物欲というもの

ブログのコメントでやりとりしたことですが。
最近常々思うに、具体的なものに対する物欲がかなり少なくなった。磨り減った。
10代・20代の頃のあれも欲しいこれも欲しいという欲求。
あれはいったいなんだったのか?


しかし欲望が一切無くなったわけではなく、
「旨いものを食べたい」「すごい音楽を聴きたい」という感じで。
どこの、なに、ではない。どんどん漠然としていく。
一番ほしいものを言い表すと抽象的に時間とか空間であったり。
それがなんなのかよくわからず、「あ、今だとiPhoneなんだな」という。


手に入らないものへの憧憬ばかりが募っていくのだろうか。
これまでの大したことない人生の積み重ねでは手が届かず、諦めざるを得ないもの。
それともただ単に肉よりも魚という生理的な嗜好の変化なのだろうか。
どちらにせよ、「それなりに大人になった」ということか。


ふと思うに、ものよりも体験なんだろうな。求めてるのは。
そのときその場でしか得られない体験。
海外を訪れること。誰かに会って酒を飲むこと。
買ったものよりも買うという刺激。プロセス。


たくさんものをもってると便利で気が利いてて、気分がいいということはあっても
それ自体が幸福かというとそうでもない。
なにしろ死ぬ間際に持っていける物などない。そこにあるのは記憶の断片だけ。
どこかで見た風景。思い出した匂い。誰かの言葉。
そんなことに少しずつ気付いていった。


かといって今もってるものを売ったり譲ったりするわけではなく。
これまで集めてきたものについては今のところ手放す気になれない。
それもまた物欲か。
そう考えると僕はまだまだだな。


全ての本とCDを収めた倉庫のような部屋と
何も無く最低限のソファーや椅子とテーブルだけがある部屋と
そんな空間に住めたらいい。
その何も無い部屋で過ごす時間があればいい。
それが今の僕の理想か。