先週買ったCD #128:2023/03/27-2023/04/01

2023/03/27: diskunion.net
Broadcast 「Maida Vale Sessions」 \1100
Broadcast 「The Future Crayon」 \380
 
2023/03/29: BOOKOFF 練馬光が丘店
Marlene Dietrich 「Marlene In London」 \250
 
2023/03/30: www.amazon.co.jp
James Brown 「Live At Home With His Bad Self」 \925
Six. By Seven 「Greatest Hits」 \818
 
2023/03/31: diskunion.net
Tackhead 「Tackhead Tape Time」 \880
(V.A.) 「Blastin' Blues Guitars Volume 4 Masters Of Chicago Blues Guitar」 \880
 
2023/04/02: tower.jp
久保田真琴夕焼け楽団 「Live Best & More 1975-1979」 \3685
Deerhoof 「Miracle-Level」 \2241
Spoon 「Lucifer On The Sofa」 \2420
Phoebe Bridgers 「Punisher (Japan Tour Edition)」 \2750
 
2023/04/02: diskunion.net
Mayhem 「Dawn of the Black Hearts」 \3735
 
---
Marlene Dietrich 「Marlene In London」
 
29日のブックの日、仕事を終えた後、駅の反対側のブックオフへ。
この日限定の300円クーポンを使ってCDか本を買おうと。
550円コーナーを見ていたら
マレーネ・ディートリッヒは歌う」というCDが並んでいたのを見つける。
国内盤、帯付き。その帯にはこんなことが書かれている。
『追悼盤 「リリー・マルレーン」収録』
『官能の吐息も、仕草も…。その美貌と凛々しさのすべてを封じ込めて、1965・ライヴ』
 
このCDが前からこの店の中にあることは知っていた。
通常の中古CDのコーナーにあって1,000円弱の値段がついていた。
興味がありつつも、買うかどうかずっと迷っていた。
それが長い間売れなくて
練馬区光が丘のブックオフでは誰も興味を持たなくて)
550円コーナーに移って、さらに300円オフのクーポンを使って、
250円で買えるようになってようやく購入した。
興味がありつつも買わなかったのは、まあ間違いなく名盤ではないだろうな、
でも一度ぐらいは聞いてみたいなかなと。
そういう気持ちがぼんやりせめぎ合っていた。
 
有名な女優ではあるが、戦前の映画が得意ではない僕は、正直、
嘆きの天使』『モロッコ』『間諜X27』などその出演作品を一本も見ていないと思う。
ニュー・ジャーマン・シネマからファスビンダー監督に興味を持ったときに
ビデオを借りてきて『リリー・マルレーン』を見た。
でもこれはマレーネ・ディートリッヒに関する映画ではない。
リリー・マルレーン”がマレーネ・ディートリッヒの十八番だったとしても。
(ストーリーを忘れていたので今、改めて調べると、第二次大戦下で
 この歌を歌ったララ・アンデルセンをモチーフにした映画だった)
 
キャバレー音楽というものには前から興味があった。
サーカスの音楽と並んで、戦前のドイツに端を発する狭義のキャバレーの音楽には
つかみどころのない魅力がある。
(狭義の、というのは日本の昭和の時代のキャバレーで演奏された歌謡曲
 また別のものであるから)
 
背徳的で官能的で、それゆえのいかがわしいきらびやかさがあって。
どれだけ人口に膾炙したところで日陰者の音楽。
真夜中の、地下の、乾いたスポットライトを浴びたステージ。
倒錯した性的欲望を下敷きにしつつも
追いやられた若き才能たちがその芸術的才能を最大限に発揮した演目を演じる。
そこでは表の日常世界からは逸脱した、反転した、価値観がもてはやされる。
三文オペラ』のクルト・ワイル、ベルトルト・ブレヒトが基礎を作りつつもそのピークであったか。
僕も詳しく聞いたわけではなく、
後のウテ・レンパーやライザ・ミネリのカバー・アルバムから知った。
何よりもミュージカル版、映画版の『キャバレー』のサントラか。
後者は大学生協の廉価盤コーナーでたまたま目に留まって買って以来、
四半世紀にわたって聞き続けてきた。
 
マレーネ・ディートリッヒはキャバレー音楽というと真っ先に、ではないにしても
リストの途中ぐらいからその名前が出てくるであろう。
(真っ先となるとエディット・ピアフシャンソンとなるか)
漆黒の中に浮かび上がる無垢な、それゆえに背徳的な白が思い浮かぶ。
CDの解説を読むと下済み時代のマレーネマレーネ・ディートリッヒはキャバレーで歌っていたという。
 
映画の出演は主に1940年代半ばまで。
その後の活動の多くは歌手として、となる。
このCDの1965年は歌手としても脂が乗り切った頃か。
歌うのは、”リリー・マルレーン”や”バラ色の人生”(La Vie En Rose)など。
他、コール・ポーター作曲だったり、”Honey Suckle Rose” といったジャズのスタンダードだったり。
帯をよく見ると演奏、指揮、編曲はなんと、(今年亡くなった)バート・バカラックだった。
調べてみると1958年から組んでいるとあった。
 
低い声で派手なところはなく、半ばかみしめるように歌う。
取り立ててうまい、ということはない。
甘い吐息が、という類のものでもない。
でも何か滲み出てくるものがある。
演じているのか、それともそれまでの半生から生まれるのか。
銀幕のスターがもつオーラの片鱗、それを感じとることができる。
 
本来は映画を見て
マレーネ・ディートリッヒの演技やその存在感にほれ込んだ人が聞くべきCDか。