Tomorrow, Remember Yesterday

80年代のイギリスに The Chameleons というグループが存在した。
そんなに知られてないけれど僕は好きだ。
2年前の小野島大監修の「UK New Wave Renaissance 2004」この再発シリーズにて
3枚目にして唯一のメジャー発売である「Strange Times」(86年)が
ラインナップに加えられていて、嬉しく思った。
国内盤が出たのは、もしかしたら初めてだったかもしれない。


どことなく陰っていて、地味。かつ、不器用な感じ。
独特な躍動感と浮遊感を演奏に漂わせたギターロック。
イメージで言うと、都会を見たことのない、ものすごく田舎な、
田園風景の広がる村で育った詩的で聡明な若者ってとこか。


とても好きな曲ってのが何曲かあって、その中の1つが「Nostargia」
サビの部分はこういうフレーズ。リフレインされる。
「Tomorrow I'll Remember Yesterday
 Tomorrow I Remember Yesterday
 Tomorrow , Remember Yesterday」


「Tomorrow , Remember Yesterday」
このフレーズが印象的で、いつも頭の片隅に引っかかっている。
「明日になったら、「昨日」のことを思い出すんだ」
「Today」「今日」と言い切ってしまえばいいものを、決してそんなふうには言わない。
前向きなのか、後ろ向きなのか。
どっちつかずと言えばどっちつかずなんだけど、
なんつうか「今日」「今、この瞬間」というものに対する一風変わった距離感がいい。
そうなんだよなあ。
どんな瞬間も過ぎてしまえば全て過去に成り果てて、ノスタルジアの対象となってしまう。
喜びに満ち溢れていようと、悲しみに満ち溢れていようと。


今、この瞬間を見据えて、向き合って、自らの心と体で精一杯受け止めることの価値。
若さゆえの特権。
そういう時代がいつのまにか過ぎ去って、年を取って、大人になっていく。
何かが麻痺すること。その奇妙な痛み。


そして、今はまだ自分は若いのに、
いつか自分もまたそうなってしまうのだろうという考えに捕われる、
振り払うことができなくなる。
例えば徹夜した後の夜明け。友人たちと海辺に出かけて、砂浜に立って。
緩やかな、落ちていって溶けてゆくような時間。


僕はそういう情景を思い浮かべる。
たった1曲の中に、それだけのものを僕は見出す。
演奏した本人たちはそこまでの思いはなかったのだろうけど。
でも、そういう雰囲気を感じ取らせるだけの何かが、この曲にはある。

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カルトバンドにはありがちなように、
オリジナルのアルバムの枚数を軽く通り越して
見知らぬレーベルから出たライブアルバムがたくさん出ている。
僕はそのほとんどを学生時代に買い集めた。
今も新しいのを見かけるとコレクションに加える。
先日、珍しいことにライブ DVD の日本盤が出た。
買わなきゃなーと思って、まだ買ってない。
そろそろ見たくなってきた。