とある地方都市のコールセンター。
目立たない場所にひっそりとあって、大きな建物なのに窓がない閉鎖的な空間。
(実際、そういうものなんですね。僕の知る限り)
狭い社会となる。
そこで働く人たちは様々な属性の集団に分かれることになる。
・都会で働いて故郷に戻ってきた人たちと故郷を離れなかった人たち。
・末端のパートや契約社員と、上の階層の正社員たち。
・独身、既婚、バツイチ、バツニ。
・家を建ててローンを抱えている人と賃貸のままの人、
親が建ててくれた人、親と同居の人。
・理想を持って働く人、仕事と割り切っている人。
コールセンターなので日々電話がかかってくる。
向こうの顔は見えない。どんな感情を抱いているかも分からない。
主人公の「私」は30代前半の独身女性。
都会の生活に見切りをつけて実家に戻ってくる。
職を探したところツテがあってコールセンターで働くことになる。
そこにはその町をほとんど離れたことのない幼馴染がいて、
夫と友に働いていた。幼馴染はパートで、夫は正社員だった。
私は幼馴染の夫に言い寄られ、秘密裏に関係を持つ。
一度きり。そのあとは拒み続ける。
それは誰からともなく噂となり、皆に知られることとなる。
それでも表向きは何事もなかったかのように、働き続ける。
主人公と幼馴染の関係はよそよそしくなる。
夏祭りの季節になる。
私、幼馴染、その夫と小さな娘とがばったり会う。
娘は私に興味を持つ。しかし、幼馴染が引き離そうとする。
その後突然、幼馴染はコールセンターをやめた。
ある日私がとった電話が、なんだか様子がおかしい。
息遣いが。声の調子が。
幼馴染がかけてきたんじゃないかと思う。
問い合わせとその返答を装った会話を続ける。