本を出した出版社が倒産した その5

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□発言(17)
「詩集を出したばかりだった。出した出版社がつぶれたことを
 置いてもらった本屋に伝えに行ったところ、
 あなたの本は価値があるので本屋としては置きますよと言われた。


 この売り上げはどうなるのか?」


 ※一見いい話だな、と僕は思った。
  でも「価値がある」というのは碧天舎の出版物が本屋に買取らせる仕組みに
  なっていたことを柔らかく著者に伝えたものなのかもしれない。
  この場合通常、自由に返本できない。
  なので本屋としては売り切りたかったのかも、といううがった見方が可能である。


【回答】
「売り上げは取次の口座に入る」
 ※これが、貸借対照表の「取次売掛金」の箇所に還元されるのか。


 ※この話の前後に、印税は今後どのような形であれ支払われることはない
  という説明が代理弁護人よりあった。

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□発言(18)
「あんた、本出せたんだからいいじゃないか!


 契約してそれっきりの人が先だ!」

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ここで、被害者の会による訴訟の件が再度出てくる。


しかし代理弁護人より、以下説明がなされる。
・経営者側はこの状況ではとてもじゃないが、訴訟を受けられそうにない。
・破産財団を相手取って訴訟を起こすのは可能だが、
 破産財団自体に非があるわけではないので勝訴となる見込みはない。

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倉庫業者に連絡を取った人が戻ってくる。


□発言(19)
「一般的な相場として、定価の1割程度で在庫の引き出しは可能とのこと」

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□発言(20)
「問題がバラバラに話されているが、整理したい。
 倉庫に眠っている在庫があり、
 方や引継ぎ先の出版社の交渉がなされているという話がある。
 ここがスムーズに取りはかられるようにしたい。


 販売を引き継いでくれる出版社が現われたのに、
 在庫は全て中古市場(ゾッキ市場)に流れました、では元も子もない。


 きちんとした情報提供が今後なされるようにしたい」

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□発言(21)
「契約して出版費用を振り込んでいながら、出版されていない人は
 一体何人いるのか。社長は知らないのか」


【社長による回答】
「250人強になる。出版工程には様々な段階があるが、
 お金を預かっているのに何もしていない方については100人強となる」

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□発言(22)
「まずはその100人を救済すべきではないか」

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□発言(23)
「自分の本に関する個人情報を守りたい。
 デザインとか版組みであるとか、誰にどう頼んでどこまで進んでいるのか」


【回答】
「先ほども回答したが、ステータスを管理した表はビルの中のPCの中となる。
 PCにアクセスすべきかどうかは破産管財人が決める」

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□発言(24)
「4月20日に発売されることになっていた。
 製本所に確認したところ、製本そのものは済んでいるという。
 (本もそうだが)私にとっては原稿は『死んだ子の亡骸』のようなものだ。
 返してほしい。ビルに引き取りに行きたい」(場内拍手)


 ※本を指していたのか、原稿を指していたのかメモを読み返してみると不明。


【回答】
「社長は『現場』を知らないので、できない」

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□発言(25)
「だったら社長は元社員に頭を下げて、残務整理をするべきではないか」

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□発言(26)
「(判読不能)の責任はどうなるのか」


【回答】
「あなたの弁護士に相談してください。僕はあなたの弁護士ではない」

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□発言(27)
「夢と希望をこの本に託していた。この本を流通させてほしい。
 社長にはその責任があるのではないか。」


 ※この人かどうか定かではないが、
 「金が戻ってこないのはもうどうでもいい」という発言があった。
 同じようなニュアンスで話している人は多かった。

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□発言(28)
「破産ってことはどうせ金は戻ってこないんだろう?
 あんたたちは今回一回こっきり頭下げて『すみません、すみません』だけ言っといて
 終わったら『あーあ、終わった』とか言いながら茶でも飲むんだろう?」

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□発言(29)
「ここにいる人の全てが出版費用を一括で払ったわけではないと思っています。
 私は分割にしたのでクレジットの会社へのローンが残っています。
 出版社が破産したということは
 この支払いは今後しなくてもよいと考えていいですか」


【回答】
「それはクレジットの会社とあなたが直接交渉してください。
 基本的に支払いは発生します」

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□発言(30)
「どうせいい答えは求めてないよ。


 あんたたちは逃げてる!(場内拍手)


 私は夢や希望をあなたたちに託してきた。
 この本は25年間かけて書いてきたんだ。
 原稿や写真は返ってこないのか!?


 言い訳するな!


 私の人生のライブラリー10冊のうち1巻と3巻を預けたんだ。
 これを返してくれ。欠けたらどうにもならないんだよ。


 私のライフワークを奪われたんだ。
 社長の胸倉をつかんでやりたいよ。


 卑怯者!!


 説明会はこの1回限りか!?


 ※84歳男性。代理弁護人の「12時なので説明会は終わりにします」的発言を受けて、
  それまでの怒りを爆発させて声枯らして怒鳴り続けた。
  見てて辛かった。本当に辛かった。
  発言こそしなかったものの、こういうお年寄りばかりなのだ。


  閉会間際にはこのお年寄りの方は社長のところに詰め寄っていた。
  社長はひたすら頭を下げていた。

 

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□発言(31)
「引継ぎの出版社については、7月31日まで連絡はないのか?」


【回答】
「なんらか通知があるはず」


 ※これが、引継ぎ先の出版社が見つかった際にそこからなされるのか、
  破産管財人からなされるのかは不明。

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□発言(32)
「社長は著者に原稿を返してから、従業員を解雇すべきではなかったのか」

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□発言(33)
「この件はニュースでは扱われないのか?」


【回答】
「それはマスコミが決めることです」

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□発言(34)
「従業員がいないから原稿を返せないのなら、
 社長と取締役が管財人の補佐として手伝えばいいではないか。


 そういったことが決まったときの報告はどのようになされるのか?」


【回答】
「社長を補佐として役立てるよう、管財人には申し送りします」

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□発言(35)
「さきほど外でお世話になった社員の方に会った。話を聞いた。
 自分としては原稿の返却の件などお手伝いしたいのだが、
 命令により止められていると聞いた。これはどういうことなのか?」


【回答】
「そのような命令はこちらからは出していない」

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□発言(36)
「これまで様々なことが言われたけど、社長、あんた、
 言われたこと1つもメモしてないじゃないか!?
 これが終わったら、次、何をするつもりなんだ!?


 あなたたちの誠意が、何にも伝わってこない」

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この後、代理弁護人が閉会を告げる。


12時を過ぎて既に帰っている人も多く、
場内は立ったままあちこちで話し合っている人や
帰ろうとしている人たちでガヤガヤしていた。


強硬な姿勢を示していた人の何人かはロビーで集まって今後のことを話していた。