結婚式で富山へ その1(12月23日)

3連休の初日である23日、
大学の先輩サイノウさんの結婚式が故郷富山で行われた。
僕らの映画サークルの中でも歴代のコアなメンツが召集される。
前にも書いたが、サイノウさんは僕の人生に多大な影響を与えた人であって
この人なくして今の僕はありえない。
なんとしでもいかなくてはならない。
仕事が忙しくて休日を奪われることになったら辞表を出してでも行くつもりだった。
誇張ではなくマジな話。ほんとです。
今の自分を形作った大切な人の冠婚葬祭に顔を出さずして何を人生と呼ぶ?
(・・・この辺の意気込みを語りだすと長くなるのでこれ以上はやめます)


東京から参加する人たちの航空券とホテルを
サイノウさんが手配してくれることになって、
せっかくだからとみな1泊して24日も富山で過ごす。
僕が最初に24日の夕方の便を選んだら、
つられて?他のみんなも同じ便で帰ることになった。


初めての富山。
そもそも北陸地方というものが初めて。
フジロックで苗場(新潟)には3回行ったことがあるけど、
新潟は北陸に入るのかな。
僕はこれまで北陸だと思ってたんだけど、どうも違うらしい。
今回富山在住の人にあれこれ聞いてみたわかったとこでは
総じて新潟の人は関東地方だと言い張っていて
関東地方の人は新潟を東北地方だと思っている。
富山の人たちにしてみても北陸とは富山・石川・福井のことを指すようで。
仲がいいんだか悪いんだか。
結局新潟ってどこに所属するものなの?

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富山と言えば大雪。
12月の積雪量が過去最大だとか。
今から富山行きますという僕らからしてみればリアルタイムに大問題。
僕みたいな小心者は前の日から
大丈夫だろうか、行けるだろうか、飛行機は飛ぶのだろうか
とソワソワして仕事も手につかなかったのに、
他の人たちはみなのんきなものでそういうことを話題にする気配一切なし。
僕もまた最後には「まあなんとかなるか」と思って寝る。


朝起きて天気予報を見る。
23(木)・24(金)は依然として大雪という状況は何も変わっていない。
8時40分羽田発だったので6時起き。
何が起きるか分からないからとりあえず早く行くに越したことはない。
部屋の外に出ると快晴。雲ひとつない青空。
名古屋で大雪、鹿児島にも雪が降ったというのに
東京は全然雪が降らないもんやね。
この国の反対側は雪で閉ざされてるってのがあんまりピンと来ない。


地下鉄に乗って、山手線に乗り換えて、浜松町から羽田行きのモノレールに乗る。
浜松町にて自動チェックインの端末を見つけたので航空券を通してみたら、
「この便は搭乗手続きを一時停止しています」とメッセージが出て、びびる。
「天候調査中」ってやつ。
「あー、行けないのかもな・・・」と本気で不安になりだす。
どうしようかな、と思う。この航空券を払い戻して新幹線で行く方がいいだろうか?
でもそれもどれだけ確実なのだろう?
東北新幹線は雪に慣れてるから多少の遅れが発生するぐらいでそのまま突き進んじゃうけど、
富山へと向かう新幹線もそれぐらい雪に慣れてるものなのだろうか?
太平洋側を走る新幹線はちょっと雪が降ったぐらいで止まってしまって、
新幹線の中で一晩明かしましたってよくニュースに出てくるじゃないか。
新幹線は富山へと辿り着く可能性そのものは高まりそうだけど、なんか得策っぽくない。
・・・悩んでいても仕方がないから、羽田まで行ってみることにする。
飛べるようになるかもしれないし、僕1人で悩むよりはみんなで悩んだ方がいい。
僕1人で新幹線に乗ったらなんだか抜け駆けっぽいし、
飛行機が実は飛んだのに僕1人だけ新幹線を乗り換えたりなんだりで
モタモタして結婚式に間に合わなかったら、無茶苦茶アホっぽい。


羽田到着。
依然としてステータスは「天候調査中」
空港の中をブラブラする。腹が減ったので何か食べたいなあと思うが
時間が時間なので安っぽい軽食か、朝食として食べるには高すぎる高級な店しか開いていない。
さてどうなるものやら、と思いながらフラフラ彷徨っているうちにアナウンスがあって
「883便の富山行きは定刻どおり出発します」とのこと。朗報。ついてる。
(昔はこれで飛ばなくて、青森空港からタクシーと特急を乗り継いで
 三沢空港まで行って東京に戻ったことがある)


カウンターで搭乗手続きをして、手荷物検査を受けて、出発ロビーで待つ。
軽食コーナーみたいなところで天ぷらうどんを食べる。
同じ便に乗ってくるはずなのに僕以外誰もいない。
基本的に時間にルーズな人たちばかりなので直前になって来るのだろうと思う。
実際そうだった。先輩たちも後輩たちもそれぞれ待ち合わせていたようだ。
出発15分前になって搭乗の時間になってもロビーにいたのは僕だけ。
全くもって頼りない集団だ。


先輩の一人に会う。「やあやあどうもどうも」と挨拶を交わす。
先輩はきちんと黒の礼服を着ている。
「しまった。やはり礼服か」と心の中、そっとダメージを受ける。
今回何を着ていくべきかかなり迷った。
2次会だけなら礼服のわけないが、今回は披露宴に結婚式もある。
ネットで調べる。親戚ではなくて友人の披露宴・結婚式ならば
最近は礼服でなくても失礼に当たらないということが書いてある。
社会人になったばかりの頃は披露宴に黒の礼服に白のネクタイを着ていったものなんだけど
僕だけだったりしたので「あれ?」と思ってその後着なくなった。普通、それでいい。
でも、今回は実は新郎・新婦とも地元の名家の出だったりする。
親戚一同、友人一同、全員びっちりと黒の礼服だったりするのではないか?
社会の落伍者スレスレの僕ら映画サークル仲間だけが
なんかだらしない格好をしているってことになったらさすがに恥ずかしいのではないか?
僕らが恥ずかしいのはいいとしてもサイノウさんが後にあれこれ言わるのはなんだよな。
・・・なんて1人悶々と悩んだりしていた。
結局礼服は着ていかない。黒っぽいダークスーツに白のワイシャツ、明るい色のネクタイ。
念のため白のネクタイも持っていく。
最初次の日用にジーパンやセーターを持っていくつもりでいたんだけど、
雪が降ってるとなるとスニーカーじゃなくてブーツの方がいいよな、ということに思い当たる。
だったら重すぎる・・・。とにかく荷物を軽くしたかった僕は次の日もスーツで通すことにする。
ネクタイとワイシャツを変えて。
でもそうすると礼服はいくらなんでもおかしい。
こんなふうにあれこれ悩んだ末に着ていくものを選んで
1度は先輩の礼服にショックを受けたものの
その後会った映画サークルの連中は誰一人として礼服を着てなくて、
主賓だった大学のノザキ先生も礼服じゃなかったので「ま、いいか」と思ってしまう。
Yシャツの色が白ですらない。
たぶん誰も何着ていくか1秒たりとも悩んでなさそうだった・・・。


そんなこんなで飛行機が出発。
天候の都合上、小松空港に着陸するかもしれないし東京に引き返すかもしれないと
スチュワーデスが機内放送で言う。
飛んでもそれだけでは安心できず。またさらに難関が待ち受ける。
でも僕は「飛んだ」「とりあえず飛び立った」という安堵感に満たされて眠くなる。
50分のフライトの間、眠って過ごす。