「ソウル・オブ・マン」

土曜に六本木のVirginシネマで見た「ソウル・オブ・マン」について。


2003年はブルース生誕100周年ということで
アメリカでは「イヤー・オブ・ザ・ブルース」だったのだそうな。
そういうこともあってか
巨匠マーチン・スコセッシは「The Blues Movie Project」を立ち上げる。
プロジェクトの一環として7本の長編映画が作成された。
(短編を集めてオムニバスとしなかったところがすごい)


ソウル・オブ・マン」はその中の1本。
監督はなんとヴィム・ヴェンダース。無類のロック好き。
代表作「パリ、テキサス」も「ベルリン・天使の詩」も
監督の音楽的な趣味がものすごく反映されていた。
キューバの伝説的なミュージシャンたちを集めて映画界を超えて広く話題となった
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」も記憶に新しい。
この人の劇映画は正直最近のものはちっとも面白そうじゃないんだが、
音楽ものとなるとまだまだいけるだろ、そう思って見に行った。
ヴェンダースだろうと誰であろうと僕の場合
音楽映画ってのはそれだけで楽しい気持ちになるものだし。


ヴェンダースは3人の伝説的なブルースマンを取り上げる。
ブラインド・ウィリー・ジョンソン、スキップ・ジェイムス、J・B・ルノアー。
ブルースをほとんど聴いたことがない僕からしたら知らない人ばかり。
(様々な人がカヴァーしているのでかろうじて1人目はその名前をなんとなく覚えている)


J・B・ルノアーは60年代に活動していたので映像が残っている。
残りの2人は戦前の人たちなので映像が残っていない。
なので役者を使って演奏シーンとそれにまつわるシーンが再現される。
曲は実際の「伝説的」な録音をそのまま使う。
これらのシーンの合間にブルースの継承者たるミュージシャンたちが
それらの曲をカヴァーして演奏する光景が挟まる。
ベック、ルー・リード、ジョンスペ(ブルース・エクスプロージョンと最近グループ名を短縮した)、
ニック・ケイヴカサンドラ・ウィルソンロス・ロボスと非常に豪華なメンツ。
ヴェンダース人脈活きまくり。
個人的には動いている映像を初めて見たということで
マーク・リボー、ルシンダ・ウィリアムズ、ジェームズ・ブラッド・ウルマーがありがたかった。
これらの人たちの演奏シーンを見るのが一番の目的で劇場に足を運んだと言ってもいい。
それにしてもベックって才能ある人なんだなあと改めて思わされたし、
このところ新作を聞いても面白いと思わなかったジョンスペってライブはやっぱ最高だし、
ニック・ケイヴは相変わらずの全身全霊激昂ぶりで「やるなあ」と唸らされた。


映画そのものとしては今ひとつ。
ヴェンダースのファンか、ブルースの熱心な愛好家か、
僕みたいな上記のミュージシャン目当ての人でない限り、見てもつまらないだろう。
77年に打ち上げられたヴォイジャーには
異星人と遭遇したときの「異文化交流」のためにレコードが1枚収められていて
そこに20世紀アメリカ音楽の代表として選ばれたのは
1927年のブライアン・ウィリー・ウィルソンが演奏する「ダーク・ウォズ・ザ・ナイト」だった。
なので、ブライアン・ウィリー・ウィルソンはヴォイジャーに乗って今でも宇宙空間を旅している、
そして人類に向かって語り掛ける。
このアイデアはなかなかいいんだけど。

サントラは絶対買いだろう。


あと、仲井戸麗市土屋公平内田勘太郎
この3人による直筆メッセージが寄せられたプログラムも買いだろう。

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ブルース・プロジェクト絡みの商品で言えば、
昨年から「マーチン・スコセッシのブルース」というシリーズで
マディ・ウォータースやエリック・クラプトンロバート・ジョンソンなど
新旧ブルース界を代表する人たちのコンピレーションが発売されている。
これをCDショップでよく見かけてて、僕は「どんなんなるんかな」とずっと気になっていた。
全7作のうち4作分は日本でもサントラも出るようだし、
マーチン・スコセッシのブルース」という名前でCD5枚組みのセットや
そのダイジェストまで出ているようだ。
なんだかすごいことになっている。


僕は普段ブルースを聴かないというか、
まだまだ勉強不足なところがあるんで(音楽史的にというよりは人生経験として)
なかなか手を出しにくいんだけど、この機会にいろいろ聞いてみたいなあと思った。

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全席指定。劇場内に入って席を探すと、僕の席の辺りに紙が貼ってあった。
なんだろ、指定席の中でも特別な指定席なのだろうか、と思う。
近付いてみたら僕の席だった。
見たら、抽選に当たっていたようでこの席に座った人には
「ブルース・プロジェクト」のポスターを差し上げます、ってことになっていた。
見終わった後で劇場の人からポスターと「ブルース・プロジェクト」の小冊子をもらった。
非売品かな。だったらいいな。

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機会があったら、他の6作品も見てみたい。


クリント・イーストウッド監督(!)の作品も含まれているのだが、
本人の希望により公開しないらしい。
アメリカでは公開するが日本では公開しないということか?)残念だ。
クリント・イーストウッドのその作品「ピアノ・ブルース」は
自分も趣味で長いことピアノを弾いているせいか
ブルースに限らずジャズのピアニストをフィーチャーしたもののようだ。
デイヴ・ブルーベックオスカー・ピーターソンファッツ・ドミノ、などなど。
見たいなあ。