「優雅な生活が最高の復讐である」

最近読んだ中ではとても面白かった本。
新刊でもなんでもないけど。


素晴らしいです。
読む人の人生をささやかながらも豊かにしてくれる、と思う。
僕らの何気ない毎日の日々を、そっと照らし出してくれるようにすら感じられる。


http://www.amazon.co.jp/dp/4102144218


「優雅な生活が最高の復讐である」
何よりもタイトルがいいよね。
元はスペインの諺らしい。


スコット・フィッツジェラルド夜はやさし
その主人公のモデルとなった
ジェラルドとセーラのマーフィー夫妻が過ごした
1920年代のパリと南仏アンティーブの日々。


1920年代のパリと言えば20世紀でも比類のない芸術の時代。
夫妻の交友はパブロ・ピカソアーネスト・ヘミングウェイ
コール・ポーター(イェール大学で同窓だった)に始まり、
この時代のきらびやかな天才たちばかり。


セルゲイ・ディアギレフ、ナタリア・ゴンチャロワ、
ジョージ・バランシンドス・パソス
ガートルード・スタインジャン・コクトー
トリスタン・ツァラエリック・サティ
ルドルフ・ヴァレンティノ、フェルナン・レジェ・・・
書き写してるだけでため息が出る。


そして、スコットとゼルダフィッツジェラルド夫妻。
2人はマーフィー夫妻に憧れ、嫉妬し、そして・・・
って謎めかす必要はないか。
突如訪れる世界恐慌
華やかな日々は消え失せ、現実の世界と折り合いをつけていく。
マーフィー夫妻は静かな日々を送る一方で
フィッツジェラルド夫妻がその後どうなったか。
アメリカ文学に詳しい人ならば言うまでもないですね。


いや、この本は「その後」について書きたいのではない。
そんなのはただのエピローグだ。
やはり中心は20年代のマーフィー夫妻の
「作品」と呼べるほどの、「芸術」と呼べるほどの
優雅にして慎ましい、機知と優しさに満ち溢れた生活。
陳腐な言い方だけど、21世紀において我々文明人が忘れてしまった大切なものを
2人は身の回りの人々全てに分け隔てなく、惜しみなく分け与えて暮らしていた。
その居住まいの素晴らしさに
我々21世紀の凡人たちはただただため息をつくばかりである。


画家でもあったジェラルド・マーフィーの
現存する数少ない絵が最終章で写真と共に語られる。
向かい合ってみたくなった。
アメリカを旅したいという目的がまたしても増えたよ。




優雅な生活が最高の復讐である (新潮文庫)

優雅な生活が最高の復讐である (新潮文庫)