先週のいつだったか。
駅に着いて買い物をして、すっかり日が暮れて、いつもの帰り道を歩いていた。
光が丘は背の高い団地がどこまでも続いている。
ローズガーデンのある交差点に差し掛かって信号は赤。
ふと見ると警官が二人、渡った向かい側にも。
パトカーがゆっくり目の前を横切って、青になる。
横断歩道を渡り終えてふと見ると公園の脇に消防車と救急車が。
しかしどこかで火事となった様子はなく、誰かが担架で運ばれていることもない。
サイレンの音は聞こえなかった。
四方を団地に囲まれた人気のない通りは静かなままだった。
通報されたので出動した。
しかしそれは誰かのいたずらだったのだろうか?
近くに住む中学生か高校生の。
ある朝、近くのコンビニの前を通りがかったら高校生と思われる男女三人が
しゃがみこんでハイテンションではしゃいでいた。
徹夜なのだろう。学校は行かないのだろうか。フリーターなのか。
何の関係もないけど、そのことを思い出した。
家に帰って片付けものをして、ひと段落した頃に検索してみる。
それらしきニュースはなかった。
今時、火事や人が倒れていたというぐらいではニュースにならないのかもしれない。
なったとしても他に大きなニュースがあったら消えてしまう。
検索するうちに、何年か前に光が丘の団地で
中学生を突き落とすという事件があったという書き込みを見かける。
団地の人たちがそれを何もなかったかのように隠したのだとか。
真相のほどはわからない。
マンモス団地ではこういう都市伝説がよくあるのかもしれない。
高層団地に囲まれてそのほとんどが真夜中、明かりを消している。
その無言の存在感を前にして、暗い想像力が広がっていく子どもたちはいるだろう。
子どもの頃に光ヶ丘団地に引っ越してきて
親元を離れるまでしばらく住んでいたという方の話を聞いた。
団地ができたばかりの頃は何百倍もの倍率だったのだとか。
その頃に住み始めて今も住んでいる人たちが大勢いる。
もはやかなりの年配だろう。
あと10年か20年かしたら団地の老朽化も進んで空家が増えているのかもしれない。
いや、そうならないためにか、外壁など補修している団地が多い。
いつもどこかしらですっぽりと灰色の囲いに覆われて工事がなされている。
調べてみると光が丘1丁目から7丁目までの世帯数は1万2千ほど。
そのうち1万世帯が団地に当たるだろうか。
団地のひとつひとつの部屋が、巨大な生き物の細胞に思えてくる。