「ハチミツ」(準備稿②)

※これらのシーンではクマは不在。


[下から見上げる形での]手のアップ。キーボードに入力を行っている。
[カメラはそのまま(A)の顔へ、そしてモニターへ]
PCのモニターには(A)の打ち込む文章が表示される。
平仮名が漢字へと変換されていく。


携帯が鳴る。
(単純な着信音であって、メロディーのないものとする)


(A)は立ち上がり、ベッド(机、テーブルなど)の上の携帯を取る。

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時間が経過している。
(・・・ことを示すなんらかのショットが必要。小道具とかで)


(A)は椅子に座ってPCに向かいながら携帯で話している。
(A)「うん、書いてた」
(A)「仕事が早く終わって」
(A)「・・・そんなでもない。ただ、書いてただけ。・・・いいよ。今から行く」


(A)は携帯を切る。立ち上がる。
部屋の中で、上に羽織るものを探す。
(割と適当な格好で外に出て行こうとする)


[画面には(A)の部屋の中が映っている。(A)が画面の外に消える]
誰もいなくなった部屋が一瞬映る。

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駅の階段を地下から上ってくる(B:恋人)会社帰りでスーツを着ている。
地上で待っている(A)
[最初(A)のショットから入り、カメラは向きを変えて(B)のショットへ]


(B)は(A)を見つけ、(A)は(B)を見つけ、お互いに近づく。
(2人は何かしら言葉を交わすが、その声は拾わない。雑踏の音にかき消される)
嬉しいってわけでもなく、かといって無関心でもなく。
いつもの習慣という感じで話している。
※(A)と(B)の間柄としてはとても長いという設定。


(A)(B)歩き出す。

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(B)の部屋の中。テーブルの上は「食事の後」っぽい雰囲気を。
(B)は普段着に着替えている。
(A)と(B)は部屋の中で離れた場所に座っている。
(ベッドの上と、テーブル近くの床の上のクッションとか)


(B)「今日は見えたの?」
(A)「朝起きたら、いた。会社にもそのままついてきた」
(B)「今もいる?」
(A)「いや、夕方頃追い払った。強く言ったから、しばらく出てこないかもしれない」


机の上(あるいはテレビの上)に2人で撮った写真。
何の屈託もない笑顔で、幸福そうな。


(B)「会社にね、頭がおかしくなって辞めちゃった人がいるの」
(A)は特に何も返答しない。
(B)「最初は、(A)のように幻が見えたんだって。でね、」
(A)は遮るように、「僕は、大丈夫だよ」


(A)と(B)は無言になる。(何も言えなくなる)
(B)はポツリとした声で「ごめん」と謝る。(聞こえないぐらいで)


(A)は言う、「外、出ようか」

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夜の公園。(ぼんやりとした明かりが灯っている)
(A)と(B)の2人がブランコに乗っている。
(A)は軽く揺れているだけで、(B)は割と強く漕いでいる。
(あるいはその逆。どちらがいいだろう?)


(B)が笑いかける。(A)もそれに弱々しく応える。


2人の背後に、遠く離れた場所に、クマが立っている。
2人のことを見守るように。
(A)も(B)もクマがいることに気づかない。