機内食を食べてます(ジュンコのカメラ


シカゴ行きの機内。日本人の姿は少ない。アメリカ人の方が多いだろう。
アジア系は中国や韓国の人たちと思われる人たちも多い。


若くてきれいなスチュワーデスが乗ってることはなく、40代のおばさんばかりが目に付く。
離陸前の空調の効いていない機内で「Safety Card」と言うのか、
緊急時の避難方法をガイダンスするための冊子をうちわ代わりにして扇ぐ。


滑走路に出てさあ離陸かと思いきや、機長からのアナウンスがあって引き返すことになる。
エンジントラブルがあったようだ。整備のためドックに戻る。
実際に離陸できたのは30分後か。3人で拍手する。
「飛び立ったぞ!」「アメリカだ!!」


航空機が好きで、羽田空港近くの城南島海浜公園によく飛行機を見に行ったというタクは
ユナイテッドの機体は尾翼があーでこーでとこと細かく解説してくれる。
主翼の端に垂直の小さな翼を立てることで燃費がこれだけ向上して、などなど。
ちょうど主翼の付け根の座席に座ることができたこともあって、かぶりつきで眺める。
「離陸の瞬間、フラップがこんなふうに動いて」と目を輝かせる。
(到着間際に、タクに主翼の写真を撮ってもらった)


機内放送が始まる。
これがなんかうまくいかなかったようで、予定してたのとは別のチャンネルになる。
都市の中で行われるカーレースものっぽい番組で「Tokyo Drift」という回だったのが
(どこかのビルの地下駐車場でスタートし、レースクイーンたちが色めき立っていた)
あえなくブチッと切られる。
中国語の字幕つきで映画となる。何の映画だったかは忘れたが、コメディだった。


出入国カードと税関申告書が配られて、記入する。
税関申告書どうする?と相談する。
素直に「食べ物あり」のところにチェックを入れる。
だけど、「肉あり」のところにはチェックを入れない。
僕ら3人とも、ぱっと見で肉っぽいものないしなーということで。
(食品そのものはOKなものが多いけど、肉は全般的にNG)


機内食の時間。3人でビールを頼み、めでたく第1回目の乾杯。
キリンの一番搾りだと思っていたら、
よく見たら「KIRIN ICHIBAN」というアメリカ向けの製品だった。
機内食はメインは「チキン or ビーフ」ってことで
パスタ、ニンジン、ブロッコリーを添えたビーフ
別の皿には焼き鮭、枝豆、パイナップルという不思議な組み合わせ、
レモンクリームのケーキ、パン。
日本で作られたものなのだろうか?だけどアメリカ人向けに?
鮭にご飯がないのは非常に不自然・・・


機内食前後に飲み物のサービスが3回あって、僕は3回ともビール。
酔っ払って眠った方がいいだろうと。
食後のコーヒーを飲んだ後、本を読んだり、眠ったりを繰り返す。
疲れてはいないが、なんとなく眠かったり眠くなかったりといったような状態。
タクは GAME BOY をやりながらいつのまにか眠っていた。
日本を夕方に発って、東へ東へと進んでいくのだから、外はすぐにも真夜中になる。
しばらくの間、真夜中が続く。


ふと見るとスクリーンは映画が終わって、
目的地までの距離であるとかのインフォメーションの画面になった。
(この画面ってどの国のどの航空会社の飛行機に乗っても共通で出てきますよね。
 どこで作ってるのだろう?どこの会社が引き受けたシステムなのだろう。なにげに気になる)
外の気温は−51℃で、「バナナで釘が打てるんだなあ」
なんてことを思ったことをなぜか覚えている。


その後どれぐらいの時間が経過しただろうか。
夜食の時間になる。ENJOYと書かれた青い箱(ランチボックス?)が配られる。
中にはバナナとレモンクッキーと小さな「きつねらあーめん」のカップ
間違いではなく、「らあーめん」なぜこのような表記?
しかもうどんじゃなくて?
パーサーがお湯を注ぎに来る。4分待つ。
食べてみたら本当にラーメンだった。キツネ入りの。
超違和感。なんだかずれてる。コンセプトは惜しいんだけどね。
味は、・・・そんなおいしいものでもない。薄味。というか大味というか。
カップを見ると横に「TOYO SUISAN」と書かれている。
ありえない!東洋水産って言ったら「赤いきつね」でしょ?
なぜあれをそのまま提供しない!?
なぜわざわざ質を落とす!?


食い終わってまたしばらくして、うとうとした後にモニターを見ると
アラスカを越えてカナダ北部の太平洋岸上空を飛んでいた。
Prince Rupert と Queen Charlotte Sound と表示されている。初めて見る地名。
Queen Charlotte Sound ってそういう名前のパンク系のバンドがどこかにいそうだ。


何度かトイレに行く。乗客に配られた白い手拭が狭い通路の上に落ちていた。
おばさんスチュワーデスは右足で器用に座席の間に押し込む。何事もなかったかのように。


映画は「ボーン・スプレマシー」にその後、「トロイ」?
ぼけーっと眺める。


眠る。起きると、朝の到着前の機内食の時間。
ビールはさすがに飲めず、牛乳をもらう。
オムレツ(or パスタ)、ハッシュドポテト、細長いつくねのようなもの、
オレンジジュース、果物(メロンなど)、パン。


約12時間のフライトがつつがなく終わり、シカゴのオヘア国際空港に到着する。
機長最後のフライトだったようで、
記念のセレモニーとして放水車が集まって機体にホースが向けられる。窓という窓が水浸し。
出口には機長が立っていて、乗客たちと握手していた。
(僕はしなかったけど、ジュンコは握手してもらってた)
50代ぐらいのアメリカ人の機長はその白い制服にみんなで寄せ書きがなされていた。
Good Luck ! と書かれたり、手書きのハートのマークが添えてあったり。
なんかそういう1人の人間の人生の節目の瞬間に立ち会えたことを不思議に思う。
世界の反対側の航空会社でパイロットとして勤務してきた男性との接点なんて、そうそうない。
どういう人生だったのだろう?とわずかばかり思いを馳せる。