平日の昼間、東京タワー

昨日の昼休み、天気が良かったので東京タワーまで歩いていってみた。
最高気温28℃という6月・7月並みの暑さ。
浜松町の駅から増上寺までの途中に小さな公園があるのだが、
夏のような厚さの中、一息つくと木々の緑がやけに鮮明に感じられた。


増上寺の中を歩いて、プリンスホテルの方に抜ける。
そのすぐ先に東京タワー。
忙しい時期なので展望台には上らない。
(暇な時期なら余裕でサボるところではあるが)


平日の昼間。1階の展望台エレベーター付近も2階のみやげ物屋も閑散としている。
いたとしても修学旅行で訪れた中学生たちばかり。
みやげ物屋の50・60ぐらいのおばさんたちが暇そうに世間話をしている。
ベンチでは添乗員が休憩をしている。


みやげ物屋は市場のように一坪ぐらいの店舗に様々な品物がぎっしりとひしめいている。
それが広いフロアを埋め尽くしている。
東京タワーの置物に「努力」と書かれているようなやつとかまだあるんだよな。
ステッカーのようなもの、携帯のストラップ。ご当地物のスナック菓子。
「東京」だの「江戸」だの書かれたうちわや提灯。
中学生がメインの客であるだけにアイドルの生写真も売られていて、
聞こえてくるのは「嵐」の去年のヒット曲。(さすがに題名までは覚えてない)
儲かってんだろうか?儲かってないんだろうなあ・・・。
辺り一面に漂っている停滞した雰囲気。
昭和で時間が止まったまま、風化しているような。
侘しい気分になって居たたまれなくなる。


3階に上がる。
蝋人形館の出口にあるジャーマンロック専門店「Cosmic Joker」に足を踏み入れる。
(3階のゲームセンターも閑散としていてため息つきたくなる)


いったい誰のためにこういう場所があるのか
60年代末から70年代初めのジャーマンロックばかりを集めて売っている店。
そういうジャンルに縁のない世の中の大多数の人のために解説すると、
ヒッピー文化全盛の時期に共同体生活を送りながら、ドラッグをやりつつ
延々長時間に渡ってひたすら重くて苦しくてサイケデリックな演奏をするというもの。
一言で言うと「アングラ」
サービス精神一切無し。破天荒さの度合い、ないしは鬱屈した精神世界が垣間見える度合いによって
優劣が決まるという心の健康にとって非常によろしくない音楽。
そんなわけで僕大好き。
シンセサイザーでキューンとかヒューンとか言ってるような音楽
ニューエイジからアンビエントまで含む)も元を辿ればここに行き着いたりする。


先月の日記にも書いたが、蝋人形館の中には
エリザベス・テーラー長島茂雄イエス・キリストらと並んで
これらジャーマンロックの偉人たちの蝋人形も並んでいる。
マニュエル・ゲッチングクラウス・シュルツとか
ロックが好きな人でも普通知らないような人たちのがわざわざ、小部屋まで設けられて。
余りのおどろおどろしさに子供なら泣き出すし、親も顔をしかめそうなシロモノ。
CD屋だって趣味でやってるんだろうし、東京タワーって奇妙な建物だよなあ。
こんな摩訶不思議な場所、東京から絶対無くしたらいかんよな。
(どうしてこんな間口の狭いものが昔からずっと店を構えていられるのか。
 東京タワーの経営者の息子が道楽でやっているようなものなのか?)


「Agitation Free」というジャーマンロックの中でもさらにマイナーなバンドのCDを買う。
HMVでもタワーでもあんまり売られていない。
もしかしたら都内でもここでしか手に入らないのかもしれない。
ここの店長が恐らく最も心酔していると思われる「Ashra」のCDも記念に(?)買う。
なぜかコーネリアスのTシャツがあったので、それもついでに買う。
ジャーマンロックに限らず、ジャンクでノイジーでいっちゃってるような音楽ならば
守備範囲として取り扱っているようだ。
コーネリアスがそういう音楽なのではないのだが・・・)
「No Neck Blues band」が一通り揃っていて、なにげにここはすごい。


店の中ではなかなかかっこいい音楽がかかっていて、
店番の40から50歳ぐらいのおばさん(昔かなりのロックフリークだったと思われる)に
「これなんですか?」と聞いてみると
「ドイツのアンビエントの・・・」とわざわざ棚のところまで行って説明してくれる。
「聞きたいのあったら、CDかけてあげますよ」とのことであるが、
時間が無かったので帰らなくてはならなくなる。


こういうところにいて心の中鼻歌を歌いつつも
会社を抜け出して来ているので白のYシャツにネクタイという
ごく普通のサラリーマンの格好だった僕は
それはそれで不思議な存在だったに違いない。

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次は展望台に挑戦。