・ザッパの言葉だったのか。
PASSAGE で知り合った方と twitter でやりとりしていたら
ドキュメンタリー映画『ZAPPA』が新宿武蔵野館でやってますよと教えてもらう。
 
23日までというので昨日の昼、見に行ってきた。
新宿武蔵野館では大々的にパネルを展示するなど
上映している A-ha のドキュメンタリー映画を推していたので、
その一環で音楽系の映画を再上映していたのかもしれない。
サン・ラの映画もやってたな。
 
1991年、観客の前で最後にギターを演奏したプラハの公演から始まって、
その半生を辿っていく。
小さい頃は全く音楽と無縁で、むしろ8mmフィルムの撮影・編集にはまったこと。
高校時代に現代音楽と出会い楽譜を読んだり書くようになったこと。
そこから始まって、The Mothers of Invention の結成、狂騒の乱痴気騒ぎを経て、
娘ムーン・ザッパが「同じ家に住んでいるのにパパと過ごす時間は少ない」
とドアに張り付けたメモから生まれた「Valley Girl」が生まれ、唯一の全米大ヒットへ。
PMRCの検閲に対する抗議活動、民主化後のプラハの支援、
癌を患って闘病生活を送り……
(真っ黒だった髭が真っ白になったのが痛々しい)
よくぞここまで端的にその人生をまとめたなあと驚いた。
ユーモアとシリアスさ、愛と反骨精神、ロックと現代音楽、
いろんなものが詰め込まれたパンドラの箱が過不足なくすっと伝わる。
 
ゲイル・ザッパ、ムーン・ザッパといった家族に始まり、
イアン・アンダーウッド、ルース・アンダーウッドといった The Mothers の歴代のメンバーたち、
巣立ってビッグになったスティーヴ・ヴァイアリス・クーパーと証言者たちも豪華。
キャプテン・ビーフハートは写真、映像だけですが)
ジョン・レノンオノ・ヨーコとのライヴ映像も出てきた。
 
死を前にした晩年の姿に鬼気迫るものがあった。
楽団を指揮しながら
「自分の音を出しなさい。どの音も人生でただひとつの音だ」
というようなことを語っていた。
 
正直、学生時代はザッパのよさが全く分かっていなかった。
ザッパに興味を持った妻から、どれを最初に聞いたらいいか? と聞かれるも答えられず。
映画の最後にもあったけど、生涯に62枚のアルバムを発表、
死後も53枚のアルバムが発表された。
海賊盤のライヴアルバムは何百枚とあるだろう。
僕は20代後半かな、中野ブロードウェイの今はなき recomints に
ryko レーベルの国内盤が大量に出ていたのをせっせと買い集めた。
一応その頃国内盤で出てた正規のアルバムは全て買ったはずだけど、自信なし。
 
Freak Out』なのか、『Waka / Jawaka』なのか。『Roxy & Elsewhere』なのか。
今の僕だったら『Lather』かな。
一番訳が分からなくてその分最も未来的。
3枚組のボリュームで吐き出されるザッパの頭の中の草原。