京都一泊ツアー その4

またバスに乗って大宮五条へ。バスもまた混んでいる。
下りて東へ、烏丸五条までの途中にある堀川五条まで歩いて行く。
16時近く、日が傾きだしている。
次の目的地「書肆 砂の書」は増田屋ビルという小さな雑居ビルというかアパートにあって、
入居者が好き好きにアトリエにしているようだ。
各階4部屋ずつ。十畳あるかないかの広さ。
「書肆 砂の書」もそのひとつ。
事務所らしき小部屋と上から下までびっしりかつ無造作に本が詰められた部屋と。
http://www.sablelivre.com/
一度に僕ら全員は入れないとのことで2回に分かれて中に入る。
物静かな店主の方は電子音楽の演奏も行っているという。


神秘主義寄りの哲学・現代思想がメインか。
最も危険だった頃のロックのエッセンスを孕みつつ。
澁澤龍彦的な静謐なエロチシズムであるとか。
The Velvet Under Ground のギタリストだった
スターリング・モリソンは解散後ロックから離れ、
大学でフランス文学を教えてひっそりと亡くなる。
なぜかそのエピソードを思い出す。


ドキュメンタリー映画JANIS A FILM』のパンフレット(アップリンク)と
磯崎新浅田彰監修の『Anyway 方法の諸問題』を買う。
建築と哲学の問題領域をクロスさせた国際的なカンファレンスの年次記録。
NTT出版から出てて、他に『Any Place』『Any Time』『Anywhere』などがあった。
他にもロバート・クラムの分厚いアンソロジーであるとかブルーノ・シュルツ全集、
マヤコフスキー選集、ラカン関係が10冊、長尾みのる『バサラ人間』など。
気になったものがいくつかあったけど、買いだすときりがない。


別れて入ることになった次のグループと入れ替わった間、
下の階の器制作のアトリエへ。
展示するだけではなくここで実際に作っているのだという。
軽くて小さいからとおみやげに箸置きを買う。かもめとネズミをかたどったもの。


烏丸五条まで歩いていって、
宿の手配をお願いしていたひとりはチェックインで別行動。
残りの僕らは烏丸線に乗って四条駅へ。
四条河原まで歩いて行く。メインストリートだけあって人通りが多かった。
歩きながらスタインベックの『怒りの葡萄』の話をする。
どう読むのがいいのかと聞かれたので
Wikipediaレベルでもいいから時代背景を調べたり、
あとはジョン・フォードの映画化を観るといいんじゃないかと僕は言う。
ストーリーよりも時代の雰囲気。
男たちは何を名誉として何を恥としたか。そういったこと。
コールドウェルの『タバコ・ロード』を読み比べてもいいかもしれない。
映画化はやはりジョン・フォードが監督している。


桜の咲き誇る鴨川に出て、祇園方面の手前の
赤い提灯の掲げられた町家っぽい雰囲気の店が並ぶ通りへ。
18時、その中の一つ「水源亭」に入る。
http://suigentei.com/
軍鶏のすき焼きの店。2階の座敷に上がる。
前菜の湯葉は沖縄やウユニ湖、韓国、新潟など数十種類の塩の中から選んで食べる。
そして近江地鶏の刺し身。ムネ・モモ・白肝・砂ズリ・脾臓・トサカなど。
前半のは塩につけて、後半のはごま油につけて食べる。
脾臓もトサカも生まれて初めて食べた。
続けて淡海地鶏の天麩羅。ナスやサツマイモと一緒に。


メインのすき焼き。同様にムネ・モモ・皮・白肝・脾臓・砂ズリ・セセリ・サガリ
四角い鍋に店の人が焼いてくれるのだが、この日は大将と呼ばれた店主が自ら。
(キャンセル料のことで一悶着あったからかもしれない)
軍鶏は日本足で手が地面につかないことから戦の前に縁起担ぎとして食べた、
と由来を解説してくれる。
食材を追加できますとオマール海老に始まり、
貝だけで一箱、野菜だけで一箱、キノコだけで一箱と次から次に持ってくる。
何も頼まないのも悪いからと僕らは一人1,000円分キノコを追加した。
すき焼きはメレンゲにひたして食べる。さすがにこれはうまい。
最後残った鶏肉でつくった親子丼もいけた。
酒の類も相当あって、日本酒だけで100種類以上、
(やはり最後に大将自ら解説してくれた。暇な日だったのか…)
アイラ島のウィスキーだけで2ページあったか。
店は1周年を迎えたとのことで杉本彩千原ジュニアのお祝いが飾られていた。
サービス精神旺盛な大将が僕らの集合写真まで撮ってくれた。


雨が降り出していた。石畳が濡れそぼる。
帰宅組と宿泊組がここで別れる。
帰宅組のために店はタクシーを呼んでくれた。
僕らは歩いて宿へ。途中コンビニに寄って缶チューハイを買い足す。
六波羅蜜寺近くの「六波羅屋」という民宿。
古きよき昭和の民宿。最近だと外国人観光客の方が多いのだろうか。
部屋に布団が用意されていてテーブルにお茶用のポットが置いてあるだけ。
特にサービスというほどのものはない。
でもなんかこういうの懐かしくて旅の風情を感じる。
応対に出てきたのはおばあちゃん一人だった。
「この時期は清水寺のライトアップを皆見に行って、誰も門限を守ってくれやしない」
風呂が23時までだというので一人ずつさっさと入る。普通の家風呂。
出てきた缶チューハイとワインを飲みながらまったり過ごす。
NHKの番組だというのに、宇宙人による誘拐、アブダクションがテーマだった。
アブダクションは米国で起きて日本では聞かない。
逆に金縛りは日本で起きてアメリカでは起きない。
これは恐怖感の表れ方の違い、厳格の表れ方の違いではないかと。
僕もそう思った。
先月の伊香保温泉同様、携帯大喜利を皆で観て午前1時過ぎに眠る。