大山へ

仕事の切れ目で金曜は有休をとった。
といっても特に予定はない。やりたいこともない。
終日雨予報なので遠くに行く気にもならない。
クリーニング屋に行って、洗濯物を部屋干しして。
そうだ、と大山のアーケード街、ハッピーロードを行ってみることにした。
 
学生時代4年間、
大山にある日大病院前の調剤薬局で夜勤の事務のアルバイトをしていた。
一晩2万近く、週に一度入るだけで結構な収入になった。
大学の映画サークルで曜日ごとに担当を決めていて僕は金曜だった。
途中から隔週で土曜も担当した。
このアルバイトのおかげで金銭的な負担はだいぶ楽になった。
僕が卒業する時も映画サークルの後輩に譲った。
あれから20年以上経って今はどうなっているか、まだ続いているのかはわからない。
 
光が丘に引っ越して6年か。
前から何度も大山行きたいなと思いつつ実現しなかったのは
隣の板橋区でそんな遠くはなくいつでも行けるか、という思いがあったのと
思い出の地ではあってもハッピーロードの他に何もないところだから。
終日過ごすような場所ではない。
この日は午後読みたい本もあって、昼前に行ってどこかで食べてすぐ帰ってくることにした。
 
10時半過ぎに家を出る。
小雨の中、成増まで歩いていく。
東上線の各駅停車に乗る。
下赤塚、東武練馬、上板橋ときわ台
一駅手前の中板橋で下りて駅前のブックオフに入る。
ブックオフも小さく、商店街もこじんまりしている。
日大病院まで歩いていくつもりが、雨脚が強くなってきて断念する。
駅に戻って大山まで一駅乗った。
 
土砂降りの中、ホームに下り立つ。
上りだと北口か。見覚えのない風景。そうか、と思い出す。
学生時代は国立から新宿に出て、池袋を経由していつも下り方面。
南口から出ていた。
ハッピーロードも南口にある。
踏切をくぐって、アーケードのない商店街の方をまずは少し歩いてみる。
バイトの前によく通った安い中華料理の店があったんだけど
当然のごとく見つからなかった。
かなりなところチェーン店に置き換わっていた。
一番安い定食の油っぽいトマト卵炒め、食べたかったな。
 
ハッピーロードに戻る。
どれぐらい店が入れ替わったのだろう。
見覚えあるあるのは本屋など数えるほど。
金土と泊りの時に利用していた銭湯はどの小道を入るんだったか。
その後で食べていたとんかつ屋も店をたたんだか。
 
昼をどこで食べるか。
そういえば最近知った町中華というかチャーハンで有名な店があったよなと
ハッピーロードを出て川越街道近くの「丸鶴」に行ってみる。
平日で雨だからすぐ入れるんじゃないかと思っていたが、
さすが人気店、店の前で3人待っていた。
壁にあちこちのテレビ番組や雑誌に取り上げられた時の写真が貼ってある。
おやじさんと高田純次が写ってるものであるとか。
おやじさんが炒飯哲学を語ったものであるとか。
少し待って中に入る。当然相席。中はサラリーマンと作業員ばかり。
モニターではテレビ番組で取り上げられたときの録画を編集したのが流れている。
 
チャーシューチャーハンと、金曜はサービスで500円だというので唐揚げを。
チャーハンはすぐ出てきた。
テレビの中のおやじさんも2分で作るよと豪語していた。
ここはパラパラ系ではなくしっとり系。でも、ふわっとしている。
絶妙な塩梅。味も胡椒が効いてスパイシー。チャーシューもゴロゴロ。
ガツッと来る存在感なのにしつこくない。確かにこれはうまいな。
西の鶴丸、東の龍朋か。
神楽坂の龍朋も都内最高のチャーハンとされる。
 
遅れて唐揚げが出てくる。こちらも絶品。
ふわっと柔らかくてジューシー。唐揚げもしっとり系。
店を出るころ、テイクアウトできることを知る。
しまったこれで夜、ビールを飲みたかった。
長居を避けるためか、それともしっかり味わってほしいからか、
メニューには酒類はなかった。
 
雨が少し弱くなったので日大病院まで歩いていく。
夜勤のバイトのために薬局側で交互に
弁当を頼んでいた二軒の喫茶店、料理屋があったけど
これらの店も見当たらず。とっくの昔に店をたたんだか。
病院方面に向かって歩く若者たちは医学部の学生やインターンなのか。
 
ハッピーロードに戻る。
焼き鳥を売っている店を3軒見かけて、多いなと思う。
そのうちの1軒で買って帰る。
前に2組並んでるところにした。
しかし、僕の番が来て選んでるうちに気づいたんだけど
このハマケイは光が丘IMAにもあって、何度か食べたことあるな……
や、ここは普通においしいのでそれでもいいんだけど。
路地を入ったところにある総菜屋の焼き鳥が気になったものの
アーケードから外れてて傘を差さないといけなかったのでやめにした。
今度また丸鶴に食べに来た帰りに覗いてみるか。
 
成増行きの各停に乗ってのんびり戻る。
雨が止まないのでバスに乗って帰ってきた。
家に着いたのは13時半。
手ごろなサイズの小さな旅だった。