熊本帰省 3日目

昨晩はその後、「マツコ会議」を見た。
全国に22ある「トキワ荘」のうち、千葉県のが出てくる。
男女それぞれのシェアハウスが向かい合って立っている。
29歳でデビューの兆しなしという男女が登場する。大丈夫だろうか。
その後ニュースを見て寝た。
青森は大雪。酸ヶ湯は今年初めて1mの積雪。


何度か目が覚めてトイレに駆け込む。
7時半起きで風呂に入りに行く。
男湯と女湯が入れ替えられている。
小さなこじんまりとした浴室になったけど、僕としてはこちらの方が好き。
逆に巨大な医岩風呂に入った義母曰く、「大きさが5倍違う」と。
後で仲居さんも言ってたけど、冬だとあの大きさは冷え冷えとして寒いんですね。
義父と共に蒸し風呂へ。こちらのは穴倉のようなところに入っていく。
立つことはできない。寝そべるだけ。
閉所恐怖症の人には地獄だけど、昔の人はこんなふうにして入っていたのだろうと。
じんわり汗を流した。
昨晩聞いていた通り、洗い場はお湯が出なかった。
壊れているのを修理するお金がないのか、それとも何かを上げ忘れたのか。
ウォシュレットも使えないところが多かったしなあ…
これを不便と切り捨てるか、鄙びた温泉宿の不便さこそ楽しむべきか。
元々長らくの湯治場であるし。


朝食。海苔、昆布の佃煮、きんぴらごぼう、焼き魚といった定番と
小さな鍋にアツアツの湯豆腐、蒸したての茹で卵。
茹で卵は殻を剥くと茶色く染まっていて味がある。


10児にチェックアウト。
最後にもう一度露天風呂に入る。
内風呂にも、と歩いていたら床に眼鏡が置かれていた。
もう一人入っている人のだろうか。
その人が脱衣所に出ようとしていたので声をかけたらまさにそうだった。
いいことをした、というよりも踏まなくてよかった、というか。


10時から「背戸屋めぐり」となっていた。
宿がガイド代を持ってくれる。そういう宿泊プランがあった。
近くの観光案内所へ。ガイドの方が待っていた。
http://tsuetate-onsen.com/about-tsuetate


足湯用のタオルを受け取って、蒸し器に卵を入れてスタート。
一回り一時間半歩いている間に茹で卵に味がつくという。
屋根だけの広場。近くの川原で1月14日にどんどや火祭りや
5月末には温泉街の人たちが代々受け継いできた大衆芝居が披露される。
どこに泊まりましたか? と聞かれて
「泉屋」と答えると、それはとてもよかったと。
泉源を自前で持っている数少ない温泉宿のひとつであるという。
他は共同で引いている。条例によりこれ以上泉源を増やすことはできない。
しかも流れているふたつの川が杖立温泉で合流するのだが、
「泉屋」側の方がお湯の質がいい。しっかりと硫黄の匂いがして。
川の反対側はすぐ近くとはいえ全然別のもの。
杖立温泉は泉源を増やさないことで、温泉の質を保っている。
それはつまり、むやみやたらと温泉宿を増やせない。
黒川温泉は今や全国でも有数の人気を誇るが、宿が増えすぎてしまって
お湯が行き届かず、源泉かけ流しではなく循環させているところもある。
杖立温泉は小さな町の至る所で蒸気の噴き出るパイプが空に向かって伸びている。
水蒸気だけなので真っ白く、モクモクと町を覆っている。
そう言えばそういうの、黒川温泉にはなかったような。


川原から上がって道路へ。
かつて杖立温泉は炭鉱で賑わった。
色街もできてロマンポルノを上映する映画館もあったし
スマートボールや射的の店もあった。今やなにもなくなった。
バイパスが向こうにできて交通の流れも変わった。
寂れかかって鄙びているが、しかしこれがいいのだと僕らは思う。
身の丈に合って温泉以外の余計なものがない。
賢い旅行客は昼間黒川温泉の日帰り入浴を利用して夜は杖立温泉に泊まる。
それが少しずつ増えている。
実際のところ杖立温泉は黒川温泉の半分ぐらいの金額で宿泊することができる。


杖立大神宮へ。
大雨後の落石で普段は立ち入り禁止となっているが、特別に中に入れてもらう。
133段あるという石段を上っていく。
竹林に囲まれ、樹齢何百年にもある大銀杏の木が出迎える。
本殿に出る。かつてはもっと上の方の崖の下にあったのが、
落石が危険だということで今の位置に移したのが20年前。
杖立温泉のある小国町は中国の都市と姉妹提携していて、
少林寺拳法太極拳、薬膳料理を普及させようとしている。
ここ本殿の前も今ならパワースポットと言うのか、気の流れが違うということで
太極拳の呼吸を皆で行う。


登ってきた石段とは別のルートで下っていく。
日田往還道を歩く。昔ながらの街道。本来は熊本市方面まで伸びているが、
今はダムができて遮られている。
途中白糸の滝へと登っていく道に出るが、この季節は冬枯れ。滝が潜っているという。
それ以前に近年は普段から水量が減っている。
パイプが張り巡らされ温泉宿へと下っていくため。
道路に戻るとこの辺りが大分県との県境。
一番大きな「ひぜんや」の館内にも県境がある。
(この「ひぜんや」の創業者の娘が井上陽水と結婚したとかで
 「リバーサイドホテル」とはここ杖立温泉のこと、という都市伝説がある)


「白水荘」に出る。「泉屋」が本家で「白水荘」が分家。
その証拠に「泉」の字をふたつに分けると「白」と「水」
ここで休憩。改装して入り口がきれいなレトロ風なカフェとなっている。
名物の杖立プリンが出てくる。温泉で蒸している。
トッピングやレシピは各温泉宿次第。
ここ白水荘ではあんこを乗せた「あんプリン」で
泉屋では「ほうじ茶プリン」だった。
なんでプリンかというと、かつてこの一体には「甘玉子」というお菓子があって、
玉子が高級だった時代に御馳走として食べていた。
茶わん蒸しに砂糖を入れたようなもの。これをリバイバルさせている。