顔に出る

もうだいぶ昔のことであるが、ある人と話しててこういうことを聞いた。
「人は三十を過ぎたら、その人となりが顔にはっきりと現われる」
これは真実だと思う。


三十を過ぎた今、僕はどんな顔をしているだろうか?
疲れきっているだろうか?
高校の頃に言われたように、
「表情が無くて何考えてるか分からない」ままだろうか?
すぐ悲観的になったり、無関心を装う。
そういうのが顔に張り付いてたりしないだろうか・・・


三十で顔が固まりだして、四十、五十とその顔つきが深くなっていく。
仮面のような素顔はもう二度と引き剥がすことができない。
真夜中の地下鉄に乗っていて
「ああ、この人はつまらない人生を送ってきたんだろうな」
「いいことまるでなくて、踏んだり蹴ったりだったんだろうな」
とはっきりわかる人がいる。
その逆に、街を歩いていて
「ああ、この人は充実した毎日だったんだろうな」
という輝かんばかりの顔つきの人もいる。


多くの人は人生というものに追いつかれて、そいつが重くのしかかってきて、
ほんの少しずつ負債を支払ってるかのような顔をしているように見える。
そしてこの僕も、そういう顔つきになりつつあるように思う。

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僕は昔よりも笑うようになっただろうか?


僕が一年間に笑う量は、たぶん十代からずっと変わってないのではないだろうか。
どこかで人前で笑っていたら、その分部屋の中で一人無表情に過ごしている。
そのバランスをどこまでも保とうとする。
それは二十代の頃から変わらない。


僕は子供の頃、笑うことをためらっていたので
ぎこちない笑い方のまま大人になってしまった。
鏡の前で笑う練習の一つでもしておけばよかった。


だけど昔よりは屈託無く笑えるようになったと思う。
最近になってようやく、愛想笑いもできるようになった。


仕事中、何をするにも
「表情に出しちゃいかん、あるとしたら笑うだけ」と思ってる僕は
間違ってるのだろうか?それとも正しいのだろうか?