恋人たちは砂丘の向こうに消えた

恋人たちは砂丘の向こうに消えた
波の音だけが残された
やがてその波の音も聞こえなくなった
風に吹かれてサラサラ、サラサラと砂の子供たちが宙を舞う
そしてそれ以外には何も聞こえなくなった


恋人たちは砂丘の向こうに消えた
その頃誰かが二人のことを考えていた
郊外の小さな家、窓の向こうには草原が広がっていた
二人のために手紙を書いて
届けてくれる人が丘を越えて現れるのを待った


恋人たちは砂丘の向こうに消えた
そして二度と戻ってこなかった
手を繋いで、心の中では歌を歌っていた
振り返ったりはしなかった
あの幸せがいつまでも続けばいいと思った


恋人たちは砂丘の向こうに消えた
僕たちはサヨナラも言わなかった
荷物をたたんで海辺を後にすると自転車に乗って家路についた
夜になると星が輝いた、降ってくるような星空だった


恋人たちは砂丘の向こうに消えた
波の音だけが残された