詩を書く

My Small Town

子供たちが消えた その声もその影も失われた 笛吹き男に誘われて 町の外れをさまよった 大人たちも消えた この服もあの歌もそのままに 笛吹き男に誘われて 町の外れをさまよった 鳥たちが集まった 犬が最後の餌を漁った 建物に火がつけられた 旅芸人たちが無…

Endless Summer

幻を見た 夏の声を聞いた 夏の影を浴びた 暑さに鈍く揺らいでいた 白い日差しが全てを焼き尽くした 音楽は終わった 音符だけが残った あらゆるものが鳴り響いて あらゆるものが消えてしまった 虫たちの死骸を数えた 踏みつぶされて地面を濡らしていた その匂…

Hold On

指の先が触れ合う なんだかひんやりとしている 伝って、伝わって、ここにも届く この世界が広がりを放つ 君の呼吸が吐息となり 脈拍が静かな言葉となる 二人でそっと聞き取ろうとする この世界がゆっくりと動いている 指の先がもう一度触れ合う その度に全て…

この世界に君を探す50の方法

目をつぶってこの街を歩く 両手を体から離そうとする 遠くで女の子が歌っている 頭上に飛行機の影を感じる 過ぎ行く建物の数を数える 素足でアスファルトを蹴る 誰もいないのに手を振って 笑いかけてまた歩き出した 空腹を空腹として奪い返す 手に持った全て…

in case of fire

君の家が火事だ、町中にサイレンが聞こえた 君のいない間に、みんなで取り囲んで眺めた 春、水曜の朝、この町では他に何があるということもなく 僕らはポツリポツリと離れて立って 燃え尽きるのを、何かが新しく始まって終わるのを、 消防車が到着して、ホー…

Alter Ego

散った桜は、どこへ行くのか 風に吹かれてどこへ行くのか 逃げた魚は、どこへ行くのか 波に巻かれてどこへ行くのか 古びたぬいぐるみ 壊れきった遊具 置き忘れた教科書 放課後とか夕暮れとか ひとりきり、おやすみ またひとつ世界が消える 薄闇の中を、音も…