御会式

昨晩、帰ってきて19時過ぎ。3時間の長編映画を観る。
ロマン・ポランスキー監督、ナスターシャ・キンスキー主演の『テス』
20時になるかならないかの頃、突然、
たくさんの鉦と太鼓の音が一斉に打ち鳴らされる音が聞こえてきた。
ドドドドデン、ドドドドデン
カンカンカカカカ、カンカンカカカカ
言葉には表せないような複雑なリズムだった。
少なくともこの音に合わせて踊るのは目的とされていないような。
民族音楽系のノイズミュージックマニアが喜びそうな。


DVDを止めて家の外に出て見ると
通りの向こうを山車が通り過ぎるところだった。
帆を提灯で取り囲んだ舟のような形をしていた。
その前を鉦や太鼓を打ち鳴らす人たちが練り歩いていた。
少し離れていたのでよく見えなかったが、お年寄りばかりだったのだろう。


「御会式」か。近所のあちこちに貼り紙がしてあった。
日蓮上人の命日に行われる万灯行列。
都内では池上本門寺が有名。
調べてみると近くの旭町のお寺さんによるものらしい。
境内にて縁日の行われている写真があった。


通り過ぎて家に戻る。DVDの続きを見る。
家から離れた北側の通りを西に歩いていたのが、
家の裏、一軒間に挟んだ通りに曲がって南に向かって進んでいく。
その賑やかな音が聞こえる。
いつのまにか笛や掛け声も加わっている。
音で包まれる、というか取り囲まれたようになる。
なんで君は部屋の中に閉じこもって無関係を決め込んでいるの? と。


誰がこの鉦や太鼓を鳴らしているのだろう?
僕の住んでいるところには町内会がない。
このお寺の檀家、ということになるのか。
今年引っ越してきて半年のよそ者はその後ろについていっていいものか。
ああいいですよとは言われそうだが、あくまでゲスト扱いのような。


しばらく裏の通りを遠ざかったり近づいたりしていた。
それが21時を過ぎたぐらいか、気が付いたら音が消えていた。
今度は静寂に取り囲まれるようになる。
僕はDVDの続きを見た。
見終えるといてもたってもいられなくなって、
着替えるとDVDをポストに返しに行った。