ダニエル・ラノワ『ソウル・マイニング』

ソウル・マイニング―― 音楽的自伝

ソウル・マイニング―― 音楽的自伝


1980年代を代表する2枚のアルバム
U2『The Joshua Tree』ピーター・ガブリエル『So』のプロデュースを
鬼才ブライアン・イーノと共に手掛けたダニエル・ラノワの自伝。
http://www.amazon.co.jp/dp/4622076942/


(他にも、ボブ・ディラン『Time Out of Mind』
 ネヴィル・ブラザーズ『Yellow Moon』
 エミルー・ハリス『Wrecking Ball』など。
『For the Beauty of Wynona』に代表されるソロ作も素晴らしい)


久々に時間を惜しんで夢中になって読んだ。
個人的に、今年No.1となりそうな予感。
僕がロックを聞き続けた四半世紀の時間が肯定され、祝福され、
さらにその先を指し示されるかのような本だった。
そしてその四半世紀とは
U2『The Joshua Tree』とピーター・ガブリエル『So』を
聞き続けた25年だったのだ。


一箇所、引用します。ボブ・ディランとの出会い。


「ディランが私のスタジオにやってきた。一生懸命さを求めている
 ことが伝わってきた。彼には、もはや脚光を浴びることがなくな
 ったボクサーがカムバックして王座を奪還しようとするような雰
 囲気があった。過去について話すことは何もなかった。彼は現在
 の地位のために戦っていたが、私には彼は未来主義者であること
 がわかった。ディランはノンストップでツアーをしていた。ちょ
 っとやり過ぎだと言う人もいたことを覚えている。今考えてみる
 と、ツアーに出続けるというディランの選択は正しかった。太っ
 ている暇はなかったし、自分の初恋の相手にしっかりと気持ちを
 捧げていたのだ。パフォーマーには観客が必要なのだ」


作曲する、演奏する、録音する。
音楽という旅がさらに別の顔を見せる。
ケベックの貧しい工業地帯で育ち、
地下室をレコーディングスタジオに変えて
小さな頃から兄と音響の実験を重ね、
北部カナダのホテルを週給150ドルのために演奏して周り、
大人になってからはニューオリンズ、オックスナード、オアハカ
放浪先に居を構えては名作を手掛けた。出会う人物は
ロビー・ロバートソン、ニール・ヤング、ウィリー・ネルソン、
レナード・コーエン、クリス・ブラックウェル、ジミー・クリフ
ビリー・ボブ・ソーントンハリー・ディーン・スタントン
アメリカの音楽を背負い、クロスロードを歩く男。


それにしても『For the Beauty of Wynona』のジャケット。
いつ見てもゾクッと来る。
物語が広がる。一編の小説、一本の映画よりも多くを語っている。
http://en.wikipedia.org/wiki/For_the_Beauty_of_Wynona