オハイオ隊、遠征(その8)5/4シカゴ到着

シカゴ、オヘア国際空港のシャトルバス


空港の通路を歩いていく。入国審査までとてつもない距離を歩く。
オヘア国際空港はユナイテッド航空ハブ空港であって、
地球の歩き方」によれば「世界一忙しい空港」と称されているという。
通路は無味乾燥なものではなくて、どことなく温かい。無骨で無口な温かさ。
その後、街を歩いていみて改めて感じたけど、これがシカゴという街を貫くトーンなのだと思う。
歩いていて、あちこちにシカゴ名物を紹介する大きなプレートを目にする。
シカゴ・ブルースであるとか摩天楼とか。
そういう一角を過ぎると今度はステンドグラスで飾られた通路へ。
中世の教会っぽい簡素な模様のだけではなく、様々な職人が様々に作ったものを持ち寄ったようで、
中にはマイケル・ジョーダンをかたどったステンドグラスもあった。
歩き疲れた人のためのなのか、ベンチが一定の間隔で置かれている。
このベンチも地元のアーティストが装飾したのか、カラフルだった。


入国審査。
列に並んでしばらく待つ。
中国から来たと思われる全身ピンクのジャージのおばさんが勝手が分からずまごまごしている。
ときどき係員が見かねて話しかけて説明するんだけど、上の空で明らかに聞いていない。
僕らの番が終わってもおばさんは相変わらずブースの前で右往左往していた。
中国の人がいたら助けてあげればいいのに、と思った。
飛行機の中でもこのおばさんは1人右往左往していて、
席の離れた旦那のところへ足しげく通う。空の旅が不安なのか。
ビジネスクラスの方に入ろうとして
スチュワーデスに「ノーノー」と断られたりしたことが何度かあった。
あのおばさんはその後どうなっただろうか?
無事にシカゴで過ごせただろうか?
その後出国できただろうか?


タクが「天井すげーよ」と言って指差す。
見ると波打っている。灰色の強化プラスチック?で作られた壁面が規則正しい曲線を描いている。
そしてその開いている箇所から様々な配管が覗いていた。
それを見てタクは「質実剛健だなぁ」と感想を述べる。


僕のときの入国審査で聞かれたのは入国の目的(観光かどうか?)と滞在日数だけ。
なのに係員の女性が凄んで詰問してくるのでこちらも答えるのがたどたどしくなる。
税関申告書の方のシートを見せたとき、何を持っているかと聞かれた。
とっさに僕は「SUSHI」と答える。
「What Kind ? EBI ?」
「Yes. Kani, too」
「Ok」
すっとこどっこいなやり取りを交わす。
右の人差し指、左の人差し指、顔の写真を撮られて、ようやく解放される。


Baggage Claim でスーツケースを受け取って、税関へ。
「さあ勝負だ」「開けて1つ1つ説明しなきゃいけないんだろうな」と
心の中でドキドキしながら進んでいく。
が、税関申告書を渡したらあっさり通過できてしまった。拍子抜け。
ジュンコは持ってきた食品のリストとその英訳まで用意したというのに。
こんなことなら空港で見かけたアジの開きやほっけ、
日本のスーパーで売ってるラーメンやカレールーも持ちこめたなあ。
思いっきり肉がパッケージに写っている丸美屋の麻婆豆腐の素も。
3人でブーブー言う。
でもこれもいくつもの便が到着して立て込んでる時間帯だったからか。
他の時間、他の空港ならばきちんとチェックされたかもしれない。


ここまで来て、「遂にアメリカだ!!」という気分になる。
そのまま歩いていると出口へ。
外国人用の乗り換え窓口みたいな部屋があって、呼び止められる。
僕らがスーツケースにつけていたタグを見て係員のにこやかなおじさんが
シンシナティまでか。荷物をここで預けるように」と指示をする。
言われるがまま、スーツケースを預ける。
「ターミナル No.1に進みなさい。上に上がるとシャトルが走っている」


身軽になった僕らは空港内を歩く。
そのときはターミナル5にいて、ターミナル1にてシンシナティ行きに乗り換え。
15時ごろ。出発は21時。6時間もある。
さて、どうしよう?
とりあえずターミナル1の場所を確かめようとシャトルに乗ってみる。無料。
成田空港で走ってるようなああいうシャトルというかモノレール。割と小さめ。
窓の向こうにオヘア国際空港の風景が広がる。とてつもなく大きい。
横長のターミナルの建物、飛行機が点在する滑走路、その外側を走るハイウェイ。
ロスの空港も大きかったが、こちらも負けていない。
「すげーなぁアメリカ」と呟く。


ターミナル1で下りる。
「We're Glad You're Here !」という市長の挨拶が書かれた垂れ幕でお出迎え。


チェックインのカウンターが横長にどこまでも連なる。
ターミナル1は主にユナイテッドの乗り降りのためのもののようだ。
他に見かけたのはルフトハンザぐらいか。
「Ted is happy to see you」といったような
「Ted」の登場するキャッチフレーズをあちこちで見かける。
でも Ted って誰なんだろう?


シンシナティ行きの便を見つけて、ひとまず安心する。
「中、入っちゃう?」とジュンコが言う。「でも、あと6時間もあるよね」
僕としてはせっかくだから外に出てシカゴの街並みを見てみたい。
とはいえどこの大きな空港もそうだけど、
シカゴの街中に空港があるわけではないので
中心部まで行くには何らかの交通手段を利用しなくてはならない。
見ると、バスターミナルや地下鉄の掲示が。
「とりあえず歩いて行ってみようよ」と僕は言う。
タクは気が進まないみたいだったけど、時間もあるしってことで3人揃って歩き出す。


地下通路を進む。
殺風景な何もない通路を抜けると、
その先では長髪長身のストリート・ミュージシャンがギターを弾きながら
ビートルズの「While My Guitar Gently Weeps」を歌っていた。
地下鉄の駅までの通路には、大きな壁画が2つ飾られていた。
1つは地球上のあらゆる地域の原始的な生活について、
もう1つは現代のシカゴでの生活について、
文学で言うところのマジック・リアリズム的というか、
それぞれシュールで大胆な筆致で描かれていた。


5分ぐらいで地下鉄の駅に到着。
タクが記念にチケットを1枚買う。
路線図を見る。いくつかの路線があって入り組んではいるものの、
この駅を始発とする地下鉄(ブルーラインと呼ばれる)に乗っていけば
1本でダウンタウンまで行けるようだ。
15駅ぐらいあって、「地球の歩き方」を見ると45分かかる。
割と遠い。それでも俄然行きたくなる。
タクがやはり「えー・・・怖いよ」と渋るんだけど、
僕が「大丈夫大丈夫」と説得して、無理やり乗車決定。
タクは「何駅か行ってそこで降りてお茶を飲んで帰ってくるんでどうか、
その途中で危なそうに感じたらすぐに引き返す」という提案をして、
僕は口では「それでいいよ」と了承するものの、腹の中ではダウンタウンまで行く気満々。