リトル・トウキョウ

先週からトウキョウも乾季に入った。
僕は相変わらずくたびれたアロハシャツを着ていた。
今日の朝、モノレールに乗った。
窓辺に立ったまま、向こう岸に生い茂る砂っぽい木々を眺める。
サルの群れが樹上でうごめいていた。
鳥たちがその上を旋回する。
僕はぬるくなったコーラを飲み干してその辺に捨てた。
ホームに降りて日陰を探した。
モノレールは真っ白な太陽の中へと消えていく。
僕はベンチに座り込んで、ゆっくりと目を閉じた。
音楽を聴く。
単調なリズムが、かすかな音で流れている。


昼になって、恋人と話をした。
途切れがちな映像の向こうで元気そうにしていた。
移動はまだ当分の間続くのだという。
写真を送ってもらう。届いて、現像する。
部屋の中に飾る。壁沿いの棚に置く。
揺らぎ続ける光と影。
僕はそこに言葉を書き込んだ。
空調を切ってベッドに横たわる。
眠れないまま床を見つめた。
小さな何か生きものがゆっくりと這い回っていた。
僕はそいつが羽を持っていることを想像する。
だけどこの部屋から、出ることはできない。


夜、街を歩いた。大勢の人々が歩いていた。
それぞれの方向に向かう。
笑ってるか無言か。歌うような声で囁く。
広場を埋め尽くす屋台の灯り。爛れた花の匂い。
追われる男がいて、銃で撃たれた。
川に出て、橋を渡った。他には誰もいない。
歩けば歩くほど、橋は長くなっていく。
旗を立てたバイクの群れが向かい側からやってくる。
僕は立ち止まって通り過ぎるのを待つ。
そうだ、僕は、展望台からトウキョウを見下ろしたいと思った。
橋を引き返す。まだ、間に合うだろうか。
銃で撃たれた男が、広場に吊るされていた。