中庭というもの

まあたぶんないと思うが、家を建てることがあったら、
そしてそれがかなり大きかったら、「中庭」を持ちたい。
スペイン語で「パティオ」英語だと「コート」


四方を壁に囲まれ、出入り口があって、
芝生の上にテーブルと椅子のひとつでも。
そこには初夏の鮮やかな日差しが降り注ぐ。
大きな木が一本しっかりと枝葉を伸ばしていて、木陰が生まれている。
そよ風が通る。レモネードを飲みつつ、本を読んで、いつのまにか眠っている。
静けさ。どこからか聞こえてくる喧騒。
中庭はいつも、白昼夢の世界と通じている。


庭、じゃないんですね。あくまで中庭。
そこにポッカリと穴が空いているというのが妙に気になる。
閉じられた、クローズドな空間。なのに屋根がなく、開放的。
外でもなく、内でもなく。
内と外の関係がふんわりと捩れている。


大学の校舎がそうだったように思う。
めったに足を踏み入れることなかったけど、
というか雑草だらけで風情はなかったけど、
廊下や教室に囲まれた中庭がいくつかあったような。
学校や美術館といった、居住空間ではないのに小さい部屋をいくつも持っていて
それを並べる必要がある、という建築物だと中庭をつくりやすい。
コの字型、ロの字型を組み合わせていく。


宮殿というものもそう。
スペインを訪れたとき、訪れた場所のことごとくがそうだったな。
石畳の広い空間。なんかね、中庭には不思議な力がありそうなんですよ。
宮殿ならば王の威厳を感じるというような。
建物に囲まれた広場に四方のレストランがテラス席を出しているとかね。


空間って、そういう一見ムダに見えるものこそ、
大きな意味をもつ。