水曜のこと

グアムに到着した次の日。
結婚式が終わって、夜まで予定がなく、
ビーチに出てデッキチェアにバスタオルを敷いて寝そべっていた。
モヒートを飲んでボケーっとしてるうちに寝てしまった。
夕方、目を覚まして iPhone を見たら facebook と LINE にメッセージが。
高校時代のクラスメイトが亡くなったという。
その後何人かとやり取りした。
facebook の投稿を思い出す。あれは身辺整理だったのだ。
SOS を送っていたのに気づけなかった。皆、引っかかることがあった。
16日の午前中、火葬だという。会社を休んで行くことにした。


福生の先、瑞穂町の斎場。
瑞穂町って、恥ずかしながら知らなかった。初めて聞いた。
最寄りの駅は八高線。1時間に2本。
7時前に家を出た。
葬儀は10時から始まる。間に合うように着くとしたら 09:20頃の電車になる。
念のためその1本早いので着くようにした。08:50頃着くことになる。


西武線で拝島まで行って、JRに乗り換えてふたつ目の箱根ヶ先という駅で降りた。
改札を出て、階段を下りる。ふと見上げると、
福生が近いから、米軍の飛行機が手を伸ばしたら届きそうな低いところを飛んでいた。
寒いし、時間をつぶしたいしでドトールのようなカフェがあったら入りたいけれども何もない。
かろうじてローソンがあって、中でコンビニコーヒーを飲んだ。


改札に戻って高校の友人たちと合流。
大学のサークルで一緒だったという友人の方たちもいた。
斎場まで最寄りのバスはなく、タクシーのみ。
探そうとしたら大学のサークルの方たちが乗せてくれた。


大きな斎場で、空港のようにどの家族が何番の部屋で何時に火葬を行うか表示されていた。
1時間おきに3組ずつ行う。その予定がびっしり詰まっていた。
大学の友人の方が代わりに喪主を務める。香典を預ける。
家族の方が到着して、本日出席できない人が香典を送る際の連絡先を聞いた。


いろいろな事情があって火葬のみ。
待合室から玄関へ。棺が霊柩車から部屋の中へ運ばれる。
棺を開けて、1人ずつ花を入れていく。
故人が数年前に入信したとある宗教団体の形式で執り行うことになったが、
皆さんの宗派に基づいて構いませんと。
家族の方の挨拶があって、棺は隣の焼き場へ。
中に収めるところを僕らが見ることはなかった。
終わるまで待合室で待つ。
ジュースとお菓子が出る。アルコールもありますと言われるが、そんな気分になれない。
僕らは僕らで話すが、時折室内が静まり返って
家族の方や大学の友人たちがその日に至るまでのことを断片的に話すのを聞いた。


斎場の人が呼びに来て、骨を拾う。
こんなに少なくなってしまうのか。
骨はところどころ赤や緑が滲んでいた。
僕らが二人一組で足の方の大きな骨を拾って壺の中に収めていく。
残った骨は斎場の担当の方が、小さな粒のひとつまで小さな箒とちりとりで丁寧に集めた。
頭の方は、ここは喉仏ですとか、ここは耳ですとか、震えるような声で説明を加えた。


それで全て終わり。
待合室に戻ることもなく、玄関から外に出てあっさりとそこで解散となる。
家族の方が遺骨と写真を抱えて見送る。
タクシーに乗ろうとしたら行きと同じように帰りも大学の友人の方が車に乗せてくれた。
駅に到着する。また八高線に乗る。
大学の友人の方からまた話を聞いた。
拝島で乗り換えて立川で下りる。友人と昼を食べる。
学生時代に映画を撮ったから、映画の話になった。
こんなときにはジョン・カサヴェテス監督の『ハズバンズ』を見たい、
あんなふうに過ごす一日があったら亡くなることもなかったかもしれない。


最初は午後出社するつもりでいたが、喪服でそのまま行くことになる。
そんな気分になれなかった。
メールで連絡して、家に帰った。
15時過ぎ。暖かい日だった。
徹夜明けの妻が毛布にくるまって大相撲4日目の取り組みを見ていた。
稀勢の里引退。どの力士も稀勢の里との勝敗数が表示された。
引退会見を見た。悔いなしという。
LINE のグループでは、今度集まって故人を偲ぼうということになる。