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□『O Brother, Where Art Thou?』
コーエン兄弟の『オー・ブラザー!』のサントラ。
コーエン兄弟が面白かったのもこの辺りまでかな。
ジョージ・クルーニーやジョン・タトゥーロによる脱獄モノ。
1930年代のアメリカ南部が舞台なので
音楽もカントリーやプリミティブなブルースとなる。
プロデューサーがT=ボーン・バーネットなので独特な音の広がりをしてて、
21世紀用にデジタル処理されたカントリーのよう。
曲の流れもムードもよくて、グラミー賞を獲得している。
エミルー・ハリス、アリソン・クラウス、ギリアン・ウェルチ、
コンテンポラリーなカントリーを代表する3人が
共演している曲が収録されているのが嬉しい。
ギリアン・ウェルチの『Soul Journey』というアルバムが好きで
iPhoneに入れて時々聞いてんだけど、新作がずっと出てない。
どうしてるのだろうと思う。
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□大友良英『幽閉者』
あの足立正生35年ぶりに撮った映画。
1971年パレスチナで撮った『赤軍−PFLP・世界戦争宣言』が最後。
日本赤軍に加わって、90年代後半レバノンで逮捕され刑務所へ。
日本に戻ってきて、創作活動を再開。
この『幽閉者』も同じく日本赤軍で活動していた岡本公三を主人公としている。
(1972年にテルアビブ空港乱射事件を起こしている)
出演が田口トモロオに、PANTAに秋山祐徳太子に四方田犬彦という
なんだそりゃ!・なメンツ。
音楽は Sachiko M にジム・オルークに飴屋法水が参加。これもすごい。
(ジム・オルークは青山真治の『ユリイカ』で流れていた、
同名タイトルのアルバムの曲がよいですね)
飴屋法水って人がとても気になる。
唐十郎の状況劇場にいたことぐらいしか知らない。
Einsturzende Neubauten と1980年代にコラボレーションしたというのを
どこかで読んだように思うが、詳しいことは思い出せない。
このサントラは大友良英によるものなので、ノイズとメロディを行き来する。
美しいギターの響きもあれば、大音量の無秩序なノイズもある。
もちろん、ここでのノイズは聞けるほうの。
(楽曲と呼ぶことができてパッケージされて販売されるノイズと
そうじゃないノイズとの違いについていつか書きたいと思う)
大友良英はその音楽性ゆえにサントラを手掛けることも多く、
いくつか出てるんだけど、
僕は『大友良英サウンドトラック Vol.0』というのも持っている。
これもいい。歌もの中心で聞きやすい。
岡林信康のカバー「私たちの望むものは」がとても美しい。
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□Chrome「Alien Soundtracks」
呪詛を撒き散らすヴォーカル。やる方が退屈しきったビート。
金属が腐蝕するかのようなギター。
ジャンクでガレージでサイケデリックで、雑。雑音の雑。
いかがわしい。アメリカ一、アングラな音。
”キング オブ ポルノ”ミッチェル・ブラザーズのサントラとして、
という触れ込みはあったものの実際には使用されず。門前払いか。
ジャケットが素晴らしいです。まさにアメリカのキチガイ。
大事なのはこの、テキトウなアイデアと中途半端な悪意ですよ。
(たぶん、マリリン・モンロー)
ということで、本作は厳密には架空のサントラということになる。
「架空のサントラ」を目指したコンセプト・アルバムって時々ありますよね。
1977年発表のこの作品が実はそういうののハシリなのかも。
僕が持ってるのは
同じく代表作『Half Machine Lip Moves』(1979)とのカップリング。
こちらも名盤。
しかし80年代以後、Chromeは疲れた労働者みたいな音になっていく。
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□John Lurie『Stranger Than Paradise and The Resurrection of Albert Ayler』
ジム・ジャームッシュ監督の初期の代表作
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』『ダウン・バイ・ロー』
共にジョン・ルーリーが主演で、音楽を担当している。
映画としてはオフ・ビート感覚のブラック・ユーモアで全編が成り立っている
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』が有名だけど、
トム・ウェイツとロベルト・ベニーニの3人組のやりとりが楽しい
ボソボソとぶっきらぼうなコメディ『ダウン・バイ・ロー』も捨て難い。
それにしても。
最初見たとき、なんだこのハイテンションなイタリア人は? 誰?
と思ったもんだけどそれが後に『ライフ・イズ・ビューティフル』で
全世界を泣かせることになる。
ロベルト・ベニーニはアカデミー主演男優賞まで獲得する。
いわゆるジョン・ルーリー節というか、
ヒョロロローロヒョーロ(ズンドコドコドコ)ってのは
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』では聞けず、こちらは弦楽四重奏。
まじめくさってるのが逆にシュールな。
なお、このCDは後半、『アルバート・アイラーの復活』という
ダンス・パフォーマンスの音楽となる。
『ダウン・バイ・ロー』の方がいつものやつで、
ギターにアート・リンゼイなど。
どちらもオランダのレーベル、クラムド・ディスクの
「Made To Measure」のシリーズから出ている。
このシリーズ、この手のストレンジな音楽が多い。
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□John Lurie『Fishing with John』
ついでにジョン・ルーリーをもう1枚。
最初にして最後の監督作品『フィッシング・ウィズ・ジョン』のサントラ。
1998年。ユーロスペースが昔の場所にあったとき、
就職活動の合間に見たことを覚えている。
ジョン・ルーリーがゲストを迎えて
ジャマイカやコスタリカなど世界の各地で釣りをして
それをビデオカメラで撮影するという。映画というより趣味。
でも集まったメンツは
ジム・ジャームッシュ、トム・ウェイツ、マット・ディロン、
ウィリアム・デフォー、デニス・ホッパーと豪華。
この1人ずつと出かけ、1話完結。
ジム・ジャームッシュが釣りをやるとは思えないし、
トム・ウェイツはやはりあんな感じだし。
なんかのオマケの最高のボーナス映像集といった感じ。
好きな人にはたまらない。
音楽は、オペラっぽいコーラスが入ったり、
トム・ウェイツが即興で歌う舟歌があったり、
ジョン・ルーリーの作品のなかでは最もサントラっぽい。
パーカッションにビリー・マーティンやカルヴィン・ウェストンの名前があるので、
当時率いていた John Lurie National Orchestra の発展系か。
なお、ジョン・ルーリーはライム病という感染症を発症して、
00年代以後は音楽活動も俳優活動も隠退、今は絵を描いているようだ。
そういえばこのところずっと何も発表されてないな…。
昨年は青山のワタリウム美術館で個展が開催されたという。
知らなかった。残念。