先週買ったCD #92:2022/07/11-2022/07/17

2022/07/11: BOOKOFF 大阪心斎橋店
Chaka Khan 「Epifany - The Best of Chaka Khan」 \550
Alicia Keys 「Remixed」 \510
The Beautiful South 「Choke」 \510
The Stray Cats 「Very Best of Stray Cats」 \792
 
2022/07/12: ヤフオク
Jonathan Richman 「Jonathan Sings!」 \2000
 
2022/07/12: www.amazon.co.jp
Procol Harum 「Grand Hotel」 \1250
 
2022/07/12: www.amazon.co.jp
Chaka Khan 「Epifany - The Best of Chaka Khan」 \1214
 
202/07/13: www.hmv.co.jp
Prins Thomas 「Paradise Goulash」 \1337
早川義夫 「この世で一番キレイなもの」\730
 
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早川義夫 「この世で一番キレイなもの」
 
神保町の共同書店『PASSAGE』で棚を借りて4月に『青熊書店』をオープン。
名前の通り僕の青森と妻の熊本の本を並べるというコンセプト。
これが思いのほか面白く、もうひと棚借りることにした。
その棚をどうするか、という話になったときに
僕が一番得意なジャンルということで音楽で行くと決める。
僕が一人で選書、仕入れ、搬入を行う。
 
先だって勉強のために読んでみたのが
早川義夫『ぼくは本屋のおやじさん』
1968年に「ジャックスの世界」でデビュー。翌1969年、「ジャックスの奇蹟」で解散。
この年にソロアルバム「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」を発表するも
音楽活動は停止。
1972年、川崎市武蔵新城駅の商店街に本屋を開く。
22年続けて1994年、書店を閉じる。
この年、25年ぶりのソロアルバム「この世で一番キレイなもの」を発表する。
 
『ぼくは本屋のおやじさん』はこの22年間の日々についてのボヤき混じりのエッセイ。
まったく買う気のなく立ち読みし通す大人。
勘違いの騒音でクレームをつけてくる隣人。
本屋の本で調べ物をしてはお礼に飴をくれるおばちゃん。
たまに現れる困った人たちに心の中で右往左往する店主、早川義夫
神田の問屋に本を仕入れに行っては隣の芝生を比較してしまう。
 
それだけだとありがちなハウツーものエッセイであって、
最初はそういうのかなと僕も思いながら読んでたんだけど
いつのまにかその文章に、というかその言葉に引き込まれていた。
素直な言葉。自分というものとの距離が近い、嘘のない言葉。
早い話が、人柄。
優しいとか明るいとかいったものではなく、人となりの彫りの深さ。
その頃、ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引書』を読んでいて
文体も、その文体によって吐き出したいものも全く違うけど、
どこか近いものを感じた。
魂で書く、魂を書く、というか。
 
ジャックスの”ラブ・ジェネレーション”を初めて聞いたのは高校生の時だった。
ラジオ番組の何かの企画で毎日日替わりで
話題のヴォーカリストが影響を受けた好きな曲をかけるというものがあった。
LA-PPISCHMAGUMI が Fishbone や Blue Ronde A La Turke を。
そんな中でアンジー水戸華之介がかけたのがこの曲だった。
どす黒い情念が狂い咲いたような歌いっぷりに度肝を抜かれた。
こんな曲が日本にあったとは、しかも60年代末だったとは。
 
本屋の日々を語るその言葉には、文体には、なんの激しさもなかった。
イジイジ、ウジウジとしつつも穏やかなものだった。
そう思うと町田康町田町蔵)にも似ているなと思う。
 
『ぼくは本屋のおやじさん』の素晴らしさに続けてエッセイ集
『たましいの場所』を買った。どちらもちくま文庫
「この世で一番キレイなもの」も中古で買った。
丸い眼鏡をかけて視線の奥にあるものを見せない、早川義夫がジャケットに写っている。
 
『ぼくは本屋のおやじさん』の中でも書かれていたと思うが、
25年ぶりに歌う怯えのようなものがどこかにあった。
こんな自分が歌を歌っていいのか。
しかし歌いたいという逡巡がある。
欲望のいくつかはまだ残っていて、そこに折り合いをつけるかのように歌う。
 
「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」の中で発表された
サルビアの花”を再録している。
穏やかな演奏に合わせて、穏やかに歌う。
ラブ・ジェネレーション”とは程遠い。
しかし、どこか芝居がかった歌い方、いや、言葉を置いていくような歌はそのままか。
そのまま静かに進んでいくかと思いきや、後半から終盤にかけてその思いが溢れ出す。
”赤色のワンピース”で若かった頃のほろ苦い同棲生活を歌い、
最後の”いつか”でそれは叫び声となる。
僕はこの2曲だけでもこのアルバムは買いだな、と思った。
過去の自分と向き合う。それをこんな形の歌にできる人は少ない。
何の衒いもなく、まっすぐに、ひたむきに。
 
歌がうまいかどうかで言えば決してうまくはない。(もちろん音痴でもないが)
文章がうまいかどうかで言えば決してうまくはない。
でも、本質はそこにない。
そこでのみ語る人、語られる人のなんと多いことか。
早川義夫は決して告発することはない。
しかしその存在感でもって、自らに違和感を与えるものを否定し続けている。
 
ギター、ベース、ドラムなどのバックは固定のメンバー。
梅津和時がアルトサックスを吹いている。
ピアノは早川義夫が弾いている。