「ワラッテイイトモ、」

「これ面白いから是非、オカムラさん見てください」ってことで
後輩から CD-R を貸してもらい、「ワラッテイイトモ、」という作品を見た。
それまで知らなかった。
「キリンアートアワード2003」ってので賞を取ったのをきっかけに
そこから各界クリエイターの話題をさらったらしい。絶賛に次ぐ、絶賛。
・・・全然知らなかった。
http://www.kirin.co.jp/active/art/art-award/2003.html


名前の通り、「笑っていいとも」をパクっている。
膨大な量の録画ビデオから切り貼りして、
ローテクなんだかハイテクなんだかよくわからない
巻き戻しとコマ送り(?)を多用したズタズタの編集を施して、
そこに作者の日常生活を織り込んで作品にしている。
四畳半に布団を敷きっぱなしで山と積んだビデオに囲まれた西八王子の部屋。
主人公である彼は「映画を撮る」ということの意味を悩んでいるようだ。
「悩んでない」と言われるかもしれないが、少なくとも僕はそう捉えた。
たぶん、それまで何かしら「普通」の自主映画を撮ってきて、
それがつまらなくなったのかあほらしくなったのだろう。
「こんなことしてる俺ってなんか意味あんの?」と。
それがそのまんま、「ワラッテイイトモ、」を作る過程に現われている。
どこまで確信犯なのかわからないけど、とても素直な作品だ。
そのときそんなふうに感じたから、そんなのができました、という。
澱んだ生ぬるい風が流れているけど、ものすごく風通しがいい。
「笑っていいとも」を素材として使い倒すっていう舌ったらずな悪意は恐らく、天然。
普通思いついても誰もやらないことを腹の底でニヤニヤ笑いながらやってのけた、
そしてそれが評価された作者のK.K.という人はとても幸福だと思う。
うらやましい、とすら思う。


↓一般的な評価について、ここにまとまっている。
http://happysad.seesaa.net/article/1329019.html


賛否両論だけど、僕としてはこれ、非常に面白かった。
ものすごく面白かった。
特に水曜の「邂逅」と金曜の「ライブ」が。突き抜けたものがあって。
冒頭の月曜、「奇跡」を見たときはつまらなくて
「なんだ、編集で遊んでるだけか」と思ったけど。


PFF の名作セレクションみたいなイベントがあったときに見た
平野勝之の「狂った触覚」と鈴木卓爾の「にじ」の系譜に連なる作品だと思う。
鬱屈した映画青年の日常生活を傷口が滲んだように描くってことで。
その00年代版と言っていいだろう。


比較ってことで、あと思い出したのが、Negativland の諸作。
「笑っていいとも」の映像と音声を
サンプリングしてコラージュしてリミックスって手法がそのものズバリ。
まあ、アメリカにそういうグループがいるんですよ。サンプリング・アーティスト。
U2の曲を勝手に使って、それが冒涜的っていうか諧謔的で訴訟を起こされたっていう。
なんとなく音が面白いなあと思ってて聞いてたんだけど、
英語なんでそのメッセージ性がよくわからず。
ワラッテイイトモ、」を見て初めて、
皮膚感覚で彼らのやろうとしていたことがわかったように思う。
全然違ってたりして。
でもね、ナンセンス半分、
表現としてやりたいことがあるってことが半分という姿勢は共通してるはず。
参考。U2 vs Negativland
http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20041209206.html
http://loser.jugem.cc/?eid=144


僕自身は「ワラッテイイトモ、」見る機会があったら是非とも見てほしいと思う。
やっぱ面白い作品を生み出すのはアイデアとエネルギーなのだなあ、ってこと。
例えそれが鬱屈してジメジメしたものであったとしても。