僕の音楽遍歴 その7(高校1年)

高校に入った頃から洋楽趣味が全開になる。
無駄に意味も無いところで変に潔癖な性格が災いして、
「これからはもう邦楽なんて聞くもんか」なんて心に固く誓ってしまう。


中学生時代にビートルズを聴き始めて一通り極めると、「次」を求めたくなった。
それまで洋楽に対して全く詳しくなかった僕が
ビートルズ以外に初めてレンタルCD屋で借りたのは
Led Zeppelin の4枚目と The Clash の1枚目。
なんとなく名前は知ってて、有名だったので「まずはここから聞いてみるか」と思った。
※なお、当時はほんとわかってなかったから、どうもこれが話題らしいと
 コリー・ハート(懐かしいですね)を借りてきたりしていた。
 ・・・もちろん1回しか聞かなかった。


Lez Zeppelin の4枚目なんて洋楽初心者が初めに聞くもんじゃないよな。
余りにも完成度が高いんだけど、それが普通だと思ってしまった。
その前に聞いてたのがビートルズだったのでなおさら。
中学生で丸坊主で土日も学校のジャージだけを着て暮らしていた僕からしてみれば
とんでもなく衝撃的な作品だった。
「これがロックか!」「これがハードロックというものか!!」
でも、不思議なことにそこからハードロック・メタルに進んでいくことは無かった。
僕がLed Zeppelin で好きになった要素は
・音の強度、圧倒的な存在感(例「When The Levee Breaks」)
・ボンゾの叩きだす破天荒なグルーヴ(例「Misty Mountain Hop」)
・垣間見えるエスニックというかエキゾチックなフレーズ(例「Four Sticks」)
であって、
代表曲とされる「Stairway To Heaven」のギターソロがどうこうってふうにはならなかった。
(これまた不思議なことに)自分でギターを弾こうって気にもならなかったし。
分かる人には分かる話ですが、この例で上げた3曲ってどれもB面なんですよね。
普通4枚目って言ったらA面の
「Black Dog」「Rock And Roll」「Stairway To Heaven」なんでしょうけど。
これって象徴的なことだよなーと今ではしみじみ思う。
僕のその後の音楽的趣味をよく表わしている。
A面が王道サイドだとしたらB面は異物サイドとでも呼ぶべきものであって。
A面ももちろん好きだけどどうしてもB面の方に目が行ってしまう。
その後の人生において文学も映画も、どんな感じのものが好きですか?と聞かれると
「得体の知れないもの」と答えてしまうような人間となる、
もしかしたら分岐点かもしれなかった。
あるいは、ここで表面化した。


・・・なのでその後一通り Led Zeppelin を聞いてみて4枚目以外に好きなのは
7枚目の「Presence」だったりする。
一見つるりとした滑らかな手触りのハードロックなんだけど
最も訳の分からないアルバムだから。他のどのアルバムよりも底知れない闇が広がってるから。
得体の知れない凄みがあって、得体の知れないファンキーさがあって、
得体の知れない音の塊が鳴ってるから。
純粋に音楽的に聞くならば1枚目か2枚目ってことになるんだろうけど。
でも実は「Presence」を聞いたのは高3ぐらいで、
4枚目を中学生の時に聞いてそこからしばらく Led Zeppelin からは遠ざかっていた。
余りに圧倒的な完成度ゆえに「これ以上のものはないんだろうな」と
直感的・本能的に知ってしまったから。


そして今でも4枚目を聞いたときの衝撃を再体験したくて、
僕は手当たり次第に、普通の人からすると尋常じゃない量とスピードの音楽を消費しているのだと思う。
いろいろと聞いていった末に辿り着いた地点が Led Zeppelin の4枚目だとしたら、
幸福な音楽人生を過ごせただろう。
そして極め尽くした達成感ゆえに、ロックというジャンルから足を洗っただろう。
そういうことにはならなくて、僕はもう10何年も「悪魔に魅せられた」状態だったりする。

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その一方で The Clash の方は1枚目じゃ物足りなくて、
その後すぐ他のアルバムを次々と借りてきてテープにダビングした。
ブルーハーツ仕込みのパンク好きってのが根っこにあるから、
すぐにも親しみが湧いたのだろう。


Led Zeppelin の4枚目と並べるとものすごい両極端。
音が余りにも軽くて薄っぺらい。
でも、身近に感じて何度も何度も繰り返し聞いて生活の糧としたのがこっちだったりする。
出会いというものはつくづく奇妙なものである。
1曲目の「Janie Jones」のツッタカタッタ、ツッタカタッタというドラムの音を聞くと
今でも新鮮な、「ウォーッ!」という気持ちになる。
「White Riot」「London's Burning」というのが
曲の中身以前に概念としてかっこよく思えた。
ブルーハーツ並みに燃えた。


あれこれ聞いたけどやっぱこの1枚目の「白い暴動」だよな。今でもそう思う。
ストーンズ同様、「London Calling」の良さが分かったのは
やはり20代に入ってからだったりする。
「Sandinista」は今も昔も好きです。
2枚目は今も昔もピンと来ない。

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当時非常に「いい!」と思っていたのに
The Clash を聞いてたのってたぶん僕だけだったんだよな。高校の学年全体でも。
Sex Pistols は何人か持ってる人いたけど。
洋楽といえばメタル。
友人たちの多くがメタルを聞いていて、それ以外のジャンルには興味を持って無さそうだった。
なので「オカちゃん、これいいから聞きなよ」と勧められて借りるのは
Yngwie Malmsteen や Greate White などなど、
国と地域、時代を問わないコテコテのメタルの数々。
LAメタルよりはジャーマン系の方が多かったような印象がある。
借りたうちの半分は全然体が受け付けなかった。
なんというか、ハードロック・ヘヴィメタルの美意識の中に閉じこもっているもの。
今でも全然だめ。どれだけ音楽的な関心領域が広がっても。
残り半分は今でも聞いたりする。
Mr.BIG, Metalica, Whitesnake あと最近はさすがに聞かなくなったけど、
Pretty Maids とか。これらと比較するとあんまり知名度は無いけど、
Pink Cream 69 というバンドは非常にいい曲を書いていた(ただし2枚目まで)。
Metalicaの5枚目が出たときなんて「事件」だったなあ。
レンタルに並ぶと早速借りに行った。
「オカちゃん、あれ聞いた?」「聞いた聞いた!」ってな感じ。


今でこそ Metalica はロック界全体での大物で
Rockin'on で表紙になってもおかしくないぐらいだが、
当時はまだハードロック・メタルとそれ以外のロックは全然住む世界の違うものだった。
Metalica の5枚目がその垣根を越え始めた最初のアルバムだったように僕は記憶している。
その後 Faith No More のようなミクスチャー、
Jane's Addiction のようなオルタナティヴ、
Nine Inch Nails のようなインダストリアル、
さらに時代は下って Korn のようなヘヴィ・ロックが台頭してジャンルは融合しあう。
スラッシュメタルが人気を博し、例えば Anthrax が再評価されるようになる。


メタルを聞いてる友人たちのほとんどが軽音でバンドをやっていて、
文化祭となるとその手の曲の演奏をしていた。
僕は何度かそういうののビデオ撮影をした。
軽音の凄腕メンツが集まったバンドは確かこっそり学校を休んで
仙台で行われたアマチュアのバンドコンテストに出て、優勝した覚えがある。


80年代のハードロックの名盤はやっぱ
Guns N' Roses 「Appetite For Distruction」
高校の頃に借りて聞いた時には「勢いがあるねえ」ぐらいにしか思ってなかったけど、
今聞くとこれメチャクチャとんでもない。
どうしたらあんな曲が書けて、あんな演奏ができるんだ?
「Rocket Queen」みたいな曲、他では聞いたことがない。

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そう言えば中学校の時に洋楽って言ったら周りはユーロビートだったなあ。
特にヤンキー系の連中が聞いてた。
運動会でもユーロビートに合わせてみんなでラジオ体操系の踊りもさせられたもんだ。
今でもあるのかな。時々見かけるような気がする。
ユーロビートって結局なんだったのだろう?
位置付けとか意味合いとか実体ってなんだかよくわからない。