クリスマスイヴのイルミネーション

クリスマスの時期になると思い出すんだけど、
僕が小学生の頃、クリスマスイヴのイルミネーションとして
ビルの壁をキャンバスに見立てて全階全部屋の照明の ON/OFF で
絵を描くというののデザインのコンテストがあった。
キャンバスとなったのは東京のビル2つ。
そのうちの1つが霞ヶ関ビルだったことは今、思い出せた。
でももう1つがはっきりしない。三井なんとかだったような気がする。
2年か3年連続で開催されて、僕は最初の2年続けて応募した。
新聞の広告で見かけて、ハガキを送ると封筒が届いた。
中には高層ビルの窓全部をマス目にした専用の用紙が入っていた。


もちろんあっさりと落選。
子供心に欲張ってあれこれ詰め込もうとして
ごちゃごちゃした絵になったような気がする。


今思うとけっこう気のきいたコンテストだったように思う。
ビルの壁一面を使ってクリスマス用の絵を描くなんて
なかなかファンタスティックなことじゃないですか。
あれはバブルの始まりの頃だったからできたのだろうか。


大人になった今、
あれって実現するのかなり大変だったんだろうなーというのが容易に想像できて、
実現した人たちの努力と熱意に感心させられる。
何百という窓の照明の ON/OFF を正しく行って
絵柄を完成させるってのもさることながら、
OFF の暗い部屋となることが決まってたら
その日仕事をしなきゃいけなかった人たちを
どこか移動させるなりなんなりしなきゃいけなかったんでしょ?
この調整ってとんでもなく大変そう。気が遠くなる。
中には「そんなの俺の知ったことじゃない」って非協力的な態度の人もいれば
「いや、どうしても明日までに間に合わせなきゃならない資料が!」ってな人が
慌てて突然出てきたりもしそうで。


あれぐらい大きなビルだったら、ビル丸ごと1つの会社の自社ビルって可能性は低くて
テナントとしていくつかの会社が入っていたと思われる。
自社ビルならまだ楽で、社長の「やるぞ!」の一言でスムーズに始まるけど、
まずはテナントに入っている会社の総務部門(?)の代表者を集めて
企画書の説明から始めたんだろうな。
そして賛成の度合いにもあれこれ温度差があって。いろんな意見や課題が出てきて。
打ち合わせを何回も何回も何回も繰り返して。
これが実現できたのは関わった人たちがみな「大人」だったからなんだろうな。
(始まったとたん「へへーん、つけちゃうもんねー」と勝手に
 ON/OFF していきがってるようなバカもいなかったのだろうし。
 今なら忍び込んでそういうことやりたがる若者がたくさんいそうだ)


実現のため陰ながら日々奮闘して、成功に導いた関係者にとっては
最高のクリスマスイヴとなったのでは。
(こういうのこそ、プロジェクトXで取り上げるべきだったのに・・・)


街行く人々が「わー」と声をあげながら見つめ、指差しているそのビルの中では
ON の部屋にて普通にいつもどおり仕事してた人も大勢いたと思われる。
電話が鳴ったり、会議をしたり、コピーを取ったり、謝ったり。


それともクリスマスイヴってことでみんな早く帰ったのか。
たぶん、何割かの人はいつもより早く帰ったんだろうな。
そして、いつもならあらためて見ることの無い
自分の働いているビルを遠くから眺めてみたんだろうな。
なんだか、うらやましい。


なんにせよ、この頃はまだ世の中というものが
全般的におおらかだったように思う。