いわゆる姉歯問題

いわゆる姉歯問題。というかマンション耐震強度偽造事件に関して。
僕は僕の人生ゲームにおける
直近のマス目に「マンションを買う」ってのがなさそうなので
「買った人は立ち退くだのローンだの踏んだり蹴ったりだよなあ」
と、かなりなところ他人事というか
「世の中病んでるなあ」なんて平和ボケした気持ちでニュースを眺めている。
相次ぐ幼児殺害事件と自分の中では同じ扱い。


マンションとか思ってると自分には関係なさそうだが、
「設計」って観点からすると他人事じゃなくなってくる。
これまでに何回も何回も繰り返し書いてきたんだけど、
SEという仕事も免許制にして
資格がないと設計書が書けないし、工程の管理もできないようにするべきだと思う。
その設計書も、公的な資格を持ってる第3者が診断/審査するのが望ましい。
大規模開発なら特に。
まあ、今すぐそうするべきだとは思わないし、現実性に乏しいんだけど、
長い年月をかけてそういう方向性に向かっていくべきだとは思う。
大学で専門的な教育を受けた人が国家試験に受かって
初めて「システム設計士」と名乗れる、とかね。


証券取引所のシステムが落ちたとか、
空港の管制塔のシステムに不具合があったとか
そういうニュースを聞くといつも思う。
なんで「プログラムにバグがあって、テストのときに見つからなかった」の一言で
ニュースが片付いてしまうのだろう?
世の中の人は納得してしまうのだろう?
同じ「設計」でも「地震が起きてマンションが傾いた」だったら大騒ぎになりそうなのに。
「システムとはそういうものだ。難しいコンピュータのことはわからない」ってこと?


杜撰なわけですよ。
何もかもが、とはいかないまでも。
出来上がったシステムの品質を客観的に図る指標ってあるようでないもんだし
応答時間何秒みたいな性能の指標なんかはよくあるが)
SEが行う設計ってヤツがそもそもつかみ所が無いものだったりする。
教科書はない。抽象的な話か、現場のノウハウ集か。
会社によっては社外非の設計テキストがありそうだけど、一般的なものではない。
一子相伝に近いようなものだったりする。


この業界に7年もいるのでいろんなことを経験して、
ああどういうシステムをつくるのも基本は一緒だな、というのが感覚的に分かってきた。
ネットワークだとか、サーバーだとか、開発環境にセキュリティに、
ファイル連携の仕組みだとか、テストの仕様書の書き方だとか、
スケジュールの進め方に問題事項の管理の仕方。
たぶん、どこの会社でSEをやっていても同じようなところに落ち着くと思う。
・・・なのに、それが体系化されて一般的な教育がなされていないのが実情。
「現場で揉まれなければ身につかない」という迷信がそこかしこに残っている。


そんなわけで設計をしても何をどこまで考えて記述するかってのも
各社・各部門・各PJ・そのPJの中の個々人で(!)違っていたりする。
しかもその設計書が書いたら書きっぱなしで、
十分な時間をかけてPJ内でレビューをしたり、顧客とレビューをする時間ってなかったりする。
顧客は「よろしくやっといて」「他社に先んじてとにかく早く公開したい」って言ってたり、
PJ内では「コスト削減」を考えていたり。
そりゃ証券取引所のシステムも落ちるよな・・・。
(↑このシステムの開発を担当した会社の実情がどうだったかを知らずに書いてます。すいません)
いろんな団体があって標準化が図られているけど、なかなか目に見える進展はなさそう。


これから先システム開発の需要はまだまだなくならないし、
というか様々なレベルで様々な物事が増える一方だと思う。
設計を行う人は医者や弁護士とまではいかなくても国家資格扱いにして、
しかるべき手順を踏んで作業が進んでいく方がいいんじゃないかと思うんだけどね。
でも逆にそしたらそしたで何事もチンタラ進むようになって、
形骸化した診断/審査が行われるようになって、という弊害も出てきそうだ。
そう考えると難しい。
あと、日本だけこういう方向性に向かっていってもうまくいかないだろうし。
コンピューターってのが草の根的に広まりすぎているので
国家横断的な設計技法の教育ってのは難しいだろうな。
(スーパープログラマーみたいな人が個人的に開発して世に提供しているものが多いことから、
 あるいは Linux を1人で開発したフィンランドの学生ってのが出てきたりして、
 「コンピューターってそういうものだ、すごい人がなんかするものだ」という固定観念
 全世界的に根強いと思う)


国家資格というか行政法人が試験を行って与えてる資格ってのがあるんだけど
これもどこまで意味があるか。
僕もいくつか持ってるけど持ってたところで何がどうなるものでもないし、
持ってなくても全然仕事はできる。
単なる目安であって法的な拘束力はゼロ。
でも他にないから、みんなが受けてる。
就職・転職活動に役立つだけかな。
他はオラクルやマイクロソフトやシスコなどベンダーが提供しているものだけ。

    • -

建築業界やIT業界に限らず、
短納期・コスト削減ってのはどこの業界も一緒でみんなつらい目に合ってんだろうな。
一握りの勝ち組とされる人々のために。
一昔前の言葉で言ったら「搾取」だよな。


こういう構造は、たぶん、一生なくなることはない。
勝ち組に回るべく努力した方が賢いのか、
「大多数」の側であっても賢く立ち回ってるほうがいいのか。


生まれたときから大金持ちというのでもない限り、
これは人間にとって永遠の問題である。