博物館を出た時点で既に夕方。
夜をどこかで食べようってことになってアメ横方面へと向かう。
M先輩からトンカツはどうかという意見が上がる。
いわく、上野にはトンカツの有名な店が3つあって、そのうちの1つに行ったことがある。
場所ははっきり覚えてないが、近くまで行けばわかるんじゃないか。
「いいねえ」と即決定。
「かなり高いよ?」「やー、いいよ別に」
アメ横の中を歩く。
チョコレートの叩き売りってのがいるんだよねと誰かが言い出す。
袋にどんどん詰めていくのだそうだ。量り売りみたいなもの。
僕はまだ見たことがない。名物らしいんだけど。
松坂屋の裏にあったはずだとのことでそこまで行ってみると
「蓬莱屋」とだけ小さく看板が出ている割烹のような店を発見する。
入り口から中は覗けないようになっている。
先を歩いていた先輩と「これなんですかね?気になりますね」と話していたら
後から来たM先輩が「ここ、ここ」と。
ショーケースはおろかトンカツ屋のトの字もない。
老舗の旅館と言われたほうがまだ頷ける。かなり分かりづらい。
何も知らなかったらたどり着けない。
こ、これって一見さんお断りの敷居の高い店なのでは・・・。
入るのにためらってしまう。
意を決して暖簾をくぐってみると
あっけなく「いらっしゃいませー」と女将がお出迎え(ってほどでもないが)。
カウンターの席は狭く「うわ、これだけしか客を取らないのか」と思ったら
そんなことはなく、2階の座敷へ案内される。
M先輩がメニューあれだけしかないから、と壁に張られた2枚の札を指差す。
「ヒレカツ定食 2900円」
「一口カツ定食 2500円」
・・・こ、これだけ?
しかも何?トンカツで2900円って?
すげー。自分はこれから何を食することになるのだろうと思わず武者震い。
4人揃ってヒレカツ定食。
ビールも頼む。出てきたのはエビス。さすがだねえと感心する。
エビスのコマーシャルのようだ。
そら豆の小鉢がくっついてきたのであるが、これがまた絶品。
軽くあぶってさっと醤油をかけたってところか。
たかだかこれだけで店の力量がわかってしまう。
恐らく1年中このそら豆を出してるのではなく、季節によって出てくるものは違うのではないか?
だとしたら冬に出てくるのはなんだろう?秋は、春は?
ヒレカツ定食が運ばれてくる。
ヒレカツ、キャベツ、ご飯、味噌汁、漬物。ただそれだけ。
ヒレカツは棒状。これが一口サイズに切られている。
あまりにまん丸なのでヒレってこういう形だったっけ?とつい思ってしまう。
衣は極限まで薄く、ただただ柔らかくジューシーなヒレ肉の塊だけを食べているような気になる。
衣にも肉にも油っ気一切なし。カツとしては質素極まりない。
なのに全体的にホカホカと温かい。なかなか冷めない。
こんなの初めて食べた。
後で調べてみたら高温の油で一気に揚げた後は低温の油へ、と2度揚げするのだという。
これは確かにうまい。
でも僕は根が庶民なのか、衣が厚くて油がジュワーッとなってるのが好きなんですよね。
肉も脂身OKで。
そんなわけでちょっと物足りない。
そういう趣味の問題を抜かして客観的に考えれば、これはもうとんでもない逸品。
7・800円で食べる街のその辺のトンカツと同じようには扱えない。
というか↑とは名前が同じだけの別な食べ物なのだと思えてならない。
先輩たちは無心になってうまいうまいとそれしか言わず一心不乱に食べ続ける。
ご飯の器が小さくてお代わりをする。
もちろん、ごはんもキャベツもおいしい。
腹いっぱい食べ終わって満ち足りた気持ちになる。
実にグルメな1日だった。
「みはし」は東京駅の地下にもあるようなので、また「氷クリーム金時」を食べたい。
まずはそこから。
「ボンベイ」にも行くぞ。