三陸の旅 その19

(2/22(金))


08:00 目が覚める。ここ数日、全く夢を見ていない。
布団に入ってしばらく経つと朝になっている。
さっそく温泉に入りに行く。ひとりきり、露天風呂。
旅の1週間も今日で終わりか。やはりあっというまだったな。
先週の金曜は児島でジーパンを買ったのか。遠い昔のようだ。
土日の倉敷・尾道がそれだけ濃密だったんだろうなあ。


2年前の磐梯熱海温泉のことも思い出す。
震災直後、仕事関係の縁でたまたま行くことになって…、
今となってはあれが全ての始まりのように思う。
僕の人生に楔として打ち込まれた。
あのあとから編集学校で師範代を2期務めて今もずっと走り続けている。
そんな僕が今回陸前高田市を訪れるとなると
螺旋階段の一区切りを入れたくなって
やはり最後に磐梯熱海温泉に立ち寄りたくなった。
温泉に浸かっていると何も考えず、ただぼんやりとしている。
だけど心の奥底で何かが動いているのを感じる。


朝食。ジャコおろし、焼きジャケ、卵焼き、ホウレンソウと油揚げなど
旅館の朝食で出そうなものが全て出てきたという豪華なもの。
朝から湯豆腐で温泉のあとだと心も温まる。
ゴボウを梅で合えたものが珍しかった。
あと、茶碗蒸しの中に梅干。これは意外。でも、おいしい。


朝だけで3回入りに行って、10:30 チェックアウト。
マイクロバスで駅まで送り迎えしてくれる。
昨日の昼も駅まで迎えに来ていたらしいのだが、気がつかず。


10:57 磐越西線で郡山へ。
リュックサックをコインロッカーに預けると
みどりの窓口で新幹線の切符を買う。しばらくブラブラしようと 14:01発にする。


11:30 昼を食べに行く。Sさんに聞いていたおいしい店リストからのひとつ、
駅前のポークソテーの店「源氏」に行ってみる。
おじいさんが調理して、おばさんがご飯を出す、昭和の佇まいを残した店。
http://tabelog.com/fukushima/A0702/A070201/7001189/
メニューには「当店のポークは冷凍を通っていません」とあった。
タレは醤油、味噌、レモン塩、デミグラスソースなどから選べる。
僕はメニューの一番上にあったので「三味焼き」と名付けられた醤油味にしてみる。
1,400円。ヒレの方が高かったのでそちらにしようとしたら
「ロースの方がやすくてうまいよ。脂身が少ないし」と。
人がいいなあ。では、そっちにする。
肉は柔らかく脂身もサラサラしておいしかった。


時間が空いて、さてどうしようか。
昨日どこかで郡山市立美術館の名前を目にしたことを思い出し、
検索してみると「ぴあ」の表紙を手掛けたイラストレータ及川正通氏の原画展。
それほど興味ないし、歩いたらけっこうありそうだしと今回はパス。
常設展の「ホガースの風刺画」「イギリスのポップ・アート」には興味あったけど。


駅前の「ATI」という商業ビルにヨドバシカメラが入っている。
これも2年前には入ってなかったか。昔はファッション系だったように思う。
他にはABCマートタワレコが入っていて
この組み合わせは吉祥寺のヨドバシみたいだ。
6階のタワレコに入ってみると
風とロック」による「Live福島」の特集のコーナーがあった。


2年前、市役所の裏にあるラーメン屋を訪れるために歩いた道を
もう一度歩いてみた。
あの当時、地面が割れて小さな段差が生まれていた箇所があった。
何箇所か「立入禁止」のテープも見かけた。
もちろん今はそういうものは何も残されていなかった。
今日歩いて更地になっていた箇所はかつてのそういった場所だったのだろうか。
僕のような部外者がたかだか数時間訪れただけだと
何もかもが元通りになったように見える。
例えば「除染」が話題になるわけですが、それを感じさせるものも見当たらず。
公園になんらかのカウンターが立っていただけ。
駅前に戻っていくと大通りにはキャバクラの看板がデカデカと目立っていて、
普通に風俗系の店がそれとなく入り口を開けている。
それらの店を紹介する雑誌が置いてあって、僕は一部もらってきた。
ドレスで着飾った笑顔の風俗嬢を見ていると
この世界には3.11の地震などなかったかのように思えた。
しかしそんなわけはないのだ。


駅に戻ってスタバでラテを飲みながら新幹線の時間を待つ。
虐殺器官』を読み終える。
世間的に評価は高いけど僕自身はいまひとつ。
物語世界を楽しむというよりも
こういう書き方をしたらこう伝わるのかというところを
検証しながら読んでいった。
作者とは同い年になるのか。34歳で惜しくも亡くなっている。
僕はまだ生きている。作家ではない。


『解錠師』を読み始める。すこぶる面白くてやめられない。
ミステリーというよりも一風変わった青春小説か。
14:01 - 15:24 JR新幹線やまびこ56号。
東京に戻ってくる。荷物を置くと床屋に髪を切りに行く。
西友にて児島で買ったジーパンを掛けるハンガーと
旅先でもらったパンフレットやチケットの半券などを保存しておく
A4サイズの封筒を買う。倉敷・尾道と北上・陸前高田で別々に。
平日だったのでなんとはなしに春木屋にて冬限定の味噌ラーメンを食べる。
帰って来て封筒の中にあれこれとしまう。
旅はこれで終わり。


明日の感門之盟(卒業イベント)にて先週末のメンバーと再会する。
そういう余韻もまた、よし。