流しの引っ越し屋

この前の週末、引っ越し業者の営業の若者が見積もりに来て
ひとしきり検分して帰って行った。


世の中はこういう大手のところだけではなくて
家族でやっているような小さなところだってあるだろう、
いや、流しの引っ越し屋があってもいいんじゃないか、
ってことを考えた。こういう深夜ドラマ。


銀色の大型トラックで全国を移動している。
カモフラージュでコンテナには架空の花屋のマークなんかが描かれている。
リーダーは50ぐらいのロマンスグレー。かつてはトラック野郎だった。
日本全国の道という道を知り尽くしている。
助手席には紅一点。30後半のどこかセクシーな女性。いつも黒を着ている。
リーダーと愛人関係にあるらしいのだが、詳しいことはわからない。


寝台には二人。いつも寝てばっかりの太っちょ。起きてるときはずっと食べてる。
いざとなると「フンガー!」と怪力を発揮する。
もう一人はひょろひょろしてて眼鏡。いかにも弱々しい。
こちらもまたいざとなると頭の良さを発揮して奇想天外な工夫をして見せる。
そしてさらにもう一人。さすらいのバイカー。誰も本名を知らない。
普段は四人と行動を共にしないが、危機が迫るとどこからともなくやってくる。


やっぱ運ぶのは夜逃げ物件かねえ。
涙あり、笑いありの人情もの。毎回訳ありのゲストが一家で登場。
最後はリーダーが明け方の空の下、
「新しい人生、グッドラック!」と右手の親指を突き上げて終わる。


そんな話をしてみたら、
「…夜逃げ屋本舗??」と言われた。
しまった。見たことないけど、確かにそういうのあった。


引っ越し屋だからあかんのだな。
流しの宅急便ではどうだろう。
ヤマトや佐川が引き受けてくれないようなヤバ目の案件専門。


・東京から大阪まで高速を使わず3時間で届けないといけない。
・お忍びの外国人VIPをエスコートすることになった。
・預かってみたら時限爆弾だった。
・ごく普通の引っ越し荷物だと思っていたら少女が隠れていた。
・知らずに盗品を運ぶことになって敵対勢力から追われる。
・割れ物注意の美術品を思いっきり割ってしまった。
・目的地に着いてコンテナを開けたら荷物がごっそり消えていた。
・太っちょやメガネ君が辞めると言い出す。
・さすらいのライダーの意外な私生活が垣間見える出来事。
・ライバルの引っ越し屋が登場。


いろんなパターンが考えられそう。
もちろん夜逃げもあり。
どうかな。