大地の芸術祭2回目(その2)

土曜の続き。宿に向かう途中。
 
松之山エリアに入って、『最後の教室』という作品があると知って寄り道していくことにした。
廃校になった小学校の校舎、体育館丸ごと使ったインスタレーション
フランスのクリスチャン・ボルタンスキー、ジャン・カルマンによるもの。
9月に松代エリアでその作品を多く見たイリヤ・カバコフと並んで
クリスチャン・ボルタンスキーというアーティストもまた『大地の芸術祭』に大きく貢献した方のようだ。
真っ暗な体育館にはオレンジ色の電球が無数にぶら下がり、
周りの壁には星屑のような青い無数の光。
床がふわふわしている。その間を歩く。
閉め切って暑いからか古びた扇風機が何台も設置されている。
 
校舎に入る。真っ暗な通路の先に強い照明があって
ファンの回転によってフラッシュが焚かれたようになる。
前を歩く人はシルエットだけになる。
この廊下だけでも強烈に何か心をかきむしるものがあった。
階段で2階、3階へ。
長い通路とそこに並ぶ教室と。それらの教室をぶち抜いて構築されたオブジェ。
2階の突き当りには理科室があって振動の鼓動のような強いビートが執拗に繰り返される中、
暗闇を一定の間隔で一瞬だけ明かりがついて棺のようなものが並んでいるのが垣間見える。
3階の突き当りには音楽室。
白い壁にランダムに並べられた黒いタイルが音符やメロディ、リズムを表しているのだろう。
このボルタンスキーというのはなんかとてつもないことを考える人だな、というのがわかった。
 
入り口の体育館の2階にはもうひとつ、ボルタンスキーによる『影の劇場』という作品。
メキシコの影絵なのだろうか、そのゆらゆらするのを覗き窓から。
 
受付のところにほおずきが置いてある。
受付に座っていたボランティアのおじさんがとってきたものだという。
妻がもらって食べてみた。
それを聞いて他のお客さんもほおずきを分けてもらった。
 
松之山温泉郷へ。
前回気づかなかったが入り口に作品がふたつあった。
16時、宿に入る。
さっそく3階の露天風呂へ。
他に入ってる人はない。トンボが飛んでいる。
1階の内湯、半露天風呂に移る。
ひと風呂終えて、前回はありつけなかった無料の日本酒の試飲へ。
「たかの井」澄んでいてきりっとおいしい。
温泉につけた湯治玉子をツマミにする。
この湯治玉子、前回来たときは夜まで残っていたのでたくさんもらって食べたけど、
今回は早々になくなった。
大家族で来ていた方たちが多かったように感じられた。そのせいだろうか。
 
入れ替わりで妻が入りに行った間に外を散歩。
向かいに土産物屋が2軒ある。
片方の小さな店はちゃきちゃきしたおばあさんがやっていて、
どこかの宿のお客さんなのだろう、同じぐらいの年齢の男性客4人に缶ビールを飲ませていた。
もう一つの大きな店は店の奥にスターウォーズのグッズが並べられている。
別の一角には新潟の萌えキャラなのだろうか、そのグッズを。店主の趣味なんだろうな。
 
ゆるい坂道を上っていく。
小川の脇に温泉が湧いて湯気が。
火の見櫓のような木製の塔が川底から伸びている。
さらに歩くと不動の滝。
そこにもう一つ作品があった。『ブラックシンボル』という。真っ黒な牡牛の看板。
スペインを代表するシェリー酒のメーカー、オズボーン社のシンボルなのだという。
 
さらに坂道を上っていくと今回訪れてみたかった『夢の家』がすぐ近くにあると知った。
民家を改装してつくられた宿泊施設。
訪れた人はそこで見た夢を書き綴ることになっている。
しかしガイドブックを見るとここも9月4日までだった……
しまった。9月の頭だった前回ちゃんと調べておけば見ることができた。
その後妻と話す。
8月は学生が夏休みでボランティアガイドを集めやすいんじゃないかと。
なるほどなあ、そういうことかもなと思う。
 
引き返し、温泉街を歩く。
7月末で閉館したというところがあった。
コロナ禍による経営不振なのか、高齢化なのか。
 
もう一度3階の露天風呂に入り、1階に下りる。
試飲コーナーに妻がいるんじゃないかと見に行くとちょうど来たところだった。
二人で外に出て『ブラックシンボル』を見に行った。
 
戻ってきて18時。夕飯を食べる。
2階の半個室。
同じプランを頼んだのでメニューは前回とほぼ一緒。
秋に入ってキノコ類が増えたか。
おこげを割って入れる鍋であるとか、そこに麹と神楽南蛮の辛いのを入れるとか。
同じ内容なのに飽きない。むしろ嬉しい。また、食べ過ぎる。
コシヒカリは新米になったという。
「妻有ビール」の豪雪ペールエールを飲んであとは地酒。
雪男、松乃井、越の初梅など。
デザートは旬のものということでいちじく。
 
前回同様向かいのバーに行くつもりが、妻が疲れて寝てしまう。
温泉に何度か入りに行って、缶チューハイ、缶ビールを飲む。
ブラタモリを見た以外にテレビは見ない。
穂村弘『もしもし。運命の人ですか』
五十嵐正『ライ・クーダー アルバム・ガイド&アーカイヴス』を読む。
 
23時から貸切風呂が無料開放されると聞いて行ってみる。
誰かが先に利用しているかと思いきやそんなことはなく。
入ってみると湯舟が熱すぎて入れず。
源泉かけ流し、松之山温泉はそれが90℃近くになるという。
貸切風呂を誰も利用せず、熱いままたまっていたのかもしれない。
いつもの内風呂に入りに行った。
午前0時には寝た。