終戦記念日

真夏の日差しの中を歩く。熱気を帯びた空気が物憂げに蠢いている。
白山通り。目の前を右翼の街宣車が通り過ぎる。大きな音で軍歌を流す。
物々しい字体で、何とか青年社とかそういう名前が書かれていた。


靖国通りに出て交差点に立つ。
日陰になるものがない。ハンカチを取り出して額の汗を拭う。
急いでいたのか若者が思いっきりぶつかってきて足早に通り過ぎる。
見ると既にかなり遠ざかっている。なんだったのか。


遠くから音が聞こえる。近づいてくる。
日蓮宗なのか南無妙法蓮華経と唱えながら団扇太鼓を叩く
黒と城の装束を身にまとい、小さな日笠をかぶった僧侶たちの小集団。
中には僕ぐらいの年の男性や女性も混じっている。
白い幕に達筆な字で「東日本大震災復興支援」とかかれたものを掲げていた。
彼らはどこから来て、どこへ行くのか。
パトカーに先導されて、途切れることなくお経を唱えて。


会社の行き返り、今さらながら Radwimps 『絶体絶命』を聴く。
言葉数が多く、この言葉のセンス、もう勝てないなと思う。
今時の、才能ある若者たち。
焦るように、性急なリズムで切ないメロディーを奏でながら
涼しい顔でサーッと駆け抜けていく。
何かが欠けている。何かが満たされている。
それが何なのかは誰にも分からない。
プラスとマイナスのヒリヒリした感触だけがある。


帰り道、雨が降り出す。ポツリポツリと。
降るというほどのこともない。涼しくはならない。
締め切った部屋の中に帰って来てエアコンをつける。
帰って来て、特にすることもない。
iPhoneの曲を入れ替える。


南無妙法蓮華経。南無妙法蓮華経
彼らはその後どうしたのか。
いや、どこかでその日の予定を終えて帰るべき場所に帰ったのだろう。
普通に、いつものように。汗を拭い、最後に
「今日も一日ありがとうございました」などと言い合って。
東日本大震災復興支援」と書かれた幕を畳んで大事に仕舞う。
明日はどうするのか。明後日はどうなるのか。
ただ、いろんなことを不思議に思う。
そして今年の夏はまだ、永遠のように続く。