食パンマン

会社の後輩たちと妻と、銀座のおでん屋へ。
汐留から大江戸線に乗って帰る。
座ることができてよかった。


新宿で大勢下りて、大勢乗ってくる。
ふと見たときにギョッとした。
ドア脇に立っていた40台半ば、僕と同じぐらいのサラリーマンが
コンビニの袋から食パンを取り出してそのまま食べていた。
仕事を終えて疲れていたのか、どこか焦るようにパクついていた。
なんとなく微妙にアンタッチャブルな感じ。


思わず二度見して、隣に座っていた妻に声を出して伝えるわけにはいかず、
iPhoneEvernote に「夜の車内で食パン食べるってすごいな」と打ちこんで見せた。
妻も気づいていて、うなずいた。
「2枚目だよ!」
「酔っ払ってるのか?」
酔っぱらってるようには見えない。
気づいたらどこかの駅で下りていた。


この違和感はなんだったのか。
これがサンドイッチやカレーパンならそこまでは思わなかったと思う。
食パンを生で食べるということは、車内かどうかに関係なく、
会社の昼休みに見かけてもギョッとするだろう。
トースターで焼いてマーガリンやバター、ジャムなどをつけて食べる。
いや、そう思ってるのは僕だけか?
家の中では、意外と多くの人が食パンを生のままで食べているのか?
子どもの頃から食べていて、案外好きだとか。


この人がいつも同じ時間に同じ車両で帰って、
決まって食パンを食べていたら「食パンマン」と呼ばれることだろう。
彼はこの世界を救うという使命の元生きていて、
束の間の休息の時間にエネルギー補給をしていたのかもしれない。
それともただ単に、給料日前で金がなかったか。