家の近くのコンビニが昨月末、閉店した。
その何日か前から棚から商店が消えていって、なんかちょっとおかしいなと思うようになった。
あまりの物のなさっぷりに、冷戦主義時代のソ連の村の売店みたいじゃないかと。
あくまで、イメージとしてですが。
毎晩会社の帰りに覗いてみた。
雑誌や文房具といった類のものが最後まで残っていた。
弁当や惣菜や菓子パンの類はある時点から補充されなくなった。
棚に1コだけおにぎりが売れ残っていたりした。
販売期限が切れたら、あのおにぎりもきっと廃棄処分されたのだろう。
こんな状況の店では入る人も少なく、客はいなかった。
何も変わらず立ち読みしてる人がいるとかさ、そんなことはない。
がらんとした店内はいつも通り照明が眩しいくらいに明るいんだけど、
生活感というか店の生命とでも呼ぶべきものが一切消えてなくなっていた。
乾いた、乾ききった、死の雰囲気。店は死につつあった。
いつもの店長はいなかった。
・・・夜逃げしたんだろうか。
それとも店の整理ってことで最後の何日かは社員が店を任されるのだろうか。
とにかく、背広を着たサラリーマン風の社員がコンビニのエプロンをしてレジに立っていた。
最終日の前の晩、僕はティッシュの箱を買った。
他に客のいない店の中で「いらっしゃいませ」と元気よく挨拶され、
「ありがとうございます」と笑顔で釣銭を渡された。
その声が空しく、寒々しく店内に響いた。
今時の若者ばかりで、やる気なさそうだったもんなあ。
そんなことを思い出す。
金髪の高校生ぐらいの女の子が
カウンターの壁にもたれてぼさっと突っ立ってて爪を眺めているような。
真夜中の学生っぽい店員はずっとカウンターの奥の事務所の中にいて、
レジでこっちが声を掛けないと出てこなかった。
店長がレジに立っているときだけ、ちゃんとやるっていうような。
棚に並んでいる商品もどことなく雑然としていて。
客が手に取って戻した位置がずれててもそのままっていうか。
ああ、だから、こういう店ってつぶれるのか・・・
そういえば、店独自の工夫ってものもなかったよなあ。
中堅チェーンの酒屋がコンビニになったようなとこだと、
独自に商品を仕入れたりしますよね。
(この店の斜向かいにあるコンビニが正にそうで、儲かっていた)
そういうのがなかった。
マニュアル通りに仕入れて、マニュアル通りに売っていく。
その通りにやったつもりでいて、売り上げにならなくて、つぶれる。
残酷な話だけど、世の中そういうものなのだ。
ただ単に不況のせいではないはず。
コンビニには直営店と、フランチャイズがあって。
この店は明らかに後者。何百万かあればオーナーになれますって言う。
人は何を求めてコンビニの店長になるんだろうなあ。
忙しいばかりで稼ぎは少なそうなのに。
人生一発逆転の可能性もなさそう・・・
楽そうに見えたのかなあ。
とりあえず僕はこの店がなくなっても今のところ全然困ってない。
他のコンビニがあちこちにあって。
結局、そこのところが最大の敗北要因なのだろう。
都内にコンビニ、多過ぎ。