その後、考えたこと。
僕に話を振ったイシス編集学校の師範の方は、
津軽弁の「音」と「抑揚」に興味を持ったそうだ。
語尾に「ぁ」をつけるとネイティブっぽい発音になるとか、そういうこと。
もう1つ、興味深いのは英語にフリガナが振ってあること。
なるほどと思った。英語のフリガナについては僕もモヤモヤとした面白さを感じていた。
こういう英語のリアルなカタカナ表記ってのは
「いいでば!英語塾」だけのものではなく、英語の教材のあちこちで見かけることができる。
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Vol.77はこんな感じ。
例題 :「懐中電灯の電池が切れたわ」
英語 :「The battery of the flashlight is dead」
ダ バッテウィー オブ ダ フラッシュライ(トゥ) イズ デッ(ドゥ)
津軽弁:「でんちのすみね」
^^ ^^ ←アクセントの位置
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こんなことを考えた。
ある言語を使って、ある言語を表すにはどうしたらいいか?
音と意味と。ここでは音について考える。
こんなふうに頑張って、英語のフレーズを聞いたとおりにカタカナで表記するのはありだろう。
しかし、どこまで行っても本物に取って代わることは無い。
近づければ近づけるほど、精巧になればなるほど
その言語の本質から遠ざかっていくようにすら思える。
言語を、言葉を、音を、「フェイク」するとここでは呼ぶ。
(「模倣」するでもいいんだけど、「フェイク」の方がニュアンスとして近い)
フェイクなので、フェイクを用いて考えているとたぶん、その言語は身につかない。
文章を頭の中で「ダ バッテウィー オブ ダ フラッシュライ(トゥ) イズ デッ(ドゥ)」
と組み立てているようでは、いつまでたってもこちら側のままだ。向こう側には渡れない。
しかし、これをそのまま見よう見まねで発音してみたら、たぶん通じる。
コミュニケーションは十分に達成できる。フェイクは、フェイクなりに。
それはつまるところ、ここで言うところのフェイクは
言葉を文字に置き換える過程で発生するごまかしに過ぎないからだ。
ちっともうまく伝えられなくてもどかしいけど、こういうところが面白い。
コミュニケーションの本質って物を考えるときに出てくる、エアポケットのようで。
言葉は生き物であって、しかも、形を持っていない。
言葉という器を使って思考するという様がそもそも形を持っていない。
それを、その瞬間を、切り取って形を与えるのだから、
文字にするということはどう頑張っても暫定的な近似値にしかならない。
思いを言葉にするときに、失われるもの。
言葉を文字にするときに、さらに失われるもの。
それをまったく別の言語で、音だけを聞き取ってなぞっていくというのだから。
オウムに言葉を覚えさせる、
というか一定の長さのフレーズを覚えさせるのと似ているかもしれない。
その町に住んで長いこと経てば自然とその土地の言葉を話すようになる。
語尾に「ぁ」をつけると津軽弁のネイティブっぽくなるというような小細工は不要となる。
パロディに過ぎなくなって、そういう努力を目にすると微笑ましくなる。
道化師の話すインチキな言葉に思えてくる。
ここでは道化師は明示的にフェイクしている。
だめだ。やはりまとまらない。
言語を元にした「文化」におけるフェイクの位置づけについて書きたかったんだけど。
フェイクなのに伝わるもの、フェイクがゆえに伝わるもの。