久々の青森帰省② シャガール展

青森県立美術館


8時ごろ目を覚ます。母は台所で朝ご飯を作っている。
朝ともなると寒い。薄手の肌掛け布団一枚だったので体が冷えたようだ。喉が痛い。
朝食。五穀米、味噌汁、焼いた鮭、目玉焼き、トマトなど。そして、・・・
これ体にいいから飲みなさいと緑色でドロドロのジュースをジョッキいっぱいに。
レシピをちらっと見たらセロリ、キウイなどと書かれていた。
目をつぶって、心を空っぽにして、喉の奥に流し込んでいく。
普通にまずかった。


家中に掃除機をかけて、着替えて外出。バスに乗って青森市中心部へ。
いつも行く床屋に顔を出して髪を切ってもらうつもりが、
母曰く「昨日言い忘れたけど、今日たぶん休みよ」
(行ってみたらほんとに休み。だったら昨日行っとけば良かった・・・)


目的はもう1つあって、13日に開館したばかりの県立美術館にて
柿落としの企画展「シャガール 「アレコ」とアメリカ亡命時代」を見る。
美術館は駅から割と近くなんて便利な場所にはなく、
車じゃなきゃ行けないような場所。
三内丸山遺跡の近くなので観光地といえば観光地なんだけど。
市外・県外から訪れる人にとっては不便ではないだろうか・・・
青森駅前からJRのシャトルバスが出ていて、
行ってみるとボランティアのスタッフが立っていてバス乗り場へと誘導していた。


発車の15分前、バスに乗り込んだら僕1人だけ。
「ほんとに混んでるんだろうか?」と不安に思う。
三日目にして閑古鳥が鳴いてないか・・・
みな5分前になって続々と乗り込んでくる。時刻表を調べてんだろうな。
僕はめんどくさくて調べようとしなかった・・・
(母は調べてから行けと主張し、いいじゃんそんなのと僕は答えていた)
バスも7割は埋まっただろうか?
11時になって出発。
古川の、高校時代通学路として利用していた一帯をバスが走る。
懐かしい。とても懐かしい。


15分ほどで到着。
県の運動公園の中にある。これまた懐かしい。
中学校のとき、年に一度市内の中学校が集まって
各運動部が試合をするっていうイベントがあった。
そういうのでここにはよく来た。
ここか青森市の反対側、合浦公園の市営の運動公園。
夏の暑い時期に上下トレパンを着て、バスに乗って。
帰りは油川まで、何キロあるのだろう?10キロ?もっと?
長い距離を歩いて帰ったもんだ。バス代を浮かすために。


美術館は駐車場もそこそこ埋まり、多くの人が歩いていた。
建物の色は白。2階建てだっただろうか?平べったい。
建物自体が現代アートな感じ。
http://www.aomori-museum.jp/ja/
HPを見ると、美術館としての機能だけでなく、
コンサートや演劇を行うためのホールもあるようだ。
シャガール展は↓
http://www.aomori-museum.jp/ja/exhibition/1/


雇ってるのは青森県なのか青森市なのか、大勢のスタッフがいて熱心に案内してくれる。
チケットカウンターにはきれいな若い女性もいて、津軽弁ではなく標準語を話す。
学芸員っていうのか、展示室にて座ってる女性たちも大勢いた。揃いの制服もいて。
青森市のどこにこれだけの数のアートに興味のある女性たちがいたのだろう?
不思議だ。県外から派遣で来てるのだろうか??単なるアルバイト??


シャガール展と常設展とを見る。1800円。
青森にしては「ちょっと高いなー」と思った。
(でも、見終わるとこれだけ集まってこの値段なら安いもんだ、と納得した)


まずはシャガール
エレベーターで地下に下りていく。
地下1階・2階を貫く巨大な吹き抜けのホールの壁四方に
シャガールの「アレコ」4点が掛けられている。
縦15m、横9m。とてつもなく大きい。圧倒される。
シャガール特有の生命力がむせかえるぐらいに渦巻いていて、見る者に迫り来る。
「アレコ」は第二次大戦中、
ナチス・ドイツの迫害を逃れるためにアメリカに亡命していた時代のベジャール
バレエ作品の舞台背景画として描いたもの。
ここ青森県美術館ではなんとその3点を所蔵しているのだそうだ。
(ありえない。青森県が海外の芸術にお金を出すとは・・・)
残る1点はアメリカの美術館から今回の企画展のために借り出している。
この4点が揃って並んでいるの光景ってすごいことなんだよな。
いや、ほんとこれはいいもの見た。
つうかちょうどいい時期にジャストで帰ってきたもんだ。
なお、このアレコ3点は常設展示として、
ここ「アレコホール」にて展覧会が終わっても見ることができるようだ。


でもなぜゆえに青森県シャガール
どういうつながりが?というかつながり全くなさそう。
県立美術館の責任者がそういう方面に強いのだろうか??
ま、なんにしてもいいことだよね。


展示はバレエ「アレコ」にまつわるあれこれ、背景画のスケッチや舞台衣装そのもの、
実際の公演の模様を収めた記録映像(これは大変貴重だ)、などなど。
シャガールの「天使の墜落」といった絵画や、
もう1つのバレエ「火の鳥」(ストラヴィンスキーのですね)のデザイン下絵など。
展示のテーマは「戦争」「アレコ」「ベラ/ヴァージニア」「魂の中の国」と4つに分かれている。
ベラとヴァージニアはシャガールの愛した2人の女性(ベラは妻)、
「魂の中の国」とは自由を求めてロシア→フランス→アメリカと移り住んだシャガール
「故国とは魂の中にある」と語った自作の詩に由来する。


絵画の合間合間に、シャガールが友人・知人に送った手紙と
その翻訳が飾られているのが興味深かった。


それにしてもえらく気合の入った展示だった。あっぱれ。
シャガールの好きな人ならこのためだけに
青森まで足を運んでみる価値はあるんじゃないかな。
シャガールの絵そのものというよりは、資料的価値って意味づけが多分にあるけど。
よくもこれだけのものが開催できたもんだ。
青森県としてもものすごく力をかけたのがよくわかる。伝わってくる。
県民は誇りにしていいと思う。


・・・のであるが、これ、最初だけで終わってしまって
あとが続かないってことにならないことを切に願う。
(そういうのって青森県の悪い癖のように僕は思ってるのだが・・・)
最初にこれだけお金かけて花火上げちゃったら、3年後・10年後は大変だな。
六本木ヒルズ森美術館柿落としの「ハピネス」のあとはどうしても地味に感じられるし。


ちなみに僕はシャガールってそんなに好きではない。
嫌いじゃないけど、なんつうか、価値は大いに認めるけど、
僕が世界一の富豪だとしても、たぶん購入しないというか・・・
そんな僕でも、アレコは「すごい」と思った。