先週買ったCD #187:2024/05/20-2024/05/26

2024/05/20: www.hmv.co.jp
羊毛とおはな 「月見草」 \990
羊毛とおはな 「Live In Living For Good Sleep」 \792
Thenolious Monk 「Thenolious Monk Trio」 \1188
 
2024/05/20: www.hmv.co.jp
Cat Power 「Sings Dylan The 1966 Royal Albert Hall Concert」 \2530
Joyce 「Naturza」 \2244
Joyce 「Visions Of Dawn」 \2372
EelsEels So Good Essential Eels」 \2640
XTC 「The Big Express (Steven Wilson Mix)」 /4651 <font>
 
2024/05/20: tower.jp
Khruangbin 「A La Sala」 \2750
Billie Eilish 「Hit Me Hard And Soft」 \2750
 
2024/05/20: diskunion.net
赤い公園ブレーメンとあるく」 \12850
 
2024/05/20: www.amazon.co.jp
St. Christopher 「Love You To Pieces」 \500
 
2024/05/22: DiskUnion 神保町店
Thompson Twins 「Into The Gap」 \4650
Buddy Guy & Junior Wells 「Live In Montreux」 \980
Otis Rush 「Tops」 \880
Magic Slim 「Grand Slam」 \880
 
2024/05/24: www.amazon.co.jp
The Chainsmokers 「So Far So Good」 \1180
 
2024/05/25: BOOKOFF 自由が丘駅前店
Starcrawler 「Starcrawler」 \450
 
2024/05/25: TowerRecords 新宿店
Bud Powell 「The Bud Powell Trio」 \1320
 
2024/05/25: TowerRecords 新宿店
Laufey 「Bewitched: The Goddess Edition」 \2690
タワレコのポイントで。差額90円
 
2024/05/25: DiskUnion 新宿ジャズ館
Barney Wilen 「Barney」 \680
Goran Kajfes Tropiques 「Tell us」 \2530
 
2024/05/25: www.amazon.co.jp
Robyn Hitchcock and the Egyptians 「The Kershaw Sessions」 \1100
 
2024/05/26: diskunion.net
Vldimir Sofronitsky 「Borodin, Lyadov, Glazunov, SCriabin & Kabalevsky」 \980
The Roches 「The Roches」 \1300
 
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Cat Power 「Sings Dylan The 1966 Royal Albert Hall Concert」
 
1966年の『ロイヤル・アルバート・ホール』でのコンサートをテーマにした
アルバムを入手するのはこれで3組目になる。
 
1組目は言わずと知れた本家本元のボブ・ディランによるオリジナル。
実際の会場は『フリー・トレード・ホール』なのが
誤って『ロイヤル・アルバート・ホール』とされてきたのは有名な話。
それ以上に有名なのは、それまでフォークの旗手とされてきたボブ・ディラン
ステージの後半、ロックバンド(The Band の前身となるバンド)をバックに従えて
フォーク・ロックを演奏、熱心なフォークファンから
『ユダ(裏切者)!』と罵声を浴びせられたことだろう。
ここがひとつの歴史の転換点となった。
逆説的に、フォークからフォークロックへ、と歴史が変わったことを伝えた瞬間となった。
何世代にもかけて海賊盤で広まった末に
1998年、ボブ・ディランの『ブートレッグ・シリーズ』の第4集として正式に発表された。
 
そういった歴史の一こまを知らないとしても、このライヴアルバムは緊迫感があって素晴らしい。
僕個人としては、ボブ・ディランのライヴ・アルバムではこれが一番好き。
1枚目はソロの弾き語り。
”She Belongs to Me”
”4th Time Around”
”Visions of Johanna”
”It's All Over Now, Baby Blue”
”Desolation Row”
”Just Like a Woman”
”Mr. Tambourine Man”
 
2枚目はバックバンドと共に。
”Tell Me, Momma”
”I Don't Believe You (She Acts Like We Never Have Met) ”
”Baby, Let Me Follow You Down”
”Just Like Tom Thumb's Blues”
Leopard-Skin Pill-Box Hat”
”One Too Many Mornings”
”Ballad of a Thin Man”
”Like a Rolling Stone”
 
このセットリストがたまらなく、いい。
ボブ・ディランの60年代を代表する傑作群からの曲がメイン。
「Bringing It All Back Home」(1965)
「Highway 61 Revisited」(1965)
「Blonde on Blonde」(1966)
(言うまでもないが、この『フリー・トレード・ホール』のコンサートにて世界で初めて
 フォーク・ロックを披露したのではなく、
 その1年前の「Bringing It All Back Home」の時点でそれは既に始まっている)
 
やはり、ラストの ”Like a Rolling Stone” が始まる前の『ユダ!』のやりとり。
『ユダ!』と言われ、客席からは拍手が上がる。
ボブ・ディランは『I don't beleive in you.』『You're a liar.』と吐き捨てるように返す。
その後ろではギターのチューニングの音が聞こえる。
これこそがライヴ・アルバムであり、記録なのだと思う。
 
2組目として入手したのが、2002年、ロビン・ヒッチコックによるもの。
アルバムのタイトルそのものは「Robyn Sings」であるが、
こちらも『フリー・トレード・ホール』の曲を概ねその通りにカバーしている。
概ね、というのは1枚目の曲が少し、オリジナルと異なるから。
”Just Like a Woman”はやらずに、”Tangled Up In Blue”をやるとか、
”Visions of Johanna”を2回やるとか。
でも、2枚目の方はオリジナルの曲順を踏襲している。
 
シド・バレットの後継者と呼ばれたり、
奇矯な振る舞いで有名と誤解されたりするロビン・ヒッチコックであるが、
(インタビューの際に嘘八百の経歴を言うのは本当のようだ。
 僕も90年代初めごろの rockin'on のインタビューで
 オックスフォード大学だかケンブリッジ大学だかの特待生だったと
 いけしゃあしゃあと答えているのを読んだことをよく覚えている)
 
その根っこにあるのは、ポップスとフォーク・ロック。
結局彼もディランが好きなんですよね。
2枚組のライヴ・アルバムをカバーするなんて、当時全くなかった発想だった。
やっぱ変人だよなあと捉えた人が当時多かったのではないか。
でも聞いてみると、何の衒いもなくそのまんまカバーしていて
よっぽどやりたかったんだろうなあ、
彼のリスペクトの捧げ方がこうだったんだろうなあ、と。
もちろん、『ユダ!』の掛け合いも再現される。
彼の友人たちがコンサートに華を添えるために仕組んだのだろう。
何回か呼びかけられて、ロビン・ヒッチコック自身は答えずに
”Like a Rolling Stone”に入ってしまうけれども。
 
そして3組目が先日発表のキャット・パワーに寄るもの。
こちらはロビン・ヒッチコックと違ってセットリストまで全く同じ。完コピ。
 
キャット・パワーと言えばその活動の初期に
Sonic Youth のスティーヴ・シェリーをドラムにして演奏していたとか、
彼のレーベル『Smells Like Records』(もちろん Nirvana ですね)
からアルバムを発表ということもあって
オルタナシーンの歌姫的なイメージがあるけど、
今その作品を聞くと、アメリカのフォーク、フォークロックの正統な継承者だったんだなと。
(そしてそれは、幻惑的なアシッド・フォークの方ではない)
 
代表作だと思う
「The Covers Record」(2000)
「You Are Free」(2003)
「The Greatest」(2006)
を僕は女性シンガーソングライターの文脈で聞いていたけど、
ボブ・ディランにつながる系譜という視点もあった。
そのことを今回の 「Sings Dylan The 1966 Royal Albert Hall Concert」で改めて知った。
 
聞いているとこの人の本質は
ジョーン・バエズやジュディ・コリンズの方なのだなとよくわかった。
歌うことが聞き手への癒しや連帯の証となるのだという。
恐らく、彼女が第一に求めるのは
純粋な音楽的探究やポップ・ミュージックとしての完成度、ではない。
 
歌うことの喜び、そのものがある。
もはやボブ・ディランがどうこう、ではない。
あの日のフリー・トレード・ホールがどうこう、ではない。
歌いたい歌があって、それを歌った。
その潔さがとても心地よかった。
 
だから『ユダ!』のやりとりもない。
平然と ”Like A Rolling Stone” へと入っていって、歌いきる。
このアルバムの背景を知らない人こそ、
その音楽的素晴らしさが伝わってくるだろう。
まっさらな気持ちで聞ける人がうらやましく思った。