熊本へ(その2)

昨晩は義父が入手した元日に絞ったという焼酎を飲んで過ごした。
汽水社で購入した『ブルースCDガイドブック』を拾い読む。
猫歩きの90分拡大版の三重ののち、スポーツ番組などを見る。
そうか、今年は3月にWBCがあるのだなと知る。
大谷、ダルビッシュ、佐々木…… 楽しみだな。
NHK BS の「どすこい研究会」の途中まで見て寝る。
テーマは地方巡業。
 
23時前に布団に入る。
2度目を覚まし、トイレに行く。
ずっと続く長い夢を見ていた。
東京と熊本を往復する用事があってもろもろの事情でアキレス腱を切ってしまった。
そんな夢を長々と。
早起きして散歩するつもりが、7時半起き。
昨日食べ過ぎたと朝はバナナ、リンゴ、ヨーグルト、コーヒーのみ。
テレビをつけるとやはりWBCの話題。
 
9時前、少し家の周りを散歩する。朝日が眩しい。
10分ほど南に歩いて田んぼの広がる一帯まで来て引き返す。
この辺りはすっかり住宅地になったが、妻の小さい頃は田んぼだっただという。
あぜ道を歩いて小学校に通ったと。
 
この日は僕のリクエストで津奈木へ。
日本で唯一の海の上の小学校として有名だった赤崎小学校と
その廃校になった施設を利用して作られた、
つなぎ美術館の「入魂の宿」を見てみたかった。
 
10時前に家を出る。
近くの小学校の校庭に大勢の人が集まってどんど焼き
大きく火が上がり、白い煙となって周りを子供たち、大人たちが取り囲む。
歩いている親子が長い竹竿をそれぞれ抱えている。
熊本だと「どんどや」と呼ぶと聞いた。
東北の方にはない風習だと思っていたけど、
2日の日に善知鳥神社に初詣に行ったら「どんと祭」の案内があった。
この日、あちこちでどんど焼きを見かけた。
川原で、消防車を脇に置いてなど。
 
この日は黄砂もひどく、空は晴れているのに空がぼんやりしていた。
場所によっては煙って視界も悪かった。
 
御船ICの近くで「日本一の石段」という看板を見かけた。
3,333段あるという。
 
南に下って行くうちに宇土市宇城市を通り抜けて30分もしないで八代市へ。
途中でコンテナを並べてホテルにしているところがあった。
「みやべ」という有名店でちゃんぽんを食べようということになっていたが、
残念ながら日曜が定休日だった。
八代駅前の喫茶店「ミック」に行こうと決まる。
八代市の中心部に近づいて、製紙工場の煙突が見え始める。
赤と白に交互に塗られた3本の煙突から白い煙がまっすぐに伸びていた。
八代駅のすぐ背後にこの工場が広がっている風景がよかった。
 
「ミック」は昭和の頃からあるのだろう。
柱は黒く、壁は白く、広い店内は落ち着いた雰囲気がある。
本棚には『芸術新潮』のバックナンバーや広辞苑の過去の版がいくつか、
八代出身の小説家、耕治人の全集など。
白川静の『字統』『字訓』もあった。
僕はカツカレーにした。揚げたてのカツにスパイシーなカレー。
セットのミニサラダもほどがよい。これぞ喫茶店のカレー。いい店だったな。
明日一席あるという落語家の方が来店していた。
 
八代城跡を通り、その近くの「お祭りでんでん館」という施設に入った。
できてまだここ数年というところか、新しくきれいだった。
八代妙見祭についての資料館。
11月22日、23日に開催される。
八戸の三社祭鹿沼の彫刻屋台、唐津くんちの曳山などと並んで
ユネスコ無形文化遺産『山・鉾・屋台行事』に選ばれている。
1階の部屋3面をスクリーンとして祭りの様子が上映された。
アーケード街を神輿、各町の笠鉾が練り歩き、
川原に移って馬が走り、亀蛇という巨大な亀の獅子舞のようなものも運ばれる。
(これ、ガメラの着想の素になったのでは)
 
他に客はなく、僕らが駐車場に車を停めると
中にいたガイドのおばあさんが立ち上がって嬉しそうにした。
このおばあさんが専属となって映像を見ている間などあれこれ教えてくれた。
2階には盆踊りの衣装など。白と黒だけというシック。
鶴を描いた幕が貴重だった。
1階のエントランスには立体絵本で描かれた八代の祭り。
いくつかある中で4月の、
鮒をつかんで周りで見ている人に泥を投げるという祭りが見てみたくなった。
 
隣接した「未来の森ミュージアム」にも入った。
郷土の民俗博物館的な。
和紙、仏像、刀剣、焼き物、妖怪……
学芸員の方たちが作成する解説シートの種類が豊富過ぎる。
どんだけ力入ってんだ。でも、いいことだ。
八代城の模型、亀蛇の実物が2体宙から吊り下げられたのと
麦島勝という写真家の市井の日常風景の写真が心に残った。
戦後すぐの時期、昼に弁当箱を開けて食べる親子。
自衛隊から帰ってきた兄を自転車で迎えに行った妹と弟。
食堂でアイスクリームを食べる老夫婦。
この方の写真集(かつての企画展の図録)が2種類あって、妻と1冊ずつ買った。