先週買ったCD #125:2023/03/06-2023/03/12

2023/03/09: diskunion.net
Albert Collins 「Frozen ALive!」 \1700
Peter Gabriel 「Live Blood」 \1700
Big Audio Dynamite 「This Is Big Audio Dynamite 25th Anniversary Edition」 \1900
 
2023/03/10: diskunion.net
(V.A. 久保田真琴) 「ぞめき 壱 高円寺阿波おどり」 \1800
 
2023/03/11: diskunion.net
Tokyo No.1 Soul Set 「Jr.」 \1500
 
2023/03/11: DiskUnion 神保町店
The Cowseills 「In Comcert Plus Milk-EP」 \380
Junkie XL 「Big Sounds Of The Drags」 \380
(V.A.) 「Punch The Monkey!」 \100
 
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(V.A. 久保田真琴) 「ぞめき 壱 高円寺阿波おどり
 
3月4日、5日の土日にJALの『どこかにマイル』を利用して徳島市へ。
たまたま入ったジャクソンズという中古CD屋がよかった。
ライ・クーダーの『The Border』と『Alamo Bay』のサントラを 2in1 にしたアルバム。
Neville Brothers のミニアルバム「Fearless」
アムネスティ・インターナショナルの1998年ベネフィットコンサートのライブアルバム。
それぞれ国内盤帯付き。掘り出し物ばかりだった。
ライ・クーダーつながりなのだろう、ザディコのクリフトン・シェニエや
テックス・メックスのフラコ・ヒメネスの国内盤もあった。
他にも買おうかどうしようか迷ったアルバムも何枚か。
いったい誰が売ったのだろう?
これらのアルバムを聴いて、売った徳島の人がいるんだな、ということを思う。
 
もうひとつ、音楽に関する思い出というと、阿波おどり
阿波おどり会館の2階ホールで専属連による演奏を聞いた。
三味線が2人、笛と鉦、小太鼓と大太鼓が1人ずつ。
恐らく最小限の編成だろう。でも音の薄さは全く感じさせなかった。
踊り手たちが一糸乱れぬ踊りを見せるならば、
演奏する側も間合いに隙がない。
迫力ある、かつ、緻密で繊細なステージだった。
3階のミュージアムで2017年の記録映像を見ていたら居ても立っても居られなくなって
阿波おどりのCDないかなと立ったまま iPhone で検索する。
 
あ、そうだ、そうだったと思い出す。
久保田真琴が徳島と高円寺の阿波おどりの有名連の演奏を録音した
「ぞめき」のシリーズがあった。
ぞめき、とは騒ぐこと。賑やかな音にもみくちゃにされながら、街で踊りあかすこと。
日本各地の知られざる踊り、盆踊りの実況録音にこの国独特のディープなグルーヴを再発見する。
そんなCDが以前、何枚か出たことがある。
河内音頭三音会オールスターズ「東京殴り込みライヴ」(2011)なんかがよかったな。
民謡クルセイダーズの活動もそれに通じるものがある。
 
その最高峰がこのシリーズだろう。
和製ライ・クーダー、音の錬金術師の久保田真琴が手掛けたのならば間違いない。
匹敵するものがあるならば、彼が沖縄で録音したものか。
久保田真琴がらみのアルバムはインドネシアのダンドゥットのものも探して買ったというのに
なぜ僕はこれを見逃していたのだろう?
 
あれは何年前だっただろう。
20年近く前になるかもしれない。
中央線沿線に住む友人たちが集まって高円寺の焼肉屋で飲もう、ということがあった。
8月後半の土曜か。
知らずに行ったらその日は高円寺の阿波おどりの日で。
新高円寺駅で降りてJRの駅まで商店街を歩こうとしたら人また人でごった返していて
なかなか前に進めない。
こんなに人気なんだとびっくりした。
北口と南口の商店街に確か3カ所ぐらい、広場があって客席が設けられ、
練り歩いてきた連がそこで止まって披露する。
このとき聞いた演奏が忘れられない。
鉦と太鼓が主体の粘っこく生命力に満ちた音が胃の底にずしりと響く。重く届く。
音を整えるつもりは全くなく、ガンガンガンと一心不乱に叩き続ける。
余りにも個性的で連によって全く違う曲に聞こえた。
元は徳島の盆踊りの曲が東京で独自にそれぞれ進化していったのだろう。
もっと聞きたいと思ったのに、その頃はこの音をCDで聞くことができるなんて考えもしなかった。
 
届いたのを早速聞く。
シリーズは8作あって、4作目、8作目は久保田真琴やDJたちによるリミックス。
今回入手したのは1作目で2010年。
高円寺の『東京天水連』『舞蝶連』『小六連』といった11の連が演奏している。
曲のタイトルはなく、トラックリストには連の名前だけ。
多くは鉦と太鼓のみ。半分ぐらい笛が入るか。
ほぼリズムのみ。笛も単純な旋律を繰り返すのみ。
プリミティヴな音なのにどれも強靭な生命力を感じる。
遠くから「さぁさぁ!」と囃子の声が入る。思わず漏れた、というような。
ボリュームを上げて大音量で聞くと気持ちいい。
乗ってきてテンポが上がり、高速に打ち鳴らされるときはほんとたまらない。
 
久保田真琴は解説でこんなことを書いている。
『ぞめき。まさしく阿波のグルーヴ。
 にじみだし、乱れ狂う倍音、電気を全く使わない大音量、揺れるリズム。
(中略)
 2009年、たまたま覗いたそのお祭りは、ブラジル北東部、レシーフェやオリンダの
 カーニバルにも負けない興奮とサウダージの祝祭だったのだ』
 
その翌年、2010年に座・高円寺で録音。
阿波おどりホールを持っていて、ここで連が毎日練習するのだという。
座・高円寺は演劇の公演で何度か見に行ったことがあったが、
阿波踊りとのつながりは気づかなかった。
 
高円寺で開催されるようになったのは1957年。
その翌年に撮影された写真がジャケットに使われている。
そろいの浴衣を思い思いに崩して、白く化粧もした粋な男たち。
女たちは編笠をかぶって楚々としている。
これは確かに、カーニバルだ。
一年ずっと待ち続けて、束の間現れる自由な空間。
 
鉦と太鼓の強力なグルーヴもさることながら
笛が入ってテンポをぐっと下がった演奏になると途端に哀感が前面に出る。
小さい頃に聞いた祭り囃子の郷愁。
ああ、この楽しい雰囲気も消えていってしまうのだなと。
この感覚はある程度の年齢より上の人は皆、心の奥底に抱えているのではないか。
 
今年一年かけて少しずつ残り7枚を買っていくつもり。
8月には高円寺の阿波おどりも見に行こう。
いや、昨年は屋外開催中止となって今年も座・高円寺での屋内公演のみとなるようだ。
それでもいいから見に行きたい。