「立春に PUNK を聴く」補講その3

この辺りも紹介したかったのに、ちょっと今回は雰囲気が合わず…、
というのがアメリカのハードコアパンク以後。
ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムの骨と皮だけの編成。
速くてうるさくて重い。不愛想で神経質。
地下のライヴハウスでそれこそコアなファンのために演奏している。
80年代、インディー・レーベルのネットワークが広まり絡まり合う中で
バンド自身も西へ東へつながり合っていく。


多くのバンドは消え、いくつかのバンドは生き残って
マイペースな活動を続けたり、メジャーデビューして世界的に売れたり。
パンクがそれまでの余計なものをストイックに削ぎ落としていく
純化」の音楽であるとしたら
その在り様を頑なに貫こうとしたのがハードコア。
そのまっさらな地平に様々な音楽ジャンルを取り込んで
80年代後半以後のパンクは(先日も書きましたが)様々に分化していきます。
メロコア、エモ、パワーポップ…、
そしてヘヴィメタルやヒップホップに近づいていく。


Fugazi-Waiting room
https://www.youtube.com/watch?v=cMOAXm94VWo


Fugazi とはベトナム兵のスラングで「Fuckin' Up」のこと。
ワシントンDCを代表するハードコアパンクバンド Minor Threat が解散した後、
中心人物だったイアン・マッケイが結成。
これは最初期の音源。
アルバムを発表するごとに音響的な進化を迎えていった。
拳で叩き付けるようだった音が、刃で切り裂くような音へ。


アメリカ西海岸のポップパンクというか、バカパンク。
どこか品がないけど、それはあんちゃんらしい底抜けの明るさってことで。
「アハーン、アハーン」で一世を風靡した
Offspring「Pretty Fly」なんかの例もありましたが、
お薦めしたいのは Blink-182


blink-182 - What's My Age Again?
https://www.youtube.com/watch?v=K7l5ZeVVoCA


フルチンの3人組(もちろんメンバー)が街を走り回る。
何の迷いもない。
辛い時に見ると元気になる。


blink-182 - All The Small Things
https://www.youtube.com/watch?v=9Ht5RZpzPqw


こちらはさらにバカっぽくて空っぽなんだけど、
曲のキラキラさ加減がたまらない。


同じく西海岸の良心というか陽だまりというか。
ストリートに生まれ育って身に付いたタフさと優しさ。
地元の友人たちと繰り広げる真昼のBBQパーティーのような親密さ。
レゲエとヒップホップとパンクをミクスチャーしたのにオーガニックな音。
ヴォーカルのブラッドリーがメジャーデビュー直前にドラッグで亡くなり、
西海岸の伝説となる。


Sublime - What I Got
https://www.youtube.com/watch?v=0Uc3ZrmhDN4

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今回のテーマは POST PUNK ということになっていますが、
例えば New WaveAlternative とどう違うのか?
ぶっちゃけあんまり違いはなく、
PUNK に影響を受けた音楽は広くどれも POST PUNK と呼ばれ、
その中で派生したものとして
80年代UKのキーボード主体のオリジナリティー優先のロックが New Wave
90年代USのギター主体のへヴィメタやヒップホップとのミクスチャーロックが Alternative と呼ばれる。
そんなイメージが、強いて言うなら、あります。
Red Hot Chili Peppers や Jane's Addiction を New Wave とは言わないし、
The Cure や JAPAN を Alternative とは言わない、というような。
まあでもそんなカテゴライズ分けが重要なわけではないですが。


ここではいくつか UK New Wave を取り上げます。


The Cure - The Lovecats
https://www.youtube.com/watch?v=mcUza_wWCfA


The Cure は活動当初は PUNK 直系のモノトーンなギターロックだったのが、
暗く沈みこむような幽玄な音にはまっていた時期、
キーボードを前に出してカラフルな曲で人気になった時期、
バンドサウンドに戻ってスケールの大きな演奏を聞かせるようになった時期と様々に経て
今やスタジアムをいっぱいにする大御所。
異形のままでありながら、多くの人に受け入れられ、愛される存在となりました。


(PUNK から始まってどのような音楽的変遷を辿ったか追っていくというのも
 80年代の楽しみですね。US だと Husker Du であるとか、The Replacementsとか)


この曲は楠本まきのマンガ『KISSxxxx』の中でパーティーの場面で流れ、
大好きな曲だから踊ろうと。
当時聞いてみたかった、という人もいるんじゃないかと思います。


Teardrop Explodes Ouch Monkeys
https://www.youtube.com/watch?v=K1YC6x8qIk0


The Teardrop Explodes はリバプールのバンド。
The Beatles を生んだ港町だけあって独特なヒリヒリしたポップ感覚がありますね。
他には Echo & The Bunnymen であるとか。


フロントの Julian Cope は解散後、ポップ路線でヒットも出しますが、
90年代中頃から仙人化して孤高の存在へ。
元々の素質にあったサイケデリックな要素をどんどん高めていきました。


研究家肌であってストーンヘンジについて本を書いたり、
世界各地のアンダーグラウンドロックに詳しくなって
『ジャップ・ロック・サンプラー』や『クラウト・ロックサンプラー』を出したり。
前者は60年代末のGS以後、70年代のヘヴィなバッドトリップバンドを取り上げる。
フラワー・トラベリン・バンド裸のラリーズ、J.A.シーザーなど。


The Chameleons - The Fan And The Bellows
https://www.youtube.com/watch?v=SHYBC8qeh-I


The Chameleons は独特な詩的感受性をもったバンドでした。
全てが霧に覆われ、その向こうに無人の都市と草原が広がっているような。
オリジナルアルバムは3枚だけなのに、
ブートレッグまがいのライヴアルバムは無数に出ているというのがカルト人気の証。


パンクの疾走感を余すところなく体現した名曲。