先日、『世界屠畜紀行』のことを書いた。
このとき、料理に詳しい友人から合わせて借りたのが次の3本のDVD。
・『いのちの食べかた』
ヨーロッパの映画。スタイリッシュな映像でブロイラーが工場に運ばれたり、
トマトが収穫されたり、屠畜場で牛が解体される光景を切り取る。
その余りの美しさが逆説的に、食べることはショッキングな出来事だと伝える。
・『フード・インク』
アメリカの映画。リチャード・リンクレイター監督の
『ファーストフード・ネイション』とプロデューサーが同じ。
リスクとコストが全て。世界の食糧業界を牛耳る巨大企業の偽善を暴こうとする。
・『人間は何を食べてきたか 第1巻』
80年代のNHKスペシャル。アンデスのジャガイモ、ベドウィンのチーズ、
ドイツの豚1頭からつくるソーセージ、アルプスのライ麦パン…
人類の食文化のルーツを探る。上記2本を見た後だと牧歌的な内容。
考えさせられますね。
缶詰やインスタントなど加工食品の添加物が…、というだけではなく。
スーパーで野菜を買う。パックに入った精肉を買う。
場合によっては魚を1匹丸のまま買う。
自然のものをそのまま食べているなんてことはないと頭では分かりつつも、
どこかそういう漠然とした幻想がチラついていたりするものですが。
それを完膚なきまでに叩きのめす。
何百羽なのか何千羽なのか、鶏舎に押し込まれた
ブロイラーは数十年前と比べて成長の速度が倍になり、
胸肉が好まれるからと品種改良されてムキムキになった。
体の重さに耐え切れず、自力で歩けなくなっているという。
Twitter で最近見かけたニュースがゾッとした。
「フライドチキンをおやつに4年間食べ続けた12歳女児
腎臓病で死ぬまで人工透析に」
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1739982.html
コーンを科学的な原料とする製品が食生活の多くに浸透していて、
そのコーンは小麦同様アメリカのバカでかい畑で
飛行機が豪快に農薬を撒かれているとか。
こういった告発系ドキュメンタリーはそれはそれで
視点が偏っていて都合よく編集しているのかもしれないけど
でもやっぱ話半分に捉えたとしてもやばい。
安全な食べものなんて、もはやないんだな。
畑から取れたライ麦でパンを焼く、家で飼っていた豚を捌いて皆で食べる。
農村地帯では、ああ、まだ手作りのものを食べるのが当たり前なんだなあと
最後のNHKスペシャルを見て少しほっとしたけど、もう30年前。
いくつか登場したアジア・ヨーロッパの村にも
「近代化」「工業化」が押し寄せてケミカルな変質を遂げているのかもしれない。
人類はこれまで何を食べてきたのか。
それよりも人類はこれから先、何を食べることになるのか。
ほんとさあ、肉でも野菜でもなく
人工的なタンパク質の塊みたいなのを食べてそうな気がするよ。
無菌室でつくられたので安全です、みたいな。