メキシコ(9/4)その9 チャプルテプック城

「城へ」と書かれた掲示板に沿って進んでいくとやがて坂に出る。上っていく。
スピーカーからスペイン語で男女の会話が聞こえる。メキシコの歴史の解説のようだ。
にぎやかな音が下から迫ってきて、なんだろうと見てみると
おもちゃの汽車が大勢の人々(もちろんその大半は子供)を乗せて坂を登っていくところだった。
その後坂の上や坂の下で見た乗り場は順番待ちの人たちでいっぱいだった。
坂の途中から、メキシコの街を見る。
公園の深い森の向こう、建ち並ぶ高層建築。僕は何枚も写真を撮る。
坂道のどちら側もヤシの木やその他いろんな種類の木々が植えられている。
どんな植物も育つがゆえにどんな植物も植えられている、そんな印象を受けた。メキシコ全般がそう。


城の途中に「国立歴史博物館」があったので立ち寄る。
33ペソ。やはり入場料を取られる。
入場口にいた男性はスペイン語しか話せず、入場料が必要だとわかるまでかなりかかった。
螺旋型になっていて、下っていきながら展示物を眺めるというユニークな構造。
最下層に到着すると今度は外に出て、木々に覆われた小道を上っていく。
16世紀にスペイン人コルテスが乗り込んでアステカ文明を破壊し、スペインの植民地となる。
1824年に独立を果たすものの、今度はアメリカ合衆国と戦争になる。
敗れてテキサスを割譲することになる。
その後近代化を迎えるものの、ナポレオン3世の差し金で
オーストリア出身のマクシミリアン大公による帝政が始まる。しかし彼も抵抗運動にあって処刑。
独裁者の時代を経て1910年にメキシコ革命。1917年に憲法が制定される。
こういった歴史の流れを、精妙な模型を通じて学べるようになっている。
歴史の一断片・一光景を切り取って配置された人形たちと、その解説と。
その背景が教会だろうと船の上だろうと城だろうと倉庫だろうと荒野だろうと、
一方に銃で撃たれるのを待つ人間(西洋人だったり西洋人でなかったり)がいて、
その一方に銃で狙いを定める人間がいる。
ひたすらその繰り返し。半分以上がそういう光景。
革命と戦争。大変な歴史だ。
でもよく考えてみると日本の歴史も切り取って見るとそうなってしまうか。
「○○の戦い」「○○の乱」「○○事件」
現代以前では歴史が動く瞬間のほとんどが戦争や軍隊に絡んでいる。


歴史博物館の先に、チャペルテペック城がある。
ここもやはり入場料を取られる。38ペソ。
城とは言ってもドイツやフランスのものものしいやつではなく、どちらかというと宮殿に近い。
中は名古屋城のように博物館となっている。
スペイン植民地時代から独立、メキシコ革命に至るまでの様々な事物を展示している。
ここもまた人類学博物館同様、歴史の知識がないと辛い。
気を緩めた途端何もかもが一緒に見えてしまう。
宗教的絵画があり、肖像画があり、大きな壁画が部屋ごとに何枚も並んでいる。
珍しいものがたくさん並んでいた(はずな)のでほんとはあれこれ書きたいんだけど、
デジカメで写真を撮っていると「ノーフォトグラフ」と言われるし
メモを取ってると「ノーなんたらかんたら」(で、書くジェスチャー)と言われるしで、
記録じゃほとんどなし。ここには警官がいないなとこっそり撮ったり書いたりしたものばかり。
でも急いでやってるから写真はぶれてるし文字は読めたもんじゃない。


博物館の隣では(城の中を2つに区切っている)、
20世紀初め、メキシコ革命勃発時にこの宮殿に住んでいた独裁者ディアス大統領が
当時使用していたそのままの雰囲気を残すようにしている。
(「地球の歩き方」ではディアスとなっているけど、
 僕のメモではマクシミリアンとなっている。どっちだろう?両方?)
望遠鏡、時計、大砲、カメラ、モールス信号機、ドレス、軍服、銀器、玉座
これらがガラスのケースに収められて飾られている。
ディアスの使用した執務室と、大統領夫妻が使用したサロン、浴室、寝室。
晩餐会のための広間にはシャンデリアが吊るされ、
クロスの掛けられたテーブルの上には銀の燭台が並ぶ。


最上階の屋上は小さな庭園となっていて、真ん中には塔が建てられている。
観光客は入ることができない。何のために使われていたのだろう?
教会だろうか。


こういう場所に来て考えることの1つとしてあるのは
西洋人による侵攻と表裏一体にある、キリスト教を受容するという行為とその過程。
遠い大陸の地で変わり果てたキリストとそれによって表されるものの姿。
支配する側の西洋人と、特にその妻にとってのキリスト教の意味。
支配される側の男たちと、その妻にとってのキリスト教の意味。
前者の遺品としてこの時代に残されたもの:
カトリックの規範に縛られることで慎ましやかになりながらも、それなりにきらびやかなドレス
後者の遺品としてこの時代に残されたもの:
・小さな家の片隅の小さな祭壇に残された小さなイエス・キリストの絵
この辺りのことについて調べた上でいつか書きたいと思うものの、いつになることか。
調べればいろんな事が出てきて大変なことになりそう。


坂を下りていく。打楽器だけのバンドが演奏して、ピエロも踊っていた。
今日はピエロを何人も見かける。
打楽器の繰り出すリズムは多少まとまりにかけるものの熱狂的な雰囲気があった。


15時。公園を出る。
前とは違う出口を出てみて、人の流れが地下へ飲み込まれていく。
そのまま入り口へと入ってみたら地下鉄の駅だった。
地下街となる。ドミノピザ、本屋、女性の下着を売る店、ジューススタンド。
しばらく歩いてとりあえず上に出てみると屋台が建ち並ぶ、市民の憩いの場のようなところに出た。
そこをまたフラフラ歩いてみる。屋台そのものは公園の中と一緒。だけど声はこちらの方が大きい。
子供の姿は余り見当たらなく、どことなくなんとなく下世話な雰囲気が漂う。その分活気がある。
テントの下に即席のステージが作られていて、キーボードをバックにラップというか
熱く(恐らく若さゆえの恋の悩みを)語っている男性の周りに大きな人垣ができていた。
ハッとして、道に迷うと困ると思い、引き返す。
来た道をそっくりそのまま辿り直してホテルまで戻る。
途中でセブンイレブンを見つける。これは便利だ。ホテルから5分のところとかなり近い。
ビール(飛行機の中で飲んだのと同じ、「Modelo especial」) 9.5ペソ
メキシコのポテトチップ 6ペソ
明日の朝食べるサンドイッチ 8.5ペソ
明日のティオティワカン観光で腹が減ってると困るので買ったスニッカーズ 8ペソ


本当はコロナビールを飲みたかったんだけど、栓抜きがないことを思い出し、諦める。
ホテルの部屋に戻ってぐったりする。16時半。
ルチャリブレを見に行くことに挑戦、
あるいはまだまだ明るいし他の観光スポットを見に行くでもよかったんだけど
とにかく疲れていた。本日は営業終了。
テレビをつけると、スポーツ専門チャンネル(来てからずっとこればかり見ている)では
USオープンの中継が行われ、ヴィーナス・ウィリアムズセリーナ・ウィリアムズの姉妹対決。
思わず見入る。テニスには詳しくないけど。
予想通りビーナスの方が勝つ。1セット目は手に汗握る接戦となる。タイブレークに持ち込む。
セリーナの方がアスリートって感じで、ヴィーナスの方は女子テニスって感じ。
着ていたユニフォームの印象ってのもあるんだろうけど。
基本的な強さはセリーナの方が上なんだけど、
しなやかな得体の知れない才能はヴィーナスの方が上、そんな感じがした。


その後、別のスポーツ専門チャンネルでワールドカップサッカーの予選、
イングランドウェールズを見る。イングランドが順当に勝つ。
ベッカムの名前がところどころ聞き取れて、ああ、向こうでもやはりスター選手なんだなと知る。
さらにその後、テニスに戻って男子の試合を見る。
サンギネッティ対スリシュハン。(どちらも知らなかったので名前は聞き取り)
こちらも負けず劣らず熱戦。タイブレークへ。
サンギネッティという選手は勝ったときの動作がユーモラスで好感を持った。


シャワーを浴びて小説を読んで寝る。夕食は取らない。
腹は減ってるのか減ってないのか分からない状態で、食べないことにした。
というかレストランを探すとかそういうのが億劫になった。


ベッドメイキングのチップに10ペソ。硬貨で。
昨日は細かいのがなくて20ペソ。紙幣で。