「8 1/2のマーチ」

Radikoの調子が悪く、InterFMが聞けず。
iPhoneの中から適当に探していたら、ハル・ウィルナーがプロデュースした
ニーノ・ロータによる、フェデリコ・フェリーニのテーマ曲集が出てきた。
それにする。「アマルコルド」「8 1/2」「甘い生活」「道」などが入っている。
参加しているミュージシャンは主にジャズ系で
カーラ・ブレイビル・フリゼールスティーヴ・レイシー、…
ハル・ウィルナーだけあって豪華。


ここ数年ふと思い出しては「8 1/2のマーチ」を聞いている。
気分が高揚するんですね。
ただ単に軽快なだけではなく、どこか異世界へと連れ去るような。
それまでに見たことの無いおかしな格好の人物たちが気難しそうにおどけていて、
僕らの常識からかけ離れた摩訶不思議なルールに則った言動をあちこちでしている。
ハーメルンの笛吹きの演奏する音楽があったら、こういうのなんだろうな。


何度か書いてきたことだけど
8 1/2」のラスト、海辺のシーンがたまらなく好きで
マーチを聞きながらその光景を思い出し、その意味を考える。
それまでに出演していた全ての役者が勢揃いして
砂浜、映画のセットとしてつくられたロケット発射台の周りを
皆手をつないで取り囲んでにこやかに朗らかに回っていく。
まるでこの世には楽しいことしか残されていないのだ、と言わんばかりに。
脈絡は無く、メタ的なシーン。
「全ては監督の夢でした」というのでもなく、…
意味というものを超えていく映像。妙に感動する。
人であるとか人生であるとかにとどまらないもっと根源的なものに対する賛歌。
ああ、これこそが映画なんだなあと。


何よりも海辺、砂浜というのがいい。
日常(こちら側)と非日常(向こう側)の境い目。
その境界線上だからこそ儚く浮かび上がる祝祭。
そして白黒であること。光と影の淡いしかそこにはないのだということ。