名古屋へ その2

土曜の続き。
 
もう一度『うつす展』を見たり、ミュージアムショップを覗いているうちに14時。
エバレットさんの講演を聞いた。
それまでに撮ってきた写真(多くは湿板写真)を一枚一枚写しながらというもの。
その生い立ちから始まって、3.11の転機があって、今取り組んでいること。
今、山伏に興味がある、九州の英彦山はかつて日本一山伏が集まっていた、
その英彦山に今も残る宿坊のひとつを管理することになったと言って
ほら貝を吹くところから始まった。
 
印象に残った話をひとつ。
大学を卒業して、日本で生活したいと思った。
明日は日本に渡るという前日、サンフランシスコの町を歩いていたら
当時人気だった詩人のロバート・ブライにばったりと会い、話しかけた。
明日から日本へという話をしたら、
あ今から会う人は日本に暮らしたことのある尼さんだから一緒に来るといい、となった。
その尼さんが言うには、東京のような大都市に行ったら絶対だめ、
まずは小さな漁村で何日か過ごしなさいと。
 
飛行機で成田に着いて上野へ。
そのまま上野駅から青森行きの特急に乗った。
青森駅前の市場で食べた後、
本当は津軽半島に行きたかったがちょうどいいタイミングの電車がなく、
たまたま下北半島行きがあったのでそれに乗った。むつへと向かう。
途中、高橋竹山ドキュメンタリー映画で見たことのあるのに似た風景があって下りてみた。
海岸が広がっている。
そこにテントを張って3日間ほど過ごしたが、ずっと雨。
寒くて心細くてテントを片付け、近くの無人駅に入った。
そこから小さな店が見えた。
その店のおばさんが牛乳と食べ物を持ってきてくれた。
お金は要らないという。ありがたい気持ちでいっぱいになった。
それがエバレットさんが最初に体験した日本。
1982年4月のこと。
僕がむつ市に住んでいたのは1982年3月までだった。
講演の後、すれ違いですねと僕は話した。
 
エバレットさんはその後、恐山に毎年訪れるようになった。
地元の人たちとも顔なじみになった。一緒に温泉も入る。
あの頃は明治生まれの人も生きていた。その人たちから江戸時代のことも聞いた。
だから江戸時代も明治時代もそう遠くない、断絶を感じないとエバレットさんは言う。
 
そのエバレットさんは語った多くのことの中で最も印象に残ったのは、
今、自分が肖像写真を撮っているのは、百年後の子孫が見るためなのだと。
写真を撮るとは写す側、写される側、共に歴史をつくるということ。
 
最後もう一度ほら貝を吹いて終わった。
その後サイン会。
ミュージアムショップに今回の講演会の下敷きになった本『失われゆく日本』が売られていて、
妻がサインしてもらった。
 
16時近く。閉館は17時で、Sさん夫婦、エバレットさんとの打ち上げに
僕らも呼ばれていて17時半から。
トヨタ産業技術記念館は前回、繊維機械のところを詳しく見たけど、
自動車の方は途中時間切れになってたなあとそちらへ。
何年か前に見たのとだいぶ入れ替えをしているようだ。
2階は車の断面図というか中のエンジンの仕組みが見えるように加工された車が何台も並んでいて、
ボタンを押すとエンジンが動き出す。
ピストン運動が車軸の回転に転換され、後輪が回る。
 
1階ではガイドの女性の方にトヨタの最初の自動車の説明を受けた。
1936年の「AA型乗用車」
偉い人の乗るものだから後ろの席がゆったりしていてソファーがそのまま組み込まれていて、
その分運転席は狭い。
乗るところに足台があった。中にも足置きが。
シートベルトやサイドミラーはなし。
当時の初任給70円に対し、3,350円もした。
 
他、様々な工作機械のあれこれ。プレスに車体の取り付けに。
ものすごく大掛かりなものが精緻に動く様子は見ていて気持ちがいい。
最もっと見ていたいと思うが、すぐにも閉館時間が来てしまった。
プラスチックを加工する機械から小さな車体が吐き出され、ストラップを作る体験をした。
 
17時に出て名古屋駅に戻る。
妻は直接予約した店に行って僕は一人、チェックインして荷物を預ける。
名鉄は東側か。ホテルは西側にあって大きな駅の建物を横切る。
ものすごく大勢の人々が行き交っている。
地下街のエスカに入って反対側に渡って地上に出る。
今回はポイントを溜めるためにアパホテル
自動チェックインしようとしたらうまくいかず。
なんでだろうと思っていたら隣のブロックにもうひとつアパホテルがあってそちらだった。
 
荷物を置いてまた名古屋駅に戻る。
店は東側のJRタワーズの12階。
和食の店。味噌煮込みおでんを食べ、日本酒をたくさん飲んだ。
もう一人、遊山をテーマに活動している方も加わった。
エバレットさんとも話した。高橋竹山の旅のこと、音楽のこと。
今おすすめの音楽を聞いたら
ディグラン・ハマシアン、内田輝(あきら)、水谷翔という3人の名前を。
 
エバレットさんは前日名古屋入りしてこの日のうちに東京に戻るという。
皆でホテルに荷物を取りに行って、新幹線の入り口まで見送りに行った。
その後、Sさん夫婦と僕ら夫婦と4人で駅のエビスバーで2次会。
Sさんは講演会の疲れもあったのか、早々に寝てしまった。
Sさんの奥さんは占いを習ったとのことで僕ら2人を見てもらった。
僕は普通車で特命を少々帯びている、妻は大型車で特命をいくつか帯びている。
 
アパホテルに戻ってきたのが午前0時近く。
大浴場に入ってすぐ寝た。