昨晩は「岡の」さんの2階にて読書会『寒中夜話』
河出文庫『雪の怪談・冬の怪』に収録された
前者はいろいろな形で今も語られる有名な話、
後者は『ばけばけ』でも主人公の2人を結びつける重要な役割を果たした。
「雪女」について。
猛吹雪の中、粗末な小屋に逃げ込んだ老人と若者。
寒さに震えていると雪女が現れ、老人の命は奪われるが若者は奪われずに済む。
「このことは決して誰にも言ってはならぬ」と言って雪女は去る。
時が過ぎて若者の元に、あの時の雪女にそっくりな女が現れ、夫婦になる。
月日が流れ、2人の間に10人の子供が生まれる。
これまでの幸せな日々を振り返ったかつての若者は、
かつてこんなことがあったと猛吹雪の一夜のことを女に語る。
「決して語ってはいけない」と申したのに……
女は雪となって消えていった。
雪女は若さをずっと保ったままだったという。
ならば10人の子供たちもまた雪女として永遠の若さを?
雪女の側からすれば、これは恋の話なんじゃないか?
……だとしたら、若者のもとを去らざるをえなくなって
雪女は次の相手を探すのだろうか?
いろんな議論が出た。
そのひとつにこういう意見があった。
「こういった昔話って、ルールを破る話が多いですね。
そういう話が皆、好きなのかもしれませんね」
その時はタイミングがなくて話せなかったけど、こういうことだと僕は捉えている。
広い範囲で長い間、少しずつ細部を変えて伝わってきたお話は何かしら教訓を含んでいる。
後世の人たちのために語り継ぐ。
そのうち、最も多いのはルールを破ってはいけないということ。
昔は今以上にはるかに、生死に関わる出来事が多かった。
国を治めるのであれ、もっと身近に村を治めるのであれ、
個人の命だけではなく、共同体の多くの命に係わる禁忌や決め事があった。
雪女もそうで、約束事を破ることでこんな悲しい結末を迎えたという教えがある。
一方で、実際に日々の生活をしている人はルールを破ることは極力しない、できない。
なのでお話の中で語られる人に代わりになってもらう。
だから人はルールを破るお話が好きなのだ。
雪女についてもう一つ補足すると、
雪女をモチーフにした現代の秀逸な小説がある。
何世代も経たのちの後日談とでもいうか。とても切ない話。
石黒達昌「雪女」
近年の再評価の流れの中でハヤカワ文庫のSFから
短編の傑作選が出ていて今も入手しやすいと思う。
類まれな想像力と言語化能力を持った小説家で、どの作品も素晴らしい。
芥川賞候補作品を含む。