「カノン 〜家族のしらべ〜」

昨晩たまたま番宣が目に留まって、気になって見てみた NHK教育のドキュメンタリーが秀逸だった。
「カノン 〜家族のしらべ〜」という。
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/20/2259588/index.html


子どものできなかった夫婦が乳児院を訪れ、2歳の女の子を養子にもらう。
3人家族はその後普幸せに暮らした。
それから15年が経って少女は多感な17歳となる。その1年間を追う。
撮影を始めた頃はどこにでもある普通のドキュメンタリーだった。


途中で状況が大きく変わり、撮影が中断される。
夜遊びするようになった少女は親と喧嘩になり、家出。
ようやく居所を見つけて話し合いの末に家に連れ戻すが、
盛り場で見つけた彼氏の家に1ヶ月転がり込んでいるうちに妊娠。
少年はタイ人の母から生まれ、日本で育つ。
中卒。建築現場で働いていた。


少女は子供を産むという。
少女の両親もまた、自分たちには子供ができなかったから
少女には産んでほしいと思っていた。
そこでひとつの選択をする。
両親はその少年にうちで一緒に暮らさないかと提案する。
少年は受け入れる。血のつながりのない4人がひとつ屋根の下で暮らすことになる。
少年も少女も夜遊びをやめた。
少年は独り立ちして家庭を持つ日のために一生懸命働く。
やがて出産の日が来る。5人目の家族が増えた。
少女にとっては初めての、血のつながりのある家族だった。


映画のような展開だった。
誰もこうなるとは思ってもみなかっただろう。
ドキュメンタリーのつくりそのものは素朴、というか稚拙だった。
地方局の新人が課題として撮り始めたような。
途中挟まる時間の経過を表すショットが間に合わせのありきたりなものだった。
それでも、技術なんて関係ないんですね。
これがその人の人生なのだと決定づける
とてつもない瞬間に居合わせてカメラを回していた。
出来過ぎな話とすら思ってしまう。


古びた家の中は雑然としていて、ダイニングテーブルは物が山積み。
いつもリビングのこたつで向かい合って食事を取っている。
少女はそのたびに大きなペットボトルのコーラを飲んでいる。
食器棚の隙間から少女の描いた家族の絵が飾られている。
そんな普通の人々の普通の生活。
その後の少女の人生が幸せであることを願う。